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インタビュー

日本から世界レベルのGKを発掘するために。権田修一を輩出したFC東京が取り組むGK育成プロジェクト

公開:2022年12月13日 更新:2023年6月30日

昨今、GKの重要性が広く認識されるようになってきた。FIFAワールドカップカタール2022を見ても、どのチームにも絶対的な守護神を擁しており、GKの活躍が勝負の行方を左右するケースも少なくない。

日本サッカー協会も、かねてよりGK育成プロジェクトを立ち上げるなど、世界レベルのGKの育成に力を入れている。クラブではFC東京が「GKプロジェクト」を10年以上前から企画しており、日本代表の権田修一や各世代別代表に選ばれた波多野豪を始め、多数のGKを輩出している。

そんなFC東京が、2022年よりさらなるGKの発掘・育成を目指し、GKプロジェクトを拡大。小学5、6年生、中学1、2年生を対象とした『2022FC東京 Next Goal Keeper Project~次のGKは君だ!!~』を開催するなど、次代のGK育成に注力している。

そこで今回はFC東京のトップチームでGKコーチを務める藤原寿徳氏と、トップチームでアシスタントGKコーチを務める山下渉太氏に、GKプロジェクトの内容と現代のGKに必要な要素について話をしてもらった。COACH UNITED ACADEMYではトレーニング動画も公開しているので、そちらも合わせて参考にしてほしい。(取材・文:鈴木智之)

(※COACH UNITEDからの転載記事になります)

FC東京が実践する
GKトレーニングの詳細はこちら

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(GKプロジェクトの一環でジュニアユース、ユースに所属する選手をトップチーム、アカデミーのGKコーチが勢揃いで指導した。この模様はCOACH UNITED ACADEMYで配信中)

育成年代ではGKもフィールドプレーヤーの練習を経験する

現代サッカーのGKに求められる要素は多い。シュートストップを始めとする、ゴールを守るプレーは当然のこと、マイボール時はビルドアップに参加するなど、フィールドプレイヤー顔負けの技術も必要だ。

FC東京のGKプロジェクトでは、小学生の場合、「GKコーチの指導のもと、フィールドプレーヤーのような練習をしています」と山下GKコーチは話す。

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(トップチームでアシスタントGKコーチを務める山下渉太氏)

「私は波多野豪がU-13のときから、GKコーチとして携わってきましたが、足元の技術も含めて、フットボーラーとしての能力は非常に高かったです。フランスでのプレー経験もある山口瑠伊(水戸ホーリーホック)もポテンシャルの高い1人でした」(山下)

それを踏まえて、GKとしてのトレーニングもすることで、現代サッカーに求められるGK像にアジャストできるようになっていったという。

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(FC東京のアカデミー出身で現在はトップチームで活躍する波多野豪)

藤原GKコーチも「ジュニアも通える、GKプロジェクトのアドバンススクールでは、利き足とは反対の足でも、『ボール止める、蹴る、運ぶ』をできるようにトレーニングしています」と、足元の技術を高めるための取り組みを重視していると教えてくれた。

技術習得に適したジュニア年代で、足元の技術やコーディネーション能力などの動作スキルを獲得し、体が大きくなり始める中学生年代から、GKに専念する流れがあるという。

「FC東京U-15から青森山田高校に行って、全国大会で活躍した廣末陸は、中学1年生からGKに専念した選手です。子どもの頃からGKをずっとやってきた選手ではなく、フィールドプレイヤーとしてもプレーできる能力の選手が、GKに転向していく流れがあります」(山下)

また、FC東京のGKアドバンスクラスやGKプロジェクト内のトレーニングでは、GKがFWとしてプレーするといったトレーニングを通じて、「FWはGKにこうやって守られると、シュートが打ちづらいんだ」「GKと1対1の場面って、FW側もやりにくいんだ」などを感じられるように、技術だけでなくメンタル面からもアプローチしているという。

