サッカー豆知識

2014年8月21日

カンボジアにサッカーを!日本人コーチの挑戦

ベガルタ仙台ジュニアの監督として、全日本少年サッカー大会やフットサルのバーモントカップでチームを躍進させた壱岐友輔さんが、現在、カンボジアでU14世代の指導に当たっています。
 
これは日本サッカー協会のアジア貢献事業の一環としてコーチ派遣されたものであり、壱岐さんはベガルタ仙台に籍を置いたまま数年間、現地のプロジェクトに携わります。2023年Sea Games(東南アジア競技大会)での優勝を目標とするカンボジアサッカー協会が、プロジェクトの一環としてカンボジアフットボールアカデミーを設立したのが今年の2月。同アカデミーは国から強化プロジェクトとして指定を受け、また、FIFAの『GOAL Projects』のサポートも受ける一大プロジェクトとして始動しました。
 
壱岐さんは今年1月末、カンボジアサッカー協会の直結組織であるカンボジアフットボールアカデミーの監督に就任。カンボジア全土から選抜されたU14世代の子どもたちとフットボールアカデミーの施設で寝食を共にし、選手育成、スカウト、環境整備、プロモーションを4つの柱にして取り組んでいます。カンボジアではすでにJリーグでも笛を吹くレフェリーの唐木田徹さんが現地の審判員の育成に当たっていますが、このプロジェクトに携わる日本人は壱岐さんただひとり。サッカー未踏の地、カンボジアでの奮闘が続いています。今回、壱岐さんに現地の様子や今後の展望を伝えてもらいました。
 
取材・文/杜乃伍真 写真提供/壱岐友輔
 
 

■カンボジアサッカーの現在地

「わたしは日本語の語学講師も務めるなど、彼らの私生活までしっかりと関わり、人間教育をすることまで求められています。現地の子どもには整理整頓や自己管理という感覚がわかりません。私生活から教育することがサッカーのレベルアップにつながる。それは日本での経験からわかっていますからね」
 
カンボジアには出生証明がなく、当初はオーバーエイジの子どもも選抜してしまい、その後、選び直すという苦労にも見舞われたといいます。カンボジアのU14世代のレベルはというと、壱岐さんの肌感覚として「日本のU12世代と同程度」だと言います。
 
「戦術レベルは皆無に等しいです。子どもたちは自分が好きなプレーしかしませんし、できないことはできない、やろうともしないというスタンス。右足ではとんでもなくジャンプできるのに、左足では踏み切れないとか。そうかと思えば突然オーバーヘッドをしたりする。それが最初の印象でした」
 
8月現在の最新のFIFAランキングでカンボジアは201位と、東南アジアのなかでも最下位。カンボジアのプロリーグにはアルビレックス新潟プノンペンが参画したり、トライアジア・プノンペンで日本人選手が活躍したりしていますが、観客席の状況はといえば日本リーグ時代の日本とほぼ同じで、会社の同僚や知人友人が集うのが現状とのこと。その一方で、週末になるとカンボジアのテレビ局が欧州やJリーグの試合を放映するなど、ある意味で、日本よりもサッカー自体の露出は多いという逆転現象があるそうです。
 
「ただ、各クラブはアカデミーを保持していますが、所属する子どもたちが毎日練習する習慣はありません。育成に力を入れていませんし、つまり育成の重要性がわかっていないからです。そもそもカンボジアでは目標に向かって逆算して何かを積み上げていくという概念が薄いところがあります。やはり目の前の生活が最優先になるからだと思います。だからこそフットボールアカデミーを創設した意味は、非常に大きいと思います」
 
 

■まずは「ボールを蹴る・止める」の徹底から

現地の人たちには、壱岐さんの指導を受け入れようとする親日的な雰囲気があり、子どもやコーチには学びたいという欲求も感じるそうです。それを踏まえたうえで壱岐さんがカンボジアの子どもたちに課したのは、まずトライアングルパスでのボールを蹴る・止めるといった基礎の徹底でした。
 
「やればやるほど上達するし、できないことを丹念にやって短所を克服することが大事だという意識もだんだんと芽生えてきた手応えがあります。練習に対する集中力も日本の子どもたちとさほど変わりません。今までは指導者が不在で教えられてこなかっただけ、という印象があります」
 
東南アジアサッカーの雄であるタイと同様、「カンボジア人も新しいもの好き」(壱岐さん)という一面もあり、壱岐さんが指導のさいにタブレット端末を持ち込み、その映像素材を頼りにしながら指導することも十分に可能とのこと。現地のコーチ陣とは英語や覚えたての現地の言葉でコミュニケーションをとりながら、子どもたちと指導者の育成に力を注ぐ毎日です。

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