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勉強と進路

ジュニアユース、ユースの選択肢が少ない ――女子がサッカーを中学でも続けるために考えること

公開:2013年3月 5日 更新:2019年3月 1日

キーワード:なでしこ進路

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 今回はサッカーをプレーする女の子の進路にスポットを当てます。なでしこジャパンの活躍で脚光を浴びる女子サッカー。それでもいまプレーをしている女の子たちにとって、小学校を卒業した後のサッカーには不安がつきまとうようで・・・・・・

■女の子がサッカーを続けるために

「中学校になったらどうしようかなと思ってるんです」
 なでしこジャパンの活躍でサッカーに興味を持つ女の子が増えているようです。小学生年代の現場では、男子に混じって得意のテクニックやスピードでひときわ輝く女子選手を見かけることも珍しくありません。それが、中学生になると、成長に伴う体力などの問題で男子と一緒にプレーできる女子選手の数はかなり減ってしまいます。女子だけで構成された女子チームもまだ数が少なく、サッカーから離れてしまう女の子も多いのが現状。
 FIFA(国際サッカー連盟)ではFootball Is For ALLを掲げて、女子サッカーの競技人口に腐心しています。サッカーはみんなのもの。JFA(日本サッカー協会)でも、なでしこジャパンの強化はもちろん、地域に根ざした女子選手のサポート、特に中学生年代からの女子チームへのサポートを強化していますが、それでも女の子がサッカーを続けるにはいくつかのハードルがあるようです。
 小学生の女子選手は14,705人。そのうちの9,976人、およそ68%の選手が男子に混じってプレーしています。それが中学生になると登録選手の数が6,585人と減って、うち5257人が女子だけのチームに所属。男子チームでプレーする選手は1,328人、わずか20%と少数派になってしまいます。数字は2009年のもので少し古く、あくまでも登録人数なので、細かい違いはありますが、体感的に劇的な変化が起きたということはないでしょう。
 指導者に話を聞いても「中学1年生の夏を越えたあたりから同じピッチでプレーするのは難しくなっていく」という声が多いようです。一般的に女子の方が成長は早いので「追い越された」「もう敵わない」と、よりフィジカルの強度を求められるなかで、サッカーの面白さを見失ってやめてしまう子も少なくないそうです。
 そこで、女子チームでプレーを! となるわけですが、女子だけのチームで活動しているクラブはまだまだ少数派。JFAでも登録チームを検索できる「サッカーやろうよ 女子チーム検索サイト」を開設して普及に務めていますが、クラブの絶対数が増えないことには受け皿にはなり得ません。
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 一方、「女子だけのクラブを作っても思ったより人が集まらない」という声もあります。なでしこの活躍を入り口にサッカーをはじめた選手は確実に増えていると思いますが、それを機に一気に女子サッカーが定着するかというとそれはまた別の話です。いずれは、同じクラブ内で男子と女子チームがそれぞれできるくらいになるといいのですが、いまはちょうど需要と供給がアンバランスなターニングポイントなのかもしれません。

■中学の部活では女子は公式戦に出られない? それは誤解です!

 スポーツ少年団時代、華麗なテクニックで男子を翻弄していた女の子。彼女は中学校でも男子に混じって部活を続けるが、今度はフィジカルに圧倒され、中学では得意のドリブルも不発。一緒にサッカーをやっていた幼馴染みからは「女に何ができる」と言われ・・・・・・
 これは『さよならフットボール』というマンガのあらすじです。女の子がサッカーを続けていく難しさ、でもサッカーの楽しさはフィジカルや勝ち負けだけじゃない。そんなサッカーのエッセンスが込められた作品です。全2巻と短いので、サッカー少女をお子さんに持つ親御さんはぜひ読んでみてください。
 このマンガにも「女子は公式戦に出られない」というような記述が見られるのですが、これは2006年に改正されています。女子チームに登録しながら、通っている中学校のサッカー部でも男子と一緒にプレーしている女子中学生はたくさんいます。
 2006年に登録資格が見直され、女子チーム所属のままで、男子:第3種登録チームの部員として、全国中学校体育大会/全国中学校サッカー大会、JFAプレミアカップジャパン、高円宮杯全日本ユース(U-15)サッカー選手権大会に出場できるようになっています。
「中学で部活に入っても女子は練習しかできない」そんな風に思っている人も多いようですが、制度の面ではこれは改正されています。
「女の子がサッカーなんて」という声はだいぶ少なくなりました。それでも、この前お話を聞いたあるクラブの保護者からは「相手チームから『女なんかに負けるな』と言われて腹が立ちました」なんて声も挙がりました。
 なでしこジャパンの選手たちは小学生時代、男子に混じってボールを追いかけ、実力が認められて強豪女子クラブチームに進んだ選手がほとんど。澤穂希選手が中村憲剛選手と同じクラブで"先輩"としてプレーしていたのは有名な話ですし、宮間あや選手は当時からチームで一番のテクニシャン、両足キッカーとしてFKを任せられる選手でした。
 なでしこジャパンを目指す選手たちは努力が実れば、なでしこリーグ下部組織や猶本光選手のようにJFAアカデミーに進み道もあります。トップオブトップの選手たちの道筋はおぼろげながら見えてきました。
 あとは、サッカーが好きで、ドリブルが好きで、シュートが好きでゴールが好きで毎日でもボールを蹴りたい少女たちがサッカーを続けられる環境を整えること。
 今回紹介したように道が全くないわけではないので、まずはお近くのクラブを探してみてください。
「女の子は女の子同士」中学年代以降は確かにそうなのですが、小学生のうちは男子と一緒にプレーするメリットも大きいのはなでしこたちが証明してくれています。次回はなでしこを育てた街クラブ、男子と一緒にプレーする環境について考えてみたいと思います。
女子選手の進路選択が日本女子サッカー界の方向性を決めていく?>>
大塚一樹(おおつか・かずき)//
育成年代から欧州サッカーまでカテゴリを問わず、サッカーを中心に取材活動を行う。雑誌、webの編集、企業サイトのコンテンツ作成など様々 な役割、仕事を経験し2012年に独立。現在はサッカー、スポーツだけでなく、多種多様な分野の執筆、企画、編集に携わっている。編著に『欧州サッカー6大リーグパーフェクト監督名鑑』、全日本女子バレーボールチームの参謀・渡辺啓太アナリストの『なぜ全日本女子バレーは世界と互角に戦えるのか』を構成。
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文/大塚一樹 写真/山本浩之

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