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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

指導者が息子を劣等生扱いするのがツラいのでチームを辞めさせたい問題

公開:2022年8月10日 更新:2022年10月17日

キーワード:下の学年と練習出してもらえない劣等生扱い指導者試合経験

人数が足りないわけじゃないのに、下の学年と練習させられる。息子と女子だけユニフォームがもらえなかった。チームから共有される試合の写真もうちの子だけ写ってない。

同じ金額を払っているのに、試合経験を積める子と見限られた子。劣等生扱いされているのは公開処刑みたいで私がツラくてサッカー辞めさせたい。どうすればいい? というご相談。出場機会の悩みを持つ親御さんも多いのでは?

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの知見をもとに、お母さんへのアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<試合に出られない息子。上達しないのに時間の無駄と思う自分がイヤです問題

 

<サッカーママからのご相談>

はじめまして。小4の息子は年中からサッカーを始め、本格的に今のチームに入団したのは年長からです。

悩みはだいぶ以前からで、ずっとモヤモヤしたまま続けてきました。

所属しているのは、地元のスポ少です。勝負の世界なので上手な子が試合にたくさん出るのは仕方のないことなのは分かっています。とはいえ、なかなか上達の遅い我が子に対しての指導者の劣等生扱いがすごいのがツラいです。

たとえば
・4年生が呼ばれている練習試合に息子と女子は呼ばれず、下学年の練習へ行かされた
・息子と女子だけユニフォームを与えられなかった
・フィールドから→キーパーになったが最近では別な子にキーパーを教え始め、その子ばかりを起用
・始まったばかりの4年生大会にほとんど試合に出してもらえない

と、こんな感じで指導者が息子に対してあからさまな劣等生扱いをするので保護者、チームメイトもうちの息子を「1番下手」と認識しているんだろうなと思います。

大会には息子以外の4年全員と、3年や2年の子が出ていました。4年生は9人なので人数が多くて試合に出られない子がいるわけではないです。最近はキーパー以外で出ることはほぼなく、ごくたまにフィールド出されたところで、動きが悪いのか叱られていることばかりです。

「試合の写真です」と、たくさん写真が送られてくる中に、出場機会の少ない息子の写真だけ1枚もないこともしょっちゅうです。そういうのも、全体の前で公開処刑されているようでツラいです。

ちなみに親の色眼鏡かもしれませんが息子そこまで際立って下手なわけじゃないと思います。リフティングも少しずつではありますが回数ものびてきているし、自主練もしています。

全く努力していないわけではなく、サッカーは好きなんです。だからこそ惨めな思いばかりさせられるのは悲しく......。

みんな同じ団費を支払っているのに、たくさん試合経験を積んでどんどん上手になっていく子、反対に4年生でもうもう見切られたのかほとんど試合に出してもらえず、下学年との練習に混ぜられてばかりで試合経験も積めない子。

サッカーが好きで、サッカーがやりたくて、チームに入ったのに...。これでは上手な子達との差はどんどん開く一方ではないでしょうか?

地元のスポ少であっても、上手な子にしかサッカーの試合に出る資格はないというのでしょうか。この年代において、いつも惨めな思いをしたり、ここまでの差別を受けないといけないものなのかと思い悲しくなってしまいます。

息子は辞めたくないと言っていますが、親としては今このチームに息子の居場所はなくなってしまったように思い、見ていてツラいので正直もう辞めさせたいです。

もしかしたら、チーム側から辞めてくれと言うわけにいかないいのでこちらから辞めていくように仕向けている? などと、考えたくもないことまで考えてしまいます。

こういうチーム、こういうことって、普通なことなのでしょうか...? アドバイスいただけましたら、嬉しいです。

 

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

お母さんとしては、息子さんが「劣等生のように扱われている」と感じているのですね。かわいいわが子が貶(おとし)められていると思えば、それはとても辛いことでしょう。ご相談の文章だけではわかりかねますが、あくまでも私の印象でお話しします。

文章全体に悲壮感があふれていて、お母さん自身が今とても感傷的になっていることが伝わってきます。そのような状態で、私の言葉が届くかどうか不安ではありますが、ひとつだけアドバイスを送ります。良かったら参考にしてください。

 

■お母さんはある意味勝利至上主義を認めている

まずは、ご自分の価値観が矛盾していないか。そこを考えてみましょう。

所属されている少年団について「こういうチームは普通のことなのか?」という質問ですが、普通という表現を「一般的なのか?」と言われれば、今現在の少年サッカーはまだまだこのようなチームは少なくありません。息子さんのチームが軸にしているのは「勝利」です。つまり勝利至上主義です。

