1. サカイク
  2. コラム
  3. サッカー豆知識
  4. 息子の仲間へのポジティブな声かけに助けられたこと。【子育て奮闘記vol.3 by「中野吉之伴 子どもと育つ」】

サッカー豆知識

息子の仲間へのポジティブな声かけに助けられたこと。【子育て奮闘記vol.3 by「中野吉之伴 子どもと育つ」】

公開:2019年3月13日 更新:2019年3月18日

キーワード:お父さんコーチドイツブンデスリーガ中野吉之伴指導育成

■手を焼く子の対応で息子に助けられることもある

kichinosukenakano_ph02.JPG
休暇の間は子どもたちの成長ぶりに驚くこともある。 写真:中野吉之伴

もちろん、そこには個人差がある。

このチームでいえば、感情のコントロールがまだ一人うまくいかない子がいる。ここでは仮の名前として「オリバー」と呼ぼう。クラブに入って2か月ちょっと。チーム活動がはじめてということもある。うまくいかないことがあると、すぐに癇癪を起してしまう。PKゲームをやってGKに止められると、自分のキックだけGKが本気だと泣き出し、「もう嫌だ、帰る」と歩き出してしまう始末だった。

私がオリバーを追いかけ、彼の手をもって辛抱強く話し続ける。

「相手を悪く言うのは良くないよ。なんでうまくいかなかったのかを人のせいにしたら、後で苦しいのは自分だよ。サッカーはチームでやるスポーツなんだ。うまくいくこと、うまくいかないことがたくさんある。パスを出さないのはパスを出したくないんじゃなくて、パスを出せないからということだってたくさんある。相手の立場にも立ってみることが大事なんだ。君がうまくやりたいと思うように、まわりのみんなだってうまくやりたいと思っている。それを認められるようになることって大切なんだ」

そんなことを何回も何回も繰り返した。気持ちが「ワーッ!」となっているときには何を言われても頭に入らないものだ。「そんなことない。嫌だもう。楽しくない」とわめきだす。でも、大事なことは伝え続ける。

「帰るかどうかは君の自由だ。誰も君に『サッカーをしろ』だなんて強制はしないのだから。他にやりたいことがあって、そっちの方が楽しいならそれもまたいいことだと思うよ。でも、もし君がサッカーを好きで、サッカーを楽しみたいんであれば、どうしたらもっと楽しくなれるかも考えてみようよ。僕らは君の敵じゃないんだから」

毎回同じように癇癪(かんしゃく)を起されるとこっちも気が滅入る。

イラっとしたりすることだって普通にある。彼一人にだけ構っていられない事情もある。わがままばっかりだと、みんなも困る。それに言い続けて彼が本当に変わるかどうかなんて誰にも分らない。彼にとってサッカーが必要かどうかだってまだわからない。他に向いているものがあるかもしれない。

でも、そこで指導者が「プイッ!」と横を向いてしまったら、彼に伸ばした手を引っ込めてしまったら、できるようになるはずだったこともできないままで、伝わるはずだったことも伝わらないままだ。だから、私は声をかけ続けるつもりだ。少し気持ちがささくれそうになるときには、一緒に彼に向かって声をかけてくれる次男の姿を思い出すようにしている。

「気にするなよ」
「そういう態度はダメだよ」
「次はうまくいくって」

次男がそういって手を指し伸ばしている姿を見ると、私が先に諦めてどうすると気持ちをまた強く持つことができる。そして、帰り道のバスの中で「さっきの、助かったよ。ありがとうね」と伝えると、「あんなふうになるのだし。みんなで楽しくできる方がいいもんね」と笑ってくれる。我が子の成長の瞬間を間近で感じられることは、実はそんなに多くないのかもしれない。だからこそ同じチームで活動できる喜びをこうした形でも噛みしめることができるのはとてもうれしいことだ。

その次の練習でグラウンドに行くと、オリバーが駆け寄ってきた。「見て見て、こんな技ができるようになったよ」と笑う。「そう、その顔だよ。君はいろんなことができるようになるんだよ。だからちょっとずつでも一緒にやっていこうな」。そう心の中でつぶやく。私は「すごいじゃん! 今日の練習でその技見せてよ」と笑い返す。照れたように頭をポリポリかいて、「できるかな?」とこぼす。私は笑って答える。「できなくても大丈夫。そしたらまた試してみればいいよ。やろうとする人しか、できるようになることはないんだからね」

オリバーはうなずくとほかの仲間のところに走っていった。

その背中を見ながら私も気合を入れた。「さあ、今日もみんなでサッカーだ」。

【プロフィール】
中野 吉之伴(指導者/ジャーナリスト)
twitter●@kichinosuken
1977年、秋田生まれ。 武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成年代指導のノウハウを学ぶためにドイツへ渡る。現地でSCフライブルクU-15チームでの研修など様々な現場でサッカーを学び、2009年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)。2015年から日本帰国時に全国でサッカー講習会を開催し、よりグラスルーツに寄り添った活動を行う。 2017年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」を配信スタート

▼主な指導歴
「フライブルガーFC(元ブンデスリーガクラブ)U-16監督/U-16・18総監督」/「FCアウゲン(U-19・3部リーグ)U-19ヘッドコーチ/U-15監督」/「SVホッホドルフ/U-8コーチ」

▼著書・監修本
サッカードイツ流タテの突破力」(池田書店 ※監修/2016年)/「サッカー年代別トレーニングの教科書」(カンゼン ※著者/2016年)/「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社 ※著者/2017年)

前のページ 1  2

U-10年代にオススメ!
ドイツサッカー協会編集の指導書と人気DVDのセット
詳しくはこちらから≫
サッカー少年の子育てに役立つ最新記事が届く!サカイクメルマガに登録しよう!

※メールアドレスを入力して「登録」ボタンをクリックしてください。

メールアドレス


sakaiku_line.jpg

サカイクオススメ記事やイベントをお届けするLINEアカウント!

サカイクがお届けするイベント情報やサッカーを通した子育てに関するオススメ記事をLINEでの配信をご希望の方は、どうぞご登録をお願いいたします。
※LINEアプリをインストール後、スマートフォンから下記をクリックして「お友達追加」をお願いします。


友だち追加

最新ニュースをLINEでチェックしよう!
友だち追加
サッカー少年の子育てに役立つ最新記事が届く!サカイクメルマガ

関連記事

関連記事一覧へ

サッカー豆知識コンテンツ一覧へ(284件)

コメント

  1. サカイク
  2. コラム
  3. サッカー豆知識
  4. 息子の仲間へのポジティブな声かけに助けられたこと。【子育て奮闘記vol.3 by「中野吉之伴 子どもと育つ」】