インタビュー

2025年8月18日

横浜F・マリノス対リヴァプールFC。『明治安田Jリーグワールドチャレンジ2025 presented by 日本財団』の仕掛け人が語る、ドコモとJリーグの新しい"共創関係"

2025年7月30日、『明治安田Jリーグワールドチャレンジ2025 presented by 日本財団』横浜F・マリノス対リヴァプールFCが日産スタジアムで行われ、公式入場者数は67,032人を記録。これまでのJリーグ主催試合で最多となる入場者数を記録しました。

その背景には、NTTドコモがJリーグと共に進める"共創"への想いがあります。従来のスポンサーシップを超えた、新しいパートナーシップ。そして子どもたちの未来を支える取り組みについて、NTTドコモ エンターテイメントプラットフォーム部(現在:コンシューマサービスカンパニー カスタマーサクセス部)の鈴木彰訓さんに語っていただきました。(取材・文 鈴木智之)※取材日2025年6月26日

■熱心なサポーターとしても活動

――鈴木さんのドコモでの仕事内容と、サッカーとの関わりについてお聞かせください。

鈴木: 私は1999年にNTTドコモに入社しました。ちょうどiモードがサービスを開始した年で、その立ち上げに関わらせていただいたのをはじめとして、おサイフケータイ、dポイントといった主力サービスの立ち上げを経験し、2年前からJリーグを担当しています。

サッカーとの関わりは、Jリーグ元年の1993年に遡ります。親に連れられて浦和レッズ対横浜マリノスの試合を駒場で観戦したのがきっかけです。その後しばらくサッカーから離れていましたが、入社後の配属先近くにJクラブがあり、同期に誘われて試合を観に行きました。

そこで衝撃を受けたのは、最終戦でサポーターが泣きながら「監督を辞めさせないで」と署名を集めている光景でした。サポーターの熱い思いに心を打たれ、「こういうエンターテインメントがあるんだな」と感じました。翌年からほぼ毎試合観戦するようになり、25年間サポーターを続けています。全国44クラブのスタジアムを訪れ、試合日程発表と同時に1年の予定が決まるような生活を送ってきました。

■Jリーグがさらに盛り上げるきっかけにしたい

――サポーター目線を持ちながら、ビジネスとしてもJリーグと関わっていらっしゃるということですが、NTTドコモとしてJリーグワールドチャレンジを共催し、今年で3年目になります。過去を振り返っての手応えはいかがでしょうか。

鈴木: 3年間関わってきて、それぞれに学びがありました。1年目はマンチェスター・シティという巨大なクラブがあり、協賛営業の責任者として関わりました。2年目のヴィッセル神戸対トッテナム・ホットスパー戦では、国立競技場に5万4千人を動員することができました。2年目は1年目と違って、黙っていてもチケットが売れる状況ではなかったため、メンバーが一丸となって様々な施策に全力で取り組みました。その経験が大きな財産となっています。

今年3年目はリヴァプールFCという、マンチェスター・シティに匹敵するクラブで、2年目の経験を糧に取り組んだ結果、チケットはほぼ完売しました(編注・公式入場者数67,032人を記録。Jリーグ主催試合における最多記録を更新)。このイベントの来場者の6〜7割がJリーグの試合に来たことがない方なので、Jリーグをさらに盛り上げるきっかけになればと考えています。

■「広告」ではなく「共創」を選んだ理由

――企業として「広告」ではなく「共創」を選んだ理由について教えてください。

鈴木:JリーグやJクラブも「スポンサー」から「パートナー」という言い方に変わってきています。従来のスポンサーシップは協賛金を支払って広告を出すモデルでしたが、広告価値の判断は企業として難しい面がありました。

私たちは協業により企業の収益を確保し、それをJクラブ・Jリーグに還元することで、リーグやクラブがより発展する仕組みを作りたいと考えています。単純な支援者やスポンサーではなく、一緒に作り上げる当事者として「共創」で関わっていくことが重要だと思っています。

