弱小チームのチカラを引き出す! 暁星高校林義規監督の教え

2014年12月29日

文武両道の実践こそ暁星の強み!上手くやるより上手くさせない

※本稿は、『弱小校のチカラを引き出す』 (著者・篠幸彦、東邦出版刊)の一部を転載したものです。

 
あなたの子どももサッカーを続けていれば通る道!? 高校サッカーのリアルがここにある。弱小校の子どもたちの力を引き出し、暁星高校サッカー部を全国出場に導いた林義規監督を追うルポルタージュ。短期集中連載、第5回。(取材・文 篠幸彦)
 
頭が良さを活かすためにも基礎技術を磨く暁星サッカー部。左足の精度向上にも努める
 
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■振り向くトラップとサイドキックを徹底

そうした熱血的な指導の中で林監督がとりわけ力を注いだのは基本スキルの徹底である。
 
「小学校の頃は本当に基本が大事なんだよ。だから最初の5、6年生からスキル、技術を徹底的に教え込んだ。ボールを蹴る、コントロールする、そして振り向く。この3つだよ。今でもそうだけど、サッカーってのは自分のゴールから相手ゴールに向く、右サイドから左サイドに向く、これなんだ。要するに俺は『振り向くトラップ』って呼んでるんだけど、この技術がすべてだと思ってるんだ。どんなに速いボールでも、どんなに悪いボールでもコントロールして振り向ける技術。それとサイドキック。どんな状況でもコントロールしてサイドキックで蹴る。あるいはダイレクトで蹴る。そういった基本中の基本を徹底的にやったんだな。サッカーってのはさ、ボールが扱えて初めて思ったことができる。ひとりひとりが強くなるし、戦術的なこともそこで初めて言えるんだよ」
 
サッカーの基本を叩き込みながら、それと同時に教え込んだのはハングリー精神だ。
 
「スキルと同じくらい大事なのは、やっぱり負けちゃいけねえんだってことだよ。そこも教え込んだね」
 
負けちゃいけない、負けたくない気持ちが芽生えるよう促さなければいけない。そこで大事なのが考え方だという。
 
「昨日もまさに同じことを生徒に話したんだけどさ。強豪校ってのはだいたいサッカーの上手いやつらを全国色んなところから呼んで、寮に入れているんだよ。そんなところに敵うわけねえだろうと。下手なやつなんて呼んでないんだから」
 

■勉強もしっかりやることが暁星の強み

そういった高校に対して、暁星高だからこその考え方がある。
 
「そうした強豪校のほとんどがサッカーしかやってない。でも暁星は違う。サッカーだけじゃないんだよ。強豪校はもちろんのこと、普通のところよりもお前たちは勉強をやってるんだ。だからまずそこに胸を張れって。それこそが暁星の強みなんだよ。練習量はほかより劣るかもしれないけれど中身は違うぞと。サッカーと勉強、両方本気で頑張っている俺らが、サッカーしかやってない連中に負けるわけにはいかない。負けられないって、そういうことをモチベーションにつなげるんだよな」
 
暁星高の生徒が強豪校に対して優位に立てるところは、サッカーをやりながら勉強もしっかりとやること。そこが自信につながっているし、そこで優位に立てないと自分たちは戦えないと、生徒たちはよくわかっている。林監督はそう話す。暁星高の武器は、本物の文武両道なのだ。
 
「よく言うのが、学生の第1の目的は勉強をすること。だから徹底的に勉強させる。それから第2にうちはサッカーだと。でもそこで『ほかで言う第2じゃねえぞ。ほかの第1を上回る第2じゃなきゃいけねえ。でもその順序は間違えるな』って言うんだよ」
 
学生の本分を全うしながら、サッカーを妥協するわけではない。そして強豪よりも技量が劣ることを認めながら、だからといって諦めたわけでもない。
 
「誰ひとりとしてサッカーが上手いから暁星に入ったわけじゃない。みんな受験で入ってるんだから技量は劣っているよ。でも、この差をそのまま甘んじて受けていていいのか。受けるのであればその差で負けるだろうよ。だけどこの競技はこの差が逆転することは簡単じゃねえけど、やり方によっては同じくらいになることはあるんだよ」
 
だからサッカーは面白えんだ、監督の声色が真に迫ってくる。
 
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