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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

献身的で頑張り屋だけど覇気がない息子をどうすればいいか問題

公開:2020年5月13日 更新:2020年6月11日

キーワード:やさしいチーム移籍内気な性格移籍自己決定見守る転ばぬ先の杖

チームメイトの自己主張が強く自分のプレーができていなくて、練習中の覇気がない息子。嫌なこと、気になることを主張できればいいけれど、息子は内気な性格で、個性の強いチームメイトには息子が萎縮していることは伝わらないし保護者も気づいてない。

自信を持ってプレーしてもらうためには環境を変えるべき? というお悩みをいただきました。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、取材で得た知見をもとにお母さんへ3つのアドバイスを送りますので参考にしてください。(文:島沢優子)

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(写真はご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<どうすればスイッチが入るの? 息子のサッカーに疲れてきた問題

 

<サッカーママからのご相談>

こんにちは。小二の息子のことですが、地元のクラブチームを辞めて移籍するか悩んでます。

理由はチームメイトの自己主張が強くて息子が自分のプレーができていなくて、練習中の覇気がないのです。あくまでも親の見解ですが。

息子は内気な性格ですが、 後から入ってきた仲間には声かけてあげたり、チームメイトの為に献身的に走り、キーパーをやらされても頑張る子です。

自分で嫌なことや気になることを主張できればいいのでしょうが、個性の強いチームメイトには息子が萎縮していることは伝わらないし、その親たちも自分の子どもの活躍しか関心がないのです。私も彼らには言えません。

自信を持って楽しくプレーしてもらうためには環境を変える事が良いのか、今の環境で頑張る事が良いのか悩んでいます。

息子には自分の考えを伝えた上で他のチームの無料体験の話をしたら嬉しそうに「行く」と答えましたが、4月から小学2年生になったばかりなので どこまで理解できているか疑問です。

どうしたらいいか、アドバイス頂けるとありがたいです。宜しくお願いします。

 

<島沢さんのアドバイス>

ご相談いただき、ありがとうございます。

スポーツは、プレーする子どもの性格が、プレーの志向(守ってしまいがち、攻撃にあがっていく)や競技中の態度に色濃く現れます。時には生い立ちや、親や指導者にどう育てられているかまで投影されることもあります。

結果ばかりを求める大人に育てられている子は、本人も無意識なうちに安全なプレーを選択したり、ミスをするとわざと転んでみたりします。叱られることを回避したいし、自分でもミスを受け止められないわけです。

このことはスポーツ全般にわたって言えることですが、集団競技の中でも選手個人の意思で判断してプレーせざるを得ないサッカーではより関連性が高い気がします。

と前置きはさておき、息子さんの話をしましょう。いいところをたくさん持っている。これからが楽しみな男の子です。

 

■保護者の「心配」が子どもにとって「転ばぬ先の杖」になる可能性

内気な性格で、後から入ってきた仲間には声かけてあげたり、チームメイトのために献身的に走って、キーパーをやらされても頑張る――。息子さんの姿を、よく見ているし、理解しておられますね。ぜひ、彼の、やさしく、献身的なマインドを大事に育ててあげてください。

「自分で嫌なことや気になることを主張できればいいのでしょうが、個性の強いチームメイトには息子が萎縮していることは伝わらない」と書かれています。

個性の強い、とうまく表現してくださいましたが、まだ2年生になったばかりのちびっこギャングたちです。他者の気持ちを慮ったり、自分自身をメタ認知(自分を俯瞰で見るように理解する)するにはまだまだ数年かかります。

そのギャング集団の中で、お子さんはきっと少し周りより精神的な成長が早い。早熟なのでしょう。もちろん内気な性格でもあるのでしょうが、仲間に気を遣ったりしてやさしくできるのは、ひとつの大きな才能です。

でも、お母さんは、息子さんがやさしいゆえに少しばかり苦しんでいるように見える。それがお辛いのでしょうね。

だからといって、チームを変えれば解決することでしょうか。新しいチームなら、彼のキャラクターをみんなが理解して、彼に自信を与えてくれるでしょうか。必ずしも、それは確約されないでしょう。

「息子をわかってあげてほしい」
「嫌なことはしないでほしい」
「自信をもって楽しくプレーさせてほしい」

お母さんは、周囲にそう願っている。したがって、環境を変えるべきか否か悩んでいる。

気持ちはすごくわかります。ですが、その思考は、世にいう「転ばぬ先の杖」です。うまくいくように、わが子に良かれと思って、転んで大けがをする前に親や周囲の大人が杖を渡す。お母さんは、杖を渡したいですか?

ただし、わずか7歳の子どもが杖をついて歩き続けたら、どうなるでしょうか?

子ども時代は、友達とけんかしたり、挫折を味わったりと、転んでも自分の足で立ち上がって前に進む力をつける時期です。さまざまな経験を糧にして脚力を強化しなくてはいけません。それなのに、ずっと杖を持たされていたら、彼の脚は鍛えられません。

今まで取材してきて、そういう子をたくさん見てきました。杖を渡すお母さんも見てきました。アドバイスを求められると、このように杖の話をします。すると、なかには「無駄な挫折は必要ない」とおっしゃる方もいます。

私は無駄な挫折などないと思っているし、無駄かどうかは本人が決めることです。少なくとも、味わう前から決めることではないでしょう。

 

■子どもがまだ幼くて自己決定できないことを、親が代役で決めなくていい

そのようなことを踏まえて、お母さんに、三つアドバイスをします。

ひとつめ。

お母さんが息子さんのことを考えるとき、ぜひ、主語を息子さんに転換してください。

「ぼくの個性をみんなにわかってあげてほしい」
「ぼくに嫌なことはしないでほしい」
「ぼくは自信をもって楽しくプレーしたい」


そのように、息子さんが自分で考え、その欲求を叶えるために自分で行動に出るまで、お母さんは黙って見守ってあげてください。

「見守って」というと、みなさん「我慢しろってことですよねえ。我慢するのって辛いんですよ」とおっしゃいます。

でも、私は我慢を強いてるわけではありません。考え方を転換してほしいだけです。

「自信を持って楽しくプレーしてもらうためには環境を変える事が良いのか、今の環境で頑張る事が良いのか」と迷っていた。でも、よく考えれば、それは息子が自分で考えて解決することだ、と。

「どこまで理解できているか疑問」

お母さん自身、率直な気持ちを書いていらっしゃるように、子どもがまだ幼くて自己決定できないことを、親が代役で決めなくていい。これが二つ目です。

そして、三つ目。

委縮している息子さんを、頑張れ、頑張れと心のなかで応援し続けてください。お母さんが「頑張っているのに、そんなにきつく言われて......」と同情すると、そこに「かわいそう」という感情が生まれますよね。「かわいそう」が生まれると、血のつながった親ですから、何とかして助けてあげたくなる。杖を与えたくなる。

感情に負けて杖を与えてしまうと、子どもの成長を阻んでしまいます。

したがって、息子さんをぜひ厳しく育ててください。日本では「厳しく育てる」というと、怒鳴ったり、叱って罰を与えることだと考える人が多いですが、それは違います。何かをやらせようと怒鳴るのでは、お尻をたたいてやらせること。無駄なコミットです。甘やかしだと私は思います。

 

 

次ページ:見守ることは、ある意味厳しさでもある

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