楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

2019年1月30日

教え子の未来に影を落としかねない「くそゲーム」発言

■期待した結果を引き寄せる「予祝」でいいプレーをする方がエンジョイできる


良いプレーをイメージして試合に臨んだ方がエンジョイできる ※写真はサカイクキャンプです

 

例えば、ボトムアップ理論で知られる広島県安芸南高校サッカー部の畑喜美夫先生。
「試合はやってきたことを表現する場所だよね。さあ、ワクワクするね!」と笑顔で送り出します。

彼らの姿勢から、浮かぶのが「予祝(よしゅく)」という言葉。

豊作や多産を祈って、1年間の農作業や秋の豊作を模擬実演する行事を指します。例えば、稲刈りに見立てた踊りなどでしょうか。期待する結果をデモしてみると、そのとおりの結果が引き寄せられるという言い伝え。例えば、「お花見」も秋の豊作を引き寄せるための前祝いだそうです。

私も、大学の選手達に対して「予祝」の考え方を当てはめて語りかけたことがあります。それは、「失敗したら嫌だなとか、負けたらどうしよう、とか心配しながらピッチに出ていくのと、相手の逆を取って、ゴールの隅に物凄いシュートを決めたら、めっちゃ楽しいだろうなぁ、とワクワクしながらピッチに出ていき、そして、相手が強くてなかなかフェイントが決まらないとしても、その時に、こんな強い奴の逆を取って、物凄いシュートを決めたら最高だろうなぁ、とさらにワクワクを強めていくのでは、どっちがプレーの成功率が上がると思う?」という問いかけです。

スポーツはゲーム=遊びだとちゃんと理解すれば、試合前からいいプレーをイメージして、心を躍らせてピッチに入ったほうがより楽しめるに決まっています。

とことん勝負にこだわって全力で挑む。そうすれば"失敗"は貴重な経験となる。そして、その貴重な失敗という経験を与えてくれた相手に対しても自ずとリスペクトの気持ちが生まれます。こうすることですべてのゲームがエンジョイできるはずです。

だから「くそゲーム」なんて存在するはずがないのです。

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高橋正紀(たかはし・まさのり)

1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜経済大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。
Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。

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