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インタビュー

JFAが取り組む「価値共創」。パートナーと共に課題解決に挑む、新たなスポーツビジネスのかたち

公開:2025年7月30日

日本サッカー協会(JFA)は2023年から従来の露出中心のスポンサーシップに加え、パートナー企業と共に社会課題の解決に取り組む「価値共創」の活動を協業するパートナーシップをスタートした。その価値共創活動の事例と、現代の日本サッカーを取り巻く状況について、JFAパートナー事業部の楢﨑克之氏に話を聞きました。(取材・文 鈴木智之)

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──まず、価値共創型パートナーシップの背景と理念について教えてください。

従来型の露出メインのスポンサーシップをしっかり残しつつ、価値共創という考え方をもう一つの柱として加えたのが、2023年にスタートした、『JFA PARTNERSHIP PROJECT for DREAM』です。これまでは日本代表のパッケージと国内中心のJYD(JFA Youth & Development Programme。2023年より『JFA PARTNERSHIP PROJECT for DREAM』に変更)に 分かれていましたが、時代の変化とともに求められるものが変わってきているという認識のもと、何が必要かを起点にパートナーシップを再構築しました。従来の広告露出やブランド認知にフォーカスしたスポンサーシップに加えて、サッカーの社会的価値や我々が持つアセットをさらに活かすことを目指し、サッカー界、パートナー企業、そして社会にとって「三方よし」となる取り組みをパートナー企業ごとに行っていくことを目指しています。
 
──楢﨑さんご自身は、この事業部でどのような役割を担っていらっしゃるのですか?

主にパートナー企業との向き合い(プロジェクト企画/推進やパートナーニーズに沿ったアクティベーションの設計/推進など)を行いながら、価値共創活動全体のリードもしています。2023年に価値共創が始まって以降、これまでは実績を積み上げるフェーズと捉えていましたが、ここからは、これまでの実績を振り返り、質を上げ、さらにスケールをさせていくといったことが必要だと考えています。そのために、これまでの課題整理や今後どのように改善し、質を上げていくかといったところのJFA内での旗振りをしています。
 
──ANAとのパートナーシップは、どのような経緯で始まったのでしょうか?

ANAさんは日本を代表して世界に飛び立っていくという点でJFAとの親和性があります。コーポレートカラーが同じブルーというのも一つの要素です。ANAさんとの価値共創も、『サッカーを通じて社会と関わる輪をひとつのチームと捉え"TEAM BLUE"』という名称で展開しています。

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──鹿児島でのJFA全日本U-12サッカー選手権大会 応援企画について、詳しく教えてください。

この企画は、JFAのサッカー大会とANAさんの航空移動というアセットを掛け合わせ、体験を通じて子どもたちの成長の場を作ることを目的としたプロジェクトです。3泊4日の期間中、 サッカーをするだけでなく、元サッカー日本代表選手による体験型の「夢の教室」や知覧特攻平和会館を訪問し、なぜ今サッカーができているのかなど、平和の大切さを学ぶ、教育的な要素も盛り込みました。本プロジェクト内で実施したワクワクサッカー交流会では、全国から5チーム、地元鹿児島から3チームを招待し、全国大会で使用しているピッチでプレーする機会を提供しました。コーチや保護者は口出し禁止というルールを設け、2時間という限られた時間の中で、子どもたちは頭をフル回転させて、思う存分サッカーを楽しんでくれていました。ジュニア年代では、いまだに炎天下の中で3~4時間も練習しているチームもありますが、決められた時間の中でいかに質をあげて取り組めるかというところも重要だと感じています。そうした考え方の転換も促したいと思っています。

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──価値共創に取り組んでみて、従来のスポンサーシップとの違いをどう感じています か?

最大の違いは、サッカー界や社会の課題にパートナー企業さんと一緒にアプローチできることです。JFAも取り組んでいくべきことが多くある中、まだまだリソースやお金の問題で優先順位をつけざるを得ない現状があります。価値共創活動を通じて、パートナー各社にもメリットを感じてもらえれば、これまで着手できなかった課題に取り組む糸口が見つかります。パートナー企業やサッカー界、そして社会をよくしていくための活動に、私自身、非常にやりがいを感じています。

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──他のパートナー社との事例も教えてください。

私が担当させていただいている企業のアディダス ジャパン株式会社さんとは、2023年に『JFA アディダス DREAM ROAD』というプロジェクトを立ち上げました。世界基準の選手育成をテーマに、エリートユース選手をさらに引き上げることに取り組んでいます。これまでの2年間で海外トップクラブに10回、39名の選手を派遣し、選手たちは、海外トップクラブでの留学を通じて、Jリーグ契約を勝ち取った選手や各年代の代表チームで活躍する選手など、次のステージに進んでくれています。
 
このDREAM ROADで、興味深いエピソードがあります。私がレアル・ソシエダを訪問した際、ソシエダのU-14の選手たちは練習前に必ずクラブハウスで勉強をしていました。そこで私はある選手に「なぜ毎日そんなに勉強しているの?」と聞いたところ、「プロになれるかは自分が選ぶのではなく、周りが決めるものでコントロールができない。だから、プロサッカー選手を目指すと同時に自分でコントロールできる目標も持って取り組んでいる。そのために勉強が必要。」と答えました。14歳の選手が、そんな考えを持っていることに感銘を受けました。 それに関連するエピソードとして、JFA U-12選手権応援企画で「夢の教室」を行った際、松井大輔さんに先生となってもらい子どもたちにお話をいただきました。終了後、子どもたちに将来の夢を発表してもらったのですが、ほとんどが「サッカー選手」と答える中、一人の子が「建築士になりたい」と言いました。サッカーをしているから、サッカー選手を目指さなければならない、周りに流されて「サッカー選手」と答えるのではなく、自分の意見を持ち、臆することなく発表していたのです。その姿を見て、将来に向けた選択肢を持つことの大切さを感じると同時に、価値共創のプロジェクトを通じて、子どもたちに多様な経験を与え、多くの価値観、考え方があることを知ってほしいという想いを強くしました。

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──ANAとの価値共創活動の今後の展開について教えてください。

ANAさんからは価値共創活動は他にはない活動という声をいただいており、積極的に取り組んでいます。現時点では、海外留学プログラムとJFA U-12選手権応援企画(鹿児島)の2つのプロジェクトが進んでいます。鹿児島での取り組みは、ANAの鹿児島支店や、鹿児島県サッカー協会とも連携し、地域創生も含めた取り組みができました。お互いのリソースを活用し、サッカー会、ANA、そして社会の3方にメリットが出る活動を今後も展開していきたいと考えています。
また、このようなプロジェクトを通じて、次世代への成長と学びの機会創出を軸に、地域社会への貢献にも取り組んでいきたいです。

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取材・文 鈴木智之

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