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(トップチームでGKコーチを務める藤原寿徳氏)

一時代前は「日本人は身長が低い」と言われてきたが、ことGKに関して、その言説は当てはまらなくなってきた。185cm~190cmクラスの選手も多数出てきており、藤原GKコーチは「ワールドスタンダートに近い身長、フィジカルを持った選手も多くいるので、体格は言い訳にならない」と認めた上で、「GKも日本人の特性を出すことが大事」と感じている。

「日本人の特徴はビルドアップの上手さやアジリティ、敏捷性の高さにあると思います。動きが良くてビルドアップもできる、バランスの良いGKを目指す中で、ゴールを守るために、最後まで体を張り続けるメンタリティを持った選手を育成していきたいです」(藤原)

世界で活躍するGKを育成するにはGKコーチの数を増やすこと

FC東京の守護神はヤクブ スウォビィクが務めているが、藤原GKコーチは「彼は190cmありますが、俊敏性も高いです。彼のプレーを間近に感じることで、日本人選手ももう一段、レベルを上げなければという気持ちになっています」と話す。

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(2022シーズンから守護神として活躍するヤクブ スウォビィク)

トップからアカデミーまで一気通貫して、守護神の育成に力を入れるFC東京。藤原GKコーチは「フィールドプレイヤーは、この20年の間で世界との差を縮めました。GKもそれに続きたい」と言葉に力を込める。

「そのためには、GKコーチの数を増やすこと。そして何より、指導者の方々の、GKに対する理解が深まること。この両輪をもとに、我々GKコーチはGKに特化したものを伝えていくことができればと思っています」(藤原)

山下GKコーチは、育成年代のGKと接する際のポイントを、次のように話す。

「GKは失点場面がクローズアップされやすいポジションです。ジュニアの試合を見ていても、失点したGKに対して、厳しい言葉がかけられている場面を見かけることがあります。GKは1個の失点で勝敗を大きく左右するので、心も体もネガティブになることが多いと感じます。指導者も親御さんも含めて、前向きに、ポジティブな言葉をかけてあげてほしいと思います」

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FC東京のGKプロジェクトでは、専門のGKコーチが指導するので、当然だがGKのメンタリティをよく理解している。

「トレーニングでは、ポジティブな声掛けがよく出ます。GKのメンタリティを理解しながら、ポジティブに働きかける。そしてGKにもサッカーをさせる。そういう気持ちで向き合っています」(山下)

カタールW杯では、FC東京アカデミー出身の権田修一が日本のゴールを守り続けた。これからもFC東京は、彼に続くような選手の輩出を目指し、GK発掘・育成活動を続けていく。

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藤原寿徳(ふじわら・ひさのり)
駒澤大学を卒業後、同大学でサッカー部のコーとして指導をスタート。
1995年には、鹿島アントラーズのGKコーチに就任。ユースのGKコーチも兼任して、後にワールドカップ日本代表にも選出された曽ヶ端準などのプロ選手を輩出した。2009年に京都サンガF.C.のGKコーチに就任。
2011年には、ロンドンオリンピックを目指すU-22日本代表のGKコーチに就任した。2013年、ジェフユナイテッド市原・千葉のGKコーチに就任。その後、2016年10月から12月まで、レノファ山口FC、2017年にはFC今治でGKコーチを務めた。2018年には、大宮アルディージャ、2020年にはサンフレッチェ広島のGKコーチに就任した。現在は、FC東京でGKコーチを務めている。

山下渉太(やました・しょうた)
JFA公認B級、JFAGK-L3級ライセンス保持。東京学芸大ではキャプテンを務めた後、早稲田大学GKコーチとして指導をスタート。2011年にFC東京U-15深川・むさしにGKコーチとして加入。12年からは、U-15深川GKコーチ専任、16年途中からトップチームのGKコーチを担当。2017年〜2020年はFC東京U-18でGKコーチを務め、2021年からは、トップチームのGKコーチを担当している。

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