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楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

2018年10月31日

中島翔哉が「楽しい」を繰り返すワケ/「非日常のスポーツ」を日常とつなぐ力を育てよう

キーワード:スポーツマンのこころスポーツマンシップ指導者挑戦文武両道自己肯定感

サッカークラブや各種スポーツ団体を対象に「スポーツマンのこころ」と銘打つ講義で、一流アスリートになるための心得を伝え続ける岐阜経済大学経営学部教授の高橋正紀先生。ドイツ・ケルン体育大学留学時代から十数年かけ、独自のメソッドを構築してきました。

聴講者はすでに5万人超。その多くが、成長するために必要なメンタルの本質を理解したと実感しています。

高橋先生はまた、「スポーツマンのこころ」の効果を数値化し証明したスポーツ精神医学の論文で医学博士号を取得しています。いわば、医学の世界で証明された、世界と戦える「こころの育成法」なのです。

日本では今、「サッカーを楽しませてと言われるが、それだけで強くなるのか」と不安を覚えたり、「サッカーは教えられるが、精神的な部分を育てるのが難しい」と悩む指導者は少なくありません。

根性論が通用しなくなった時代、子どもたちの「こころの成長ベクトル」をどこへ、どのように伸ばすか。これから数回にわたってお送りします。「こころを育てる」たくさんのヒントがここにあります。
(監修/高橋正紀 構成・文/「スポーツマンのこころ推進委員会」)

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写真は少年サッカーのイメージです。(C)吉田孝光

中島翔哉が「楽しみたい」を繰り返すワケ

先月ウルグアイを下した日本代表で高い貢献を見せたMF中島翔哉選手(24=ポルティモネンセ)は、インタビューのたびに「楽しみたい」を繰り返します。
「自分たちらしく楽しくサッカーをすれば、いいサッカーになると思う」
「個人的には楽しみたい

ある雑誌のインタビューにもこう答えていました。
「どんな舞台でも、どんな強い相手でも楽しんで自分の思い描くプレーができる選手になりたいですね。そしてチームを勝たせたい。そのためにはドリブルでもパスでも、毎試合違いを出していかなきゃいけないし、試合はもちろん練習でも毎日目立たなきゃいけないと思っています」

中島選手は、サッカーを楽しむには全力でプレーしなくてはいけないことを知っています。これは子どもでも理解できます。

以前、この連載で、私が小学校低学年に指導するときにこんな質問をする話をしました。

「全力で真剣に競争して、勝敗にこだわって戦うときと、手を抜いて競争して、勝っても負けてもいいと思って競争するとき。どっちのほうが楽しさが大きくなりますか? 君たちはどっちを選びますか?」


すると、スポーツをしていない子でも、「全力で真剣に勝ちにこだわって、競争したとき!」と答えます。

スポーツの位置づけは、日常生活の中の時空間に「非日常の空間」をつくって、そこで遊ぶことだと私は考えます。「日常の中の非日常」です。中島選手はいまプロなので、非日常のスポーツが日常の職業になっています。それでも、楽しむことを忘れない。サッカーは究極の遊びだということをわかっています。

例えば、格闘技だったら殴り合ったり蹴飛ばし合ったりする。ボクシングで相手の顔を殴ってパンパンに腫らしても罪に問われません。けれども、日常において相手の顔をパンパンに腫らすだけ殴ると逮捕されます。スポーツは、わざわざこの空間をつくって楽しんでいるということです。

日常があっての非日常のはずなのに......

学生に話すときには、この日常の在り方についてもちゃんと説明します。

「大人たちの日常とは何だと思う? 君たちのお父さんやお母さんは、家族のために仕事や家事をしているよね。大人たちは、それをやるのが普通で、日々こなすんだよね。疲れていても、嫌いな仕事でもやるんだよね。それは、日常だからやっているんだよね。ありがたいよね。君たちの親が日常において働いて、稼いで学費出してくれて、よかったね、助かったね。」

「じゃあ、君たちの日常は何だと思う?」と尋ねると「大学で勉強する」「友達と遊ぶ」「バイトする」などさまざまでてきます。

「そうだよね。学校へ行って、勉強して、宿題して、友達をつくる。基本、この繰り返しだよね。嫌でもやるんだよね。でももし本当にそれが嫌だったら、無人島に行って1人で生きるという手もあるよ。すごいことに、人間にはそういう自由も与えられているんだ。でも、もし普通にこの社会で生きていくなら、学校へ行って、勉強して、宿題して、友達をつくる。嫌でも、勉強が嫌いでもやることが日常なんだよね。だって、お父さんが、仕事を嫌いと言って仕事をやめたら、君たち大学へ通えなくなるぜ。だから、君たちも日常をきちんと生きることが、好き嫌いや得意不得意に関係なく当然のことなんだよ」という話をします。

ところが残念なことに、日常をおろそかにして、非日常のスポーツだけをやっていればいいというようなとらえ方が日本には残っている。そんなことを前回お伝えしました。

スポーツをする意味を親御さんに問うと、「人間力をつける」「やり抜く力をつける」と答えます。その通りです。それなのに、非日常のスポーツで養えるはずの力を日常でも、同じように発揮することを子どもに求める人は少数派です。

「日常」があっての「非日常」なのに、非日常ばかりやっている。うまくいけば、競技や人によっては、「しばらくの間」この非日常のスポーツで金を稼いで食べていけるかもしれません。でも、それは人生においては、あくまで、引退までのほんの少しの時間です。いずれは日常に戻るのです。

欧米でも時に踏み外す人はいるものの、この考えは浸透しています。例えば、ドイツ代表の中にいるトルコ系移民のギュンドアン(Gündoğan)という選手は、ドイツのアビトゥーア(大学入学資格試験)の成績が「1」だそうです。ドイツは1が最高で、5が最低なので、彼はトップの成績だということです。

生涯有効性のあるこのアビトゥーアで1ですから、プロサッカー選手としてのキャリアが終わった後でも大学の医学部に入れます。

そして、彼がドイツで特別な存在ではありません。他の競技でもそのようなアスリートはたくさん存在します。一番大好きなのは非日常の究極の遊びであるサッカーだけど、日常において二番目に大好きなこともちゃんと持っている。一番大好きなことが終わったときにも、いつでも日常に帰れることが重要です。

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監修:高橋正紀 構成・文:「スポーツマンのこころ推進委員会」 写真:吉田孝光

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