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あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

試合ばかりで練習がつぶれる。技術は試合だけで身に付くの? 練習を削ってでも試合を重視するべきか教えて

公開:2020年4月10日 更新:2020年5月 1日

キーワード:U-10ボランティアコーチ大会少年サッカー練習時間育成試合遠征

週末だけの活動なのに、毎週末のように試合が組まれて練習ができない。試合が大事なのはわかるけど、U-10世代で試合ばかりしていて技術や戦術は身につくもの?

誘われた試合は断らないチーム方針だけど、遠方だと1日がかりになることも。練習を削っても試合を優先させる方が良いのか教えて。とボランティアコーチよりご相談をいただきました。

今回も、これまでジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上の子どもたちを指導してきた池上正さんは、大会などが中止になったりしているこのタイミングは指導のとらえ方を変えるチャンスだと言います。その理由とは......(取材・文:島沢優子)

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(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

<<力が弱いU-8年代にインステップキックを身につけさせる練習を教えて

 

<お父さんコーチからの質問>

初めまして。

私自身はサッカーの経験がないのですが、息子のチームでボランティアコーチをしています。

チームでは誘われた試合は極力断らないという方針のもと週末多くの試合が組まれており、遠方での試合も多く1日がかりになることもしばしばです。

週末のみの活動なので、試合が多くなれば練習は少なくなってしまいます。

もちろん試合が大事なのは理解しているのですが、U-10世代なので技術や戦術などの基礎を身につけることも必要なのではないかと思っています。これらは試合だけやっていて十分身に付くものなのか疑問に思っている次第です。

練習の時間を削ってでもそんなに他チームとの試合は必要なものでしょうか?

少ない練習日でも効率的に上手くなるような練習があれば教えてください。

 

 

<池上さんのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

週末しか活動時間がないというクラブはまだ多くあります。場所の問題だったり、保護者がボランティアで運営する少年団は難しい部分がありますね。

そう考えると、土曜日に練習をして日曜日に試合というスケジュールが理想的です。日曜日の試合で出てきた課題に、次の土曜日の練習で向き合ってみる。そして、その課題をクリアできたかを日曜日の試合でまた試す。そんな具合でうまく2日間を使います。

そのうえで、練習も試合も、2時間半くらいで終われるのが理想でしょう。子どもたちの拘束時間をその日の午前だけ、午後だけというふうにすれば、子どもたちはもちろん、その家族も子どもとサッカー以外に何か一緒にできる時間が生まれます。そうすれば、2日間とも試合でびっしりということにはなりません。サッカー漬けにせず、時間的な余裕を与えてほしいと思います。

 

■強いチームと試合をしないと上達しない、という訳ではない

ところが、現実は異なるようです。相談者さんが「遠方での試合も多く1日がかりになることもしばしば」と書いておられるように、みなさん、せっかく遠くまで出かけてきたのだからもう1試合やろうかと大人が欲張ってしまいがちです。それでなくても、往復の移動時間もかかると、活動が一日がかりになってしまいます。もし、子どもがやりたがったとしても切り上げてほしいところです。

移動時間の長さを考えると、近くのチームとやれば何ら問題はありません。もし、近くのチームはどこもレベルが高いのであれば、やるべきことが明確になってきます。逆に、自分たちのチームよりも低ければ、いろんなことが試せるためプレーの精度が上がります。対戦相手の力量によって、何をするか明確にする。そんな視点を持ってほしいと思います。

それなのに、多くの指導者が「強いチームと試合をしなければ、選手が上達しない」と考えています。

なぜそんな「思い込み」が生まれてしまうかと言えば、「どの学年でもチーム作りをしてしまう」からだと私は考えます。

「試合に勝つためにどうするか?」

それをどの学年でも念頭に置いていないでしょうか。1、2年生の低学年ですら、その視点で考えているようにうかがえます。

そうではなく、各学年でどんなことを身につけるのか。そこに観点を置いていただけたらと思えます。例えば、コーチ同士でこんな話ができるといいでしょう。

「今日の練習は、攻撃のこの部分を指導しようと思ったけれど、こないだの試合で視野をもつことができていなかった。もう解決したことだと思っていたけれど、忘れ物があったね。もう一度それをやろうか」

そんな会話ができるチームは、試合ごとに勝ち星を積み上げることより「個々の選手を育てる」という考え方を指導の真ん中に置いています。そのような考え方をコーチができれば、試合日程も考え直せることでしょう。

試合が1番の練習なのですが、その中でうまくいかないもの技術的なこと、戦術的なことを少しづつ積み上げることも大切なことなのです。

少年サッカーの指導で何が一番大切か。そのとらえ方を変えることが肝要です。

 

■大会ありき、ではなく「個々の選手を育てる」指導に変えるチャンス

実は先ほど、大阪府の三種であるジュニアユース、中学生年代のリーグ戦が新型コロナウイルス感染拡大の影響でリーグ戦が1巡しかできなくなるという報告を聞きました。全国大会の予選もなくなるようです。

ネットでの報告でしたので、私はそこにこうコメントしました。

「大会がなくなるだけで、自分たちが大好きなスポーツ(サッカー)がなくなるわけではありません」

例えば、オリンピックはすでにアマチュアの祭典ではありません。どの競技もプロフェッショナルの選手たちが自分の人生を賭けて挑む側面が生まれています。一方、育成年代の子どもたちは脅かされません。

その意味で、今現在のコロナ禍の状況は「大会ありき」だったこれまでのとらえ方を変えるチャンスだと言えるかもしれません。なぜなら「大会がないと(サッカーを指導している)意味がない」という指導者は少なくありません。

そうではなく、前述したように育成を「個々の選手を育てる」という考え方に変えるのです。互いに切磋琢磨して「さあ、あのチームにいつか勝てるように頑張ろう。どうしたら勝てるかな」と子どもたちと試行錯誤を重ねていく。そのプロセスがとりもなおさず指導者の力になります。

上手い子だけ試合に出すのではなく、みんな平等に経験させる。大会があるからこうする、ではなく、年間を通じて成長をみながら練習や試合を組み立てる。

そのようにとらえられたら、もっと近いエリアでやろう、みんながうまくなるためにやろうと、理解が進むはずです。

 

次ページ:親が自分を犠牲にして子どもに尽くすのが本当に子どものためになっている?

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文:島沢優子

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