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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

出場時間の短い息子、興味があるバレーボールに転向したほうが良いという妻と意見が割れてます問題

公開:2024年4月10日

キーワード:サッカーバレーボール自分で選択選択の科学高学歴親という病

息子本人は友達と一緒のクラブでサッカーを楽しんでいるが、公式戦の出場時間が短い事や監督の指導方法が気に入らず常に文句を言っている妻。

本人はサッカー以外にバレーボールも好きで、妻はバレーボールに転向させたがっているが、試合に出れないサッカーじゃなくバレーボールに転向させるべき? と悩むお父さんからご相談をいただきました。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、親御さんがどうしたらいいのかアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

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(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

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<サッカーパパからの相談>

この春小学校3年生になった子の父親です。

子どもがクラブチームに入っていますが、公式戦になると出場時間が短いです。

妻は監督の指導方法が気に入らず、常日頃から監督の文句を言っています。(特に遠征で行っても、出場時間が短いのは納得がいかないと苛立っています)

息子本人は友達と一緒が良いと言っており、特に気にしていない様子です。

また、息子はバレーボールも好きで家で遊びでやっています。妻はサッカーを辞めさせてバレーボールをやらせたいみたいですが、息子本人はどっちにするか決められないそうです。

私としては、今のチームのままで良いとは思いますが、いかがでしょうか?

サッカーじゃなくバレーボールに転向すべきなのでしょうか。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

私の連載はこれまでお母さんからのものが多かったです。試合に出られなくてつらそう、チームで仲間にいじめられている、コーチの暴言に苦しんでいる。いずれも、わが子のこころに寄り添うからこそ生まれた悩みでした。

最近は、それと似たような相談がお父さんからも寄せられるようになりました。以前ならお父さんたちは子どものサッカーに対し、技術を教えるとか体の使い方やスポーツ障害など、どちらかと言えば目に見えるものに注目する傾向がありました。

それが、徐々に子どものこころの部分に目を向けていただけるようになった。とても良い傾向だと感じています。

 

■サッカーかバレーかはどんな専門家でも判断できない

さて、本題です。小学3年生の息子さんが公式戦で出場時間が短いためバレーボールをやらせてみたいお母さんと、今のままで良いと考えるお父さんとで意見が割れている。そこが今回のご相談の論点のようです。

お父さんは「サッカーじゃなくバレーボールに転向すべきなのでしょうか」と直球で質問されています。サッカーかバレーか? この二択です。

しかしながら、正直言って返答しかねます。これは私を含め、どんな専門家でも判断できるものではないでしょう。

なぜならば、サッカーをやるか、バレーをやるかは息子さんが決めることです。これは、もう小学3年生だから自分で決められるでしょ? といったものではなく、どんなに小さくても危険が伴うことや害を及ぼすものでない限り、子どもに決めさせるべきです。

私は何々すべきといった言葉はあまり好きではないのですが、どのスポーツをするかといったことは子どもに決めさせてください。

 

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■子育ては「スキル」 愛情があればどんなやり方も許されるわけではない

お父さん、子育てはスキルです。愛情があればどんな子育てでも許されるわけではありません。

親が高学歴で高収入だから良い子が育つわけではありません。いくら何らかの教養があっても、アップデートされた子育ての知識とスキルを身につけていなければ、ゆがんだ子育てになる場合もあります。その象徴として、私が企画した書籍『高学歴親という病』(成田奈緒子著/講談社α新書)は昨年、ベストセラーになっています。

そして、私がここで伝えたいのは、この「子どもにすべて決めさせる」というスキルです。このスキルを身につけず、ついつい子どもがやることを親が決めてしまう。干渉してしまうケースが見受けられます。

その場合、親御さんは子どもよりも、すでに大人である自分たちの見識や知見のほうが正しいと思ってしまい、その子に良かれと考えたうえで、あれやこれやと指図してしまうのです。

実はその言動が「子どもに何かを決めさせる」という、子どもが生きる力を身につける重要な機会を根こそぎ奪っている。そのことに気づいていません。

 

■決めささせるスキルが重要な理由 その①

決めさせるスキルがなぜ重要か。理由は二つあります。

ひとつは、決断という行動には、決めるための情報集め、他者の意見を行く寛容さ、周囲とのコミュニケーションなどさまざまな能力が鍛えられるからです。

サッカーかバレーか、自由研究は何にするか、といったわかりやすい決断以外でも、宿題をいつやるか、誰と何をして遊ぶか、女子に告るか告らないかといった日常的なものも含めて、何かを「決める」という行動をどれだけ多くやらせるか。

そこが子育ての質を左右すると私は考えています。

 

■決めささせるスキルが重要な理由 その②

二つめは、自分のことは自分で責任を取らせる教育につながるからです。決めさせてもらえず、親のひと声で人生が決まっていく。そうすると、その先で困難なことがあったり、ネガティブなことが起きると、決めた親を子どもは恨みます。

決められたレールを懸命に走っていたのに、脱線事故が起きてしまえば、例えば子どもはこう言うでしょう。「お父さんやお母さんが○○をしろって言ったからやったのに、コーチは怒鳴ってばかりだし、仲間からは意地悪をされる。もう嫌だ」

選択をさせることの重要性は、コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授の著書『選択の科学』で解き明かされているのでぜひ読んでみてください。本の表紙には「選ぶことこそ力につながる」とあります。

この本には、私たちが生きるうえで選ぶという作業がいかに重要かが膨大な事例をもって書かれています。

整備された環境にいるはずの動物園の動物は、野生の動物たちよりはるかに平均寿命が短い。なぜならば、餌や行動など自分で選択することができないから。

企業の社長や幹部といった重い責任を伴う人たちの平均寿命は、生涯を従業員として終えた人たちよりも長い。ハードな毎日を送っているはずなのに長生きなのは、ある程度指示通りに動く従業員と違って裁量権や選択権があるからだそうです。

つまり、どんなことも自由に選ぶ権利を与えられることで、人はエネルギーを蓄える。逆に誰かに従い続けることは私たちが考えている以上に、ストレスフルなのです。

 

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取材・文 島沢優子

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