蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

2018年10月24日

転ばぬ先の杖を用意したい過保護な親に困ってます問題

■過保護、モンスターと決めつける前に「なぜ」を考えると、解決策は見えてくる

※子どもたちもサッカーの中で、話し合って決めることは多いですよね。写真は過去のサカイクキャンプのものです。 質問者及び質問内容とは関係ありません。

それよりも、キャスティングボード(決裁権)は全員がもっている、というかたちにしたほうがうまくいくと私は考えます。

どうやって子どもを成長させていくかという「チームのビジョン」を皆さんと話し合って決めたい。「みんなで決めたい」ということを強調します。

ただし、叩き台があったほうが話しやすいので、コーチ陣が考えるビジョンをまずは紹介します。みんなで意見を出し合って、少年団をより子どもにとって成長できる場にしたい――そんなコーチ陣の希望を伝えてください。

「あそこの親は過保護だ」とか「モンスターだ」と決め付けるのではなく、彼らがなぜ過保護になってしまうのかをまずは考えます。そのうえで「過保護はダメ」と彼らの子育てを否定するのではなく、どうやったら、いま目の前にいるこの子たちが伸びるのか」ということを一緒に考えていきましょう、という姿勢を持ってください

親御さんに主体的にかかわってもらうわけです。


コーチにこうするから同意してと半ば押し付けるより、自分たちがかかわって産み出したチーム方針だと受け止めてもらう。そのほうが必ずや浸透するはずです。

本当に危険そうなときは、コーチがきちんとサポートする。「このやり方で大丈夫?」と話し合いに入る。そんなふうに、寄り添う方法を確認しておけばいいでしょう。

人は学ぼうとすれば、必ず新しい考え方に行き着きます。加えて、今の30代や40代の親御さんは、柔軟性も持ち合わせています。すでに職場で「いい仕事をするにはどんな力が必要か」と考えています。

子育てについても、すぐに結果を求めるよりも、待ってあげることや、トライ&エラーを繰り返してこそ本当の成長があることを学んでいる方も少なくありません。

コーチから保護者に何かをお願いする。何かを命令するというものではなく、常にコミュニケーションを一方通行にしない。

そんなことをぜひ心がけて、「子どもも親も楽しいサッカークラブ」を目指してください。

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)
スポーツ・教育ジャーナリスト。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。
最新刊は、ブラック部活の問題を提起した『部活があぶない』(講談社現代新書)。
前へ 1  2

関連記事

関連記事一覧へ