私もサポーターなのでよくわかるのですが、クラブをスポンサードしていただいている企業の商品を積極的に購入するなど、パートナー企業に対して仲間意識を持ちながら、リスペクトの気持ちもあります。サポーターはパートナー企業をファミリーの一員として捉えているので、私たちドコモもそこに加えてもらえたらと思っています。

■ドコモ未来フィールドを展開

―― 一流プレーヤーのフィールドを公開し、子どもの夢を育む「ドコモ未来フィールド」という活動をされていますが、これについて詳しく教えてください。

(担当のブランドコミュニケーション部の福澤氏が登場)

福沢: ドコモ未来フィールドは、「ドコモ未来プロジェクト」という子どもの未来を応援する3本柱の1つです。ドコモ未来ミュージアム(創作絵画コンクール)、ドコモ未来ラボ(プログラミングコンテスト)と併せて展開しています。

私たちがスポーツチームや団体にスポンサードする際、単なる広告・露出効果ではなく、パートナーと一緒に子どもの未来のために何かできないかという思いから生まれたプロジェクトです。2023年以降20回以上開催し、1回あたり30〜40名の体験となっていますが、参加者からは非常に高い満足度をいただいています。(編注・『Jリーグワールドチャレンジ2025』では、リヴァプールFCアカデミーのサッカー教室、元プロサッカー選手の柿谷曜一朗さんを招いたトークイベントなどを開催。詳細はこの記事の最後に掲載しています)

意識しているのは、表舞台だけでなく裏舞台も含めて、一つのイベントや興行が成り立っていることを伝えることです。例えばサンフレッチェ広島では、サッカー体験だけでなく、エディオンピースウイング広島(ホームスタジアム)の芝の管理方法などを学び、体験してもらいました。プロの方の言葉は子どもたちの心に深く残り、「これからもサッカーを頑張ろうと思った」など、モチベーションになってくれているようです。

■子どもたちの未来や幸せをつなげていきたい

――最後にドコモとして、今後の子どもたちのサッカー支援にかける想いをお聞かせください。

鈴木:これは私の個人的な想いですが、ドコモには47都道府県に支店・支社があり、そのエリアの社員が地元クラブを応援する風潮を作ることで、どのスタジアムにも1万人以上の観客が入る環境を作りたいと考えています。スタジアムで家族連れが楽しむ姿、子どもたちが自分のクラブを応援する姿を見ると、サポーター一人ひとりの幸福度向上を実感します。

そのためにドコモとして、通信環境の改善、スタジアムでのキャンペーン「d払い×クラブ応援店」「推しJクラブ応援キャンペーン」といった取り組みを通じて、ファン・サポーターの皆様に寄り添うことで、子どもたちの未来や幸せをつなげていきたいと思っています。

■『Jリーグワールドチャレンジ2025』横浜F・マリノス対リヴァプールFCでの「ドコモ未来フィールド」の様子

当日は抽選で選ばれた親子が参加し、リヴァプールFCアカデミーによるサッカー教室、柿谷曜一朗さんのトークイベント、AIキック診断、スタジアム&ピッチ見学、そして試合観戦と、盛りだくさんの内容で行われました。

柿谷さんは子どもたちに向けて「親への感謝を頭のどこかではなく、頭の真ん中に置かなければならない。親への感謝を忘れる海外のスーパースターはいない」と感謝の心を持つことの大切さを説き、子どもの頃によくやっていた練習として「壁当て」「8の字ドリブル」など、サッカーが上手くなるコツを教えてくれました。

「なんでもチャレンジ。失敗したけどそれでもやりたいと思うこと、それが夢だと思う。とにかく挑戦してほしい」と語る柿谷さんの話を子どもたちは真剣な眼差しで聞き、活発に質問をするなど、大盛況のうちにイベントは終了しました。

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