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弱小チームのチカラを引き出す! 暁星高校林義規監督の教え

文武両道の実践こそ暁星の強み!上手くやるより上手くさせない

公開:2014年12月29日 更新:2020年3月24日

キーワード:文武両道暁星高校林義規選手権高校サッカー

■下手くそでも守備はできる

「ひとつのキーワードは『自分たちが上手くやるより、相手に上手くさせないこと』。俺たちはこのことに特化してやる。そのために必要なのが『最低限の技術』と『チームで連動したプレッシャー』。どんなに上手いやつでもプレッシャーがかかれば上手くやることは難しいし、どんなに下手なやつでもプレッシャーがかかってなかったら上手くやれるんだよ」
 
さらにチームで連動したプレッシャーをかけるためのキーワードが、『オールコートプレス』と『マンツーマン』なのだという。
 
「前の選手から積極的にマンツーマンでプレスにいく。まずは相手がボールを持った場所から前に蹴らせないこと。次に攻撃を遅らせる。遅らせたら次はもっと攻撃を遅らせる。その間に守備の陣形を整えながら、次にパスコースを限定する。その次に限定して相手のパスを呼び込んだところでボールを奪い取る。これはひとりの技じゃない。チームで連動してやるんだよ」
 
これをどれだけチームで徹底してやれるかが、強豪校相手にも立ち向かっていけるかの境目なのだ。
 
「この激しく、素早いプレッシャーを掻い潜ろうと思えば、当然ダイレクトプレーでなければ難しいよな。しかも相手も味方同士でタイミングの合ったダイレクトプレーじゃなきゃ潜り抜けられない。そのダイレクトプレーってのはどうしてもミスが増えるんだよ。上手いやつらでも難しい。だから強いチームを相手にする場合でも、このプレッシャーの量と質。俺はこれに尽きると思う。日本はまだトップレベルでも本物のプレッシャーの中では上手くプレーできる選手ってのはほとんどいない。世界との差はそこだと思うんだよ」
 
弱者の戦い方とは少し違う、弱者でも強者に立ち向かっていける戦い方である。そうした指導のベースというのはやはり早稲田大で学んだことなのだろうか。
 
「もうすべてそう。もちろん、うちの生徒のレベルに合わせてアレンジはしているけれど、守備は労働、下手くそでも守備はできるというコンセプトが基本。
 
ただ、最初の頃はちょうど読売クラブがのしてきた時代だったから『先生が目指しているのはトータルサッカーで、僕らが目指しているのとは違います』って、生意気なこと言う生徒もいてさ。基本もできてないのにそんな上っ面なことができるわけがねえんだよ。正しい技術ってのはどんなプレッシャーの中でもできるじゃない。それは言葉じゃなく、理屈じゃなく、体験して初めてわかる。そこまでわからせるのが大変なんだけどよ。そこは上手くなる薬はねえし、注射もねえ。同じことをやり続けるしかねえんだよな」
 

■そこに至るまでの過程の大切さに気付いてほしい

子どもはどうしても地道なものより、小手先でも派手なものや格好のいいものに目を奪われてしまう。そこに至るまでの過程の大事さに気がつくのは、その過程を踏んでその先に至った者、あるいはその過程がないことで厳しい現実を突きつけられた者だけである。
 
早稲田大で学んだ指導というのは、ほかになにがあるのだろうか。
 
「例えば『相手がフリーでヘディングをしたらチーム状態が非常に悪いとき』。これはまさにそう。どういうことかと言うと、競り合いで負けたとしても、競り合っているということはボールを争うときのポジショニングは間違ってない。でも相手がフリーでヘディングしたといことはポジショニングが間違ってるってことなん だ。そうすると相手のほうに勢いが出る。これは統計を取ったけど、ヘディングの勝率が良い試合というのは7割くらい試合に勝ってる。これはセカンドボールの取り合いでも同じことが言えるんだよ。つまり綺麗に点が取れることは滅多にない。こういった球際のつば競り合いでどれだけ良いポジショニングを取って、ものにできるかってことが勝敗に大きく関わるんだよな」
 
確かに暁星高の試合を見ていると、相手にヘディングをフリーでやらせたときの監督の声は厳しいものがある。ヘディングはひとつのミスも見逃さない、そういう凄みを感じた。
 
「あと、『シュートをGKがキャッチしたあとの出しどころ『というのもそう。打たれたシュートを味方GKがキャッチした瞬間はみんなこっちのゴールを向いているよな。その瞬間に相手と味方が一緒にいるところに出しても、相手のほうがこっちのゴールに向いてるぶん絶対に勢いが上なんだからそこに出すのは危険なんだよ。逆もまた然り。こういうことは人間がやることだから、レベルは違えどワールドカップでも心境というのは同じことが言えるんだよね」
 
レベルもさることながら、林監督の早稲田大時代からこれだけ時代の違う現在でも同じことが言えるのだから、この競技の本質的な部分の指導だということだろう。
 
「『物事は良くなったら全部味方のおかげ、悪くなったら全部自分のせいだと思ったほうが楽』ってのも堀江先生流で、子どもたちにも常に言ってること。例えばGKがトンネルしちゃったと。『なにやってんだ!』って言いたくなるところだけど、でもその前にシュートを打たせないとか、なにか自分には手立てがあったんじゃないかと、悪くなったら自分のせいとして考える。もしそこでGKがスーパーセーブしたらそれはGKのおかげ。そう思ったほうが楽なんだよ」
 
相手を責めるよりまずは自分を顧みるのは、仲間を思うことを重んじる師匠らしい考え方である。
 
第6回につづく>>
 
 
【大好評!!短期集中連載第3回】弱小チームのチカラを引き出す! 暁星高校林義規監督の教え
[第1回]コンクリートのグラウンドから全国高校サッカー選手権大会出場
[第2回]干されたことが大きな財産に!「出てるやつだけの力じゃねえんだ」
[第3回]高校生からではなく小学生から教える利点
[第4回]右手を失うと左手で箸を持つ「人はヤバいと思うからやるんだ」
 
 
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取材・文 篠幸彦 写真 サカイク編集部

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