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サッカーIQが高まる言葉 ―格言からサッカーの真理・本質を読み解く―

2019年3月 7日

第一回 「フットボールはミスのゲーム」簡単にプレーする選手が優秀な理由

キーワード:サッカードゥンガバルセロナミスユルゲン・クロップヨハン・クライフリバプール横浜フリューゲルス

言葉は時として、「何を言ったか」より「誰が言ったか」の方が影響が大きくなります。同じ内容の事を言っているのに、自分が特に関心のない人がいえば「ふーん」で終わらせてしまうけれど、有名な人がいえば深い意味が隠されているように感じることがあるもの。

しかし、有名人が発したからと言って「正しい」と鵜吞みにしてしまっては、サッカーIQは高まりません。表面的で間違った解釈をしないためにも、「何を言ったか」に注目することが大事なのです。

技術習得の練習だけでは良い選手になれません。深い思考力など内面も磨いてこそ選手として伸びていくのです。

西部謙司さんの「ボールは丸い。 サッカーの真理がわかる名言集」より、みなさんに伝えたい珠玉の名言をピックアップしてご紹介します。西部さんの註釈を読んで、サッカーというスポーツの奥深さを味わってください。

第一回目は、ヨハン・クライフとユルゲン・クロップ監督のサッカーとミスの言葉、後半では闘将ドゥンガの「簡単にプレーする」選手がどうして優秀なのかをお送りします。

football_intelligence01.JPG
クライフもクロップも同じことを言っている、と西部さんは言います(C)サカイク
 

■サッカーはミスのゲーム

フットボールはミスのゲームだ。
誰であれ最もミスの少ない者が勝利する。
―ヨハン・クライフ

フットボールはミスなしにプレーできないゲームだ。
―ユルゲン・クロップ

クライフとクロップは全く同じことを言っている。ところが、そこから導かれる結論が正反対だ。クライフはだから「ミスの少ない」ほうが勝つと説いているが、クロップはミスを恐れるなという結論なのだ。クロップは結論部分を言っていないけれども、彼の率いたチームを見れば自明である。

クライフの考え方は「ミスはなるべくするな」あるいは「必要のないミスをしてはならない」だが、クロップは「どうせミスはするのだから、どんどんトライしろ」になる。2人の結論の相違は現在のバルセロナリバプールを比べれば一目瞭然である。バルサは執拗にパスを回す。本当に執拗で、シュートへ持ち込めそうなときでさえ作り直す。より確実なチャンスになるまで待ち、不要なミスを避ける。一方、リバプールはスペースがあれば強引にでも攻め込んでいく。モハメド・サラーやサディオ・マネを敵のDFと競走させ、たとえ敵のミスだろうとフィニッシュへ持って行ければそれでいい。多少無理でも積極的に勝負を仕掛けていく。

クライフは「GKと1対1になっても3回に1回しか決められないのがアマチュア、すべて決めるのがプロ」と言っているので、技術の精度を最重視している。つまり、なるべくミスをしないと同時に、どうするとミスになるかも理解していなければならない。ミスになるとわかっているプレーをする必要はなく、イチかバチかに賭けなくてはならない程度のチームなら、それはアマチュアということなのだろう。

クロップは90分間になるべく多くのチャンスを作ろうとする。どうせミスなしにプレーできるゲームではないのだから、決定機になるまで待つのではなく、ハーフチャンスでも数多く作ったほうがいい。言ってしまえば「数打ちゃ当たる」のスタイルだろうか。クロップはペップ・グアルディオラ監督が率いた全盛期のバルセロナを「退屈」と評した男である。クロップにとって、フットボールとはもっと激烈で興奮するものであり、ほとんどミスをしないで淡々と得点を重ねていくようなスポーツではないわけだ。

■だから簡単にプレーできる選手は優秀

サッカーはとてもシンプルなもの。相手がボールを持ったら、
ボールのラインよりもできるだけ多くの人数が自陣にいるようにする。
そして我々がボールを持ったら各自が自由に動きまわる。
―ドゥンガ

シンプルだからこそ難しいともいえる。ボールより自陣側になるべく多くの選手が戻る、これは難しくない。だが、ボールを持ったら「各自が自由に動きまわる」のは簡単ではない。自由に動きまわること自体は簡単だ。問題はそれで効果があるかどうか。

「ボールなしで動けと言うと、たいていのプレーヤーはいつも同じような調子で走り回る。このような考え方は全く間違っている。ボールなしの動きは、効果的に動いたときのみ意味がある。これが核心である」とリヌス・ミケルスが語っている。

バルセロナの名選手で、ミケルスの指導を受けているカルレス・レシャックが横浜フリューゲルス(1993年-1998年までJリーグにあったチーム。横浜F・マリノスと合併し消滅)の監督に就任したとき、選手にパスを回させたら、ボールではなく人がぐるぐるとまわりはじめた。それを見たレシャックはプレーを止め、1人ずつポジションにつかせ、最低限の動きでパスをまわせることを教えた。

最低限の動きでボールを動かすには、それなりの技術も要求される。また、どうプレーするかを知らなければならない。個人の思いつきで動きまわるだけでは無秩序が加速するだけなのだ。技術があり、戦術を共有し、そのうえで自由がある。臨機応変がある。

シンプルだけれども簡単ではない。だから簡単にプレーできる選手は優秀なのだ。

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