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「可変式」は難しすぎる? 海外の戦術トレンドを小学生に紹介してもいいか教えて

公開:2021年8月 6日 更新:2021年8月27日

キーワード:ポジションチェンジ可変式守備の枚数戦術戦術トレンド指導者池上正

ユーロ2020を見ていたら、守備の「可変式」という言葉が何度も聞かれた。選手交代せずにDFラインを変更するのはサッカーの理解力、対応力も必要で、一過性のトレンドではなく今後の選手に必要なことかと思うけど、小学生に紹介するのは早い?

幅と深さの使い方の理解がまだできてないU-12年代には難しすぎ? 最近の子は海外サッカーもよく見ているから教えてもいいもの? とご相談をいただきました。

今回もジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんが、今優先すべき指導についてアドバイスを送ります。
(取材・文 島沢優子)

池上正さんの指導を動画で見る>>

 

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

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<お父さんコーチからのご質問>

池上さんこんにちは。

街クラブで指導している保護者コーチです。サッカー経験があることを知っているコーチに誘われ、子どもの入団とともに指導にもかかわるようになりました。(教えているのはわが子の年代ではありませんが)

今回相談したいのは、海外のトレンドを小学生年代にも教えた方が良いのか。という事です。

先日開催されたEURO2020を見ていたところ、解説の方が「可変式」と口にするのを何度も聞きました。メンバーを変えずにバックラインを4枚→3枚にするシステムを取り入れているイタリアなどに対して使われていたことが多かったと思います。

戦術のトレンドは時代によって変わりますが、可変式のシステムはサッカーの理解が深くないとできないし、試合の中で柔軟に対応できることは大事だと思うのです。個人的にはトレンドというか、一つの戦術として定番化していく流れでもおかしくないのかな、と。

私が教えている小6は8人制から11人制への移行年代で、この年代の課題として幅と深さが上手く使えないとほかのチームの指導者からも聞くので、可変式の導入は現実的でないと思っています。

ただ、最近の子どもたちは海外サッカーも見ているので、上の年代のサッカーではこんなシステムもあると話すのはアリなのかなと思ってご相談した次第です。

海外サッカーから日本が学べることは多いかと思いますが、DFラインの可変式の話題は小学生年代には高度すぎるでしょうか。今やっている11人制への移行の中で混乱させてしまうことを心配しています。

池上さんのお考えをお聞かせいただけると幸いです。

 

 

<池上さんのアドバイス>

ご相談いただき、ありがとうございます。

私としては、小学生の段階で覚える必要はないと考えています。

 

■守備の人数は変えられない、と子どもたちが思い込まないように指導しよう

例えば、4バックで守っているゲームのなかで、状況を見てベンチから「ひとり前に出ていいよ」とアドバイスするのは、決して悪いことではありません。相手が3人で攻めてくる状況であれば、ディフェンダーがひとり余っている。もしくは相手のフォワードが1トップなら、守備は2人いればいい。その両方とも、ひとり前に上げればいいわけです。

守備が余っているほかには、試合運びのなかであまりパスが回らないといった状況が見られれば、試合中であっても守備の人数を減らせばいいと思います。逆に、4人で守っているときに5人で攻めてきたら、中盤からひとり下がってもらわなくてはいけません。

いずれにしても、4バックや3バックなど、守備の人数が決まっていたら変えられないんだと子どもが思い込まないよう、指導してほしいと思います。自分たちで自由に考えてプレーすることが重要だと伝えてください。

攻撃にしても、守備にしても、基本的なことを学ぶのが小学生年代です。言葉にとらわれず、原理原則を小学生の間に理解させることが、この年代の指導者には求められます。

マークするというのはどういうことなのか。サポートするというのは、いったいどんな動きなのか。何を意味するのか。そして、カバーするとはどんなものか。そんなことを自分たちで考えられるよう、指導してあげてください。

 

■3-3-1か、2-3-2か などのシステムより重要なこと

日本の小学生年代は現在8人制です。11人制から8人に転換した際「どんなシステムが一番最適なのか」といったシステム論が盛んに取りざたされました。3-3-1がいい。いや、2-3-2だ、といった具合です。当時は、3-3-1をしいたJリーグの下部チームが強かったため、全国大会に出場するチームはほぼ3-3-1を選択していたと記憶しています。

私はそれらを受けて、子どもたちがどんなシステムで戦うかということが問題ではなく、全員で攻めて守ることが重要であることを口酸っぱく言い続けました。全員で攻撃するなかでは、みんながサイドに広がっているほうがいい、前後の深さが保てるといい。そのなかで、サポートにいくということはどんなことなのかを教えてくださいと言ってきました。

つまり、子どもたちがサッカーというスポーツを基本的に学ぶにはどうするか? を大事にしてほしいと考えています。

 

■ポジションの役目と全体バランスを覚えさせることが優先

そう考えると、前述したようにご相談者様が世界の戦術トレンドとおっしゃっている可変式、ポジションのチェンジは小学生の間に特に教えることはしなくていいでしょう。

例えば、サイドバックが真ん中まで出てくる、みたいなことは教えないほうがいいかもしれません。それよりも、その子が守っている「左サイド」はどんなポジションでどんな役目があるのかを集中して学んでもらったほうがいいと思います。

そのように話すと「子どもは自由にプレーさせたほうがいいのでは?」という意見も出てきます。私も子どもが自分で考えて自由にプレーすることは歓迎します。

ただ、この年代では「全体のバランスを覚えること」を優先させてください。左サイドの子どもが、あまりに右のほうへ移動してしまうと、左サイドが空いてしまいます。

そうならないよう、いつもいいバランスでポジショニングすること。左と右の関係、前と後ろの関係といったサッカーの原理原則を伝えてください。そこをクリアして、もう少し理解度が上がっていったら、さまざまなことにトライできます。

 

■基本を理解させず、世界のトレンドを教え込むとバランスを崩す

例えば、左にプレーがスピーディーで攻撃力のある選手を置いておきます。そのうえで、みんなが右に動いておいて、左サイドを空けておく。右サイドに相手を引っ張っておいて、左にスペースを作ったら、そこにサッとボールをつなぐ。そんなチーム戦術がとれます。

ただし、そういった戦術を理解して実践していくのは中学生からでよいでしょう。中学生になって、ひとつのポジションにいるだけでは相手のマークを外せないので、さまざまな崩し方を覚えていく。そういった段階的な指導をすればいいと私は考えます。

小学生の段階で基本を理解させず、いきなりそういったものを教え込んでしまうと、わけがわからなくなってバランスを崩してしまいます。

 

池上正さんの指導を動画で見る>>

 

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コーチからの【チーム指導の悩み】に池上正さんがお答えします(例:年代がバラバラなチームの練習メニューなど)※記事になります
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文:島沢優子

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