これは、子ども全員が楽しくサッカーをする、サッカーをすることで成長するといった指導哲学とは対岸にあります。だから、チームが女子と息子さんにだけユニフォームを与えなかったり、息子さんら一部の子の写真が少なくても平気で送ってしまうわけです。

クラブが「勝てばいい」という価値観を軸に走っているので、そこに関わらない子どもは置き去りにされがちです。

ということは、お母さんと息子さんはチーム選びを間違えた、とも考えられます。子どもたちをできるだけみんな同じだけ試合を経験させたり、一人一人の成長を見守るクラブは増えています。そのあたりをもう少し見定めて選べば良かったかもしれません。

とはいえ、お母さんは「勝負の世界なので上手な子が試合にたくさん出るのは仕方のないことなのは分かっています」と、勝利至上主義をある意味認められています。

もちろん、それを責めているわけではありません。人それぞれ考え方が異なるのは当然です。

 

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■わが子がレギュラーだったら、同じことを思ったか

そこで少し耳の痛いことを申し上げると、もし、息子さんがレギュラーで出ていればどうだったでしょう? もしかしたら、写真やユニフォームのない子どもたちのことに思いが及ばなかったかもしれません。(私自身も、もう十数年前に遡りますが、途中まで息子が試合に出るだけで満足する親だったと猛省しています)

それを踏まえたうえで、クラブのことについて息子さんとどんなふうに話をしているか振り返ってみましょう。コーチはひどいねと息子さんに同情していますよね。その一方で「勝負の世界だから上手な子が試合にたくさん出るのは仕方がない」とお母さんは考えている。これは矛盾しています。

この矛盾に、まだ9歳の息子さんは気づかないと思いますか? 確実に言えることがひとつあります。

彼は「お母さんは矛盾している」と言えないけれど、みんなより自分がサッカーが上手くない、試合に出られないことで、お母さんが傷ついていることを感じ取っています。

しかしながら、一番傷ついているのは息子さんです。

大事なお母さんにツラい思いをさせている「ダメな僕」。そう感じ自己肯定感を下げているかもしれません。

 

■「私がツラい」は理解するが、本人が望んでないのに辞める提案はNG

そこで、お母さんの考え方を「息子を主体」にすることをおすすめします。今現在、お母さんは「自分が主体」になっています。

上達の遅い我が子に対しての指導者の劣等生扱いがすごいのがツラいです。
全体の前で公開処刑されているようでツラいです。
惨めな思いばかりさせられるのは悲しく......。
親としては今このチームに息子の居場所はなくなってしまったように思い、見ていてツラいので正直もう辞めさせたいです。

すべて息子さんの問題なのに、「私がツラい」と自分が主語になっていますね。上記のような愚痴を言いたいのはわかりますし、それは全く構いません。配偶者がいればその方に、ママ友に話してストレスを解消してもいいでしょう。しかし、最後に私が挙げた「見ていてツラいので正直もう辞めさせたい」はいけません。

「息子は辞めたくないと言ってます」と書かれている。ということは、辞めたら? と提案したのでしょうか。であれば、そのことは息子さんに謝罪しましょう。

「あなたの問題なのに、お母さんの思いだけで辞めたらとか言ってしまってごめんね。自分で決めてね」

ぜひそう言って謝ってください。息子さんがどうしたいのか。息子さんが今のチームでサッカーを続けたいのか。息子さんを主語にして考えてください。

 

■本人がチームを替えたいと言ったら、移籍先を探せばいい

息子を主語にするってどういうこと? って思いますよね。例えば、こんなことです。

「全く努力していないわけではなく、サッカーは好きなんです」と書かれているように、お母さんは息子さんの努力やサッカーが好きな気持ちを理解しています。ここで、次に続く「だからこそ惨めな思いばかりさせられるのは悲しく......」という負の感情をご自分で整理してください。

息子はサッカーが好き。今のチームでやると言っている。だったら、まあいいか。まだ小学4年生。彼の好きにさせよう、成長を見守ろう。彼が「試合に出られるチームに替えたい」と言ったら移籍先を一緒に探せばいいや――そんなふうに考えましょう。

また、息子さんを主体にすれば、あの人が悪い、チームがダメとお母さん自身が他罰的にならずに済みます。

 

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