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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

中学は強豪クラブに行ってほしいけれど、お金、勉強との両立、高校、プロへの道......。小6息子の進路に悩みます問題

公開:2025年12月10日

キーワード:アドラー心理学クラブチーム中学強豪チーム推薦入試課題委の分離進路遠征高校進学

トレセンにも呼ばれ、将来はプロになりたい小6の息子。強豪クラブの練習会が思ったより楽しくなかったみたいだけど、親としては遠征費用が掛かっても、パパコーチが多く遠征もほとんど無い「楽しいクラブ」より強豪に行かせたい。

だけど費用以外にも勉強との両立など悩みが尽きない。親としてどうアドバイスしたらいい? という悩み。非常にリアルに感じるご家庭もあるのでは。

スポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、悩めるお母さんにアドバイスを送ります。

(構成・文:島沢優子)

 

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<サッカーママからのご相談>

息子は、年中からサッカーを始めてチームにも恵まれ、今まで楽しく続けてきました。6年生の今年はトレセンにも選ばれるまで成長しました。 将来はプロのサッカー選手になりたいと言っています。

来年から中学生になる息子は進路で悩んでいます。

各チーム練習会やセレクションが行われており、息子もいつくか練習会に参加しました。その中で強豪チームに行くか部活程度のチームに行くかで悩んでいるようです。強豪チームは練習会が思ったより楽しくなかったようで、遠征費など年間の費用もかなりかかるみたいです。

また、やはり練習や食育もとても厳しいです。ただ、高校進学の際に強豪高校に進学している先輩が多いと聞きました。

もう一方のチームは、練習会がとても楽しかったと言っていました。ただ、指導者もサッカー経験者のパパさんがほとんどで、先輩たちの人数も少ないですし遠征もほとんど行かないそうです。地元のチームや中学生とのトレーニングマッチや大会のみです。

親としては強豪チームからのオファーもあったし、子どもにも経験を積んでほしいと思って、強豪チームに入ってほしいとは思います。

・その反面、中学生から多額のお金をかけてまでやる必要があるのか?
・そこまでしないとやっぱり、プロの道は難しいのか?
・勉強との両立はできるのか?
・そこまでしなくてももう一方のチームで楽しくやったほうがいいのか?

という不安もあります。

最終的には本人の意思で決めるべきだと思いますが、親として将来のことを考えるとどのようにアドバイスをしたら良いのか悩んでいます。

どうしたら良いのかアドバイスいただけると幸いです。

 

タイプによって響く言葉が違う
子どものタイプ診断>>

 

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<島沢さんからの回答>

ご相談ありがとうございます。

お母さんが「最終的には本人の意思で決めるべきだと思います」と書いているように、自分で決めさせてあげてください。

 

■親が自分の経験から伝えるなら失敗談のほうが良い

続いて「親として将来のことを考えるとどのようにアドバイスをしたら良いのか?」についてです。

お母さんがもし、サッカーもしくは他の競技でプロ選手だった、あるいはプロを目指した経験があるのならば、そのプロセスを話したくなるかもしれません。ただ、成功した話だと、子どもは「お母さんのようにやれるだろうか?」と委縮してしまいがちです。親が子どもに伝えるのであれば失敗談のほうがベターです。

 

■「アドバイスしなければ」と力まなくて大丈夫

一方、お母さんにその経験がないのであれば、恐らくサッカーの強豪クラブの内情をよくご存知ないのではありませんか? もしそうであれば「何かアドバイスしなければ!」「親らしいことを言わなくては」と力まないほうがいいでしょう。

例えば「お母さんは経験もなし、詳しいことも知らないから自分で考えて。自分がこころからここでやりたいなと思ったチームに行けばよいのでは?」と淡々とした態度を保ってください。

似た話で言うと、私が「自分の学力以上かも?」と感じていた大学を受験するか否かを悩んでいたとき、私の母は「ママは高卒で大学入ったことがないからわからんもんね。先生たちに相談して自分で決めてね」と言われました。

まあ、そうだよなと思いました。あれこれ干渉されずに済んだので気楽でした。母親の本音として「国立に行って欲しい」とは言われましたが、実際問題として家計的に私立は無理だったので、子どもなりに現実を受け止めていたと記憶しています。

 

■子どもは自分とは別人格、サッカーをどんな形で続けるかは、息子さんの課題と認識して

また、お母さんは相談文に「中学生から多額のお金をかけてまでやる必要があるのか?」「そこまでしないとやっぱり、プロの道は難しいのか?」「勉強との両立はできるのか?」「もう一方のチームで楽しくやったほうがいいのか?」とさまざま考えを巡らせています。

しかし、これは息子さん自身が悩めばいいことです。

以前この連載で、お母さんと同じように「どうアドバイスしたらいいか?」と悩まれていた方がいらっしゃいました。確かお嬢さんが試合に出られないといったことについてだったと思います。そこで私は「アドラー心理学」にある「課題の分離」という概念を伝えました。

オーストリアのアルフレッド・アドラーが提唱し、後継者たちが発展させてきたものです。中心的な考え方のひとつでもあるこの「課題の分離」は、自分の課題と他者の課題を明確に区別したほうがいいという考え方です。

自分の課題については真摯に向き合い責任を持ちますが、他者の課題には立ち入らないようにする。他者の課題に過度に介入することは、相手に対する「支配や依存」につながる危険性があるためです。しかも、母と息子のように関係性が近ければ近いほど、課題の分離はやりづらくなります。

サッカーをどんな形で続けるかは、息子さんの課題です。子どもは自分とは別人格です。親が子どものためにできることをしてあげるだけでいいのです。経済的に許す限り必要なものを与え、洗濯や食事つくり、保護者がやる当番を引き受ける。それで十分です。

親としてもしほかにできることがあるとすれば、息子さんの選択肢を広げてあげることです。遠征費がかかる強豪に行きたいのであれば「なぜ行きたいのか?」「どんなメリットがあるのか?」といった、莫大な費用をねん出する親に対する説得材料をプレゼンしてもらってはいかがでしょうか。

 

■やってはいけないのは、親の願いを子どもに押し付けること

加えて、もっともやってはいけないことは、お母さんの願いを押し付けることです。ご相談文に「親としては強豪チームからのオファーもあったし、子どもにも経験を積んでほしいから強豪チームに入ってほしい」と書かれています。

願ってもいいですが「お母さんの願いをかなえて」などと言ってはいけません。親に指示されて決めてしまうと、試合に出られなかったり、いじめや指導者のパワハラなどに巻き込まれたりすると「お母さんが言ったから選んだのに」となりがちです。

トレセンに選ばれたのは、さまざまな経験を積むことになるので悪いことではないでしょう。ただ、市区町村選抜、都道府県選抜とトレセンにもいろいろあります。それに選ぶ方の好みもあるので「トレセン=強豪に行くべき」と思わないほうがいいかもしれません。

  

次ページ:もうすぐ中学生、進路選択は「自分の責任で選びとる場」として捉えて

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構成・文 島沢優子

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