インタビュー

2022年8月 5日

プレミアリーグのタレント育成システムを作った人物が語る、「トッププレイヤーを育てるシステム」とは

イングランドでタレントを生み出す育成システムの基盤を作ったリチャード・アレン氏が、今シーズン横浜FCのシニアフットボールエグゼクティブ・テクニカルアドバイザーに就任。

前編では、リチャード氏が考える日本の課題、日本サッカー発展のために必要な要素を伺いました。

後編では、日本で「良い選手が生まれる仕組み」をどう作ればいいのかをお送りします。
(取材・文:KEI IMAI)

 


リチャードさんが語る、良い選手を育てるシステムとは

 

<<前編:「日本で最高のアカデミーをつくる」横浜FCアカデミーアドバイザーのリチャード・アレン氏に聞いた日本サッカー発展のヒント

 

■プレミアリーグでは自国人が試合に出られてない、という課題

――イングランドは選手育成において、どんな課題があったのでしょうか、その課題をどのように解決してきたのでしょうか。

プレミアリーグは世界各国のトップ選手が集まるため、非常にレベルが高いリーグです。イングランド人が試合に出られる割合は28~32%、チャンピオンズリーグになると22%ほどになるというデータがあります。つまり3割以下のイングランドの選手は、よりレベルの低いリーグでプレーしているということになります。

この状況を変えるために、まずイングランドDNAというプロジェクトを立ち上げました。ホームグロウンプレイヤー(イングランド出身のトッププレイヤー)を増やすための取り組みです。

そのフィロソフィーとして、
1.WHO WE ARE 私たちは誰で
2.HOW WE PLAY どのようにプレーして
3.HOW WE COACH どのようにコーチをして
4.将来的なイングランドの選手を
5.スポーツ科学を取り入れて、DNAを育む
という5つの柱で取り組んでいます。

 

サカイクの最新イベントや
お得な情報をLINEで配信中!

 

■自国出身のトッププレイヤーを育てるシステム

エリートプレイヤーズパフォーマンスプラン(EPPP)というプレミアリーグと共同で運営しているものがありますが、これもホームグロウンプレイヤー(イングランド出身のトッププレイヤー)を量と質の両面で増やすことが目的です。

そしてアカデミーシステムへの投資も行っており、プレミアリーグから評価されたアカデミーにはその評価によって異なる助成金が分配されます。分配されたお金は、ホームグロウンプレイヤーの質と量を上げるために、施設や指導者の確保など育成のために使われます。

この育成システムを客観的に評価する必要がありますが、これを外部の専門機関に委託しています。育成資料の検証とヒアリング、トレーニング内容や試合の分析を通じて育成組織を評価するシステムが欧州にはあります。チームの「フィロソフィー」や「カリキュラム」「メソッド」「選手評価」などのシステムが幅広く評価、査定されます。

これらのシステムが機能しはじめてから、ジェームズ・サンチョ、フィル・フォーデンなどのホームグロウンプレイヤーが出てくるようになりました。マンチェスターシティ、ユナイテッド、チェルシーなど世界のトッププレイヤーが集まる中でプレーできる選手を育成するためにはシステムを変える必要があったのです。

 

■選手育成においては、コーチが子どもたちにオーナーシップを持たせることが重要

――育成システムの構築と同時に、指導者のレベルアップも必要になると仰いました。日本の育成年代のコーチへアドバイスをいただけないでしょうか。

コーチはとても重要な存在です。デモンストレーションできるスキルがないといけませんし、コーチングの知識も必要です。子どもたちのことを知ることも重要で、学習プロセスもそうですが、何を感じ、何をしようとしているのかもしっかりと把握しなければなりません。
そしてなにより、子どもたちが自分達で問題を解決する力を養うことがとても大切なことです。そのために子どもたちにオーナーシップ、権限を持たせてあげてほしいと思います。
育成システムが機能する上でコーチが担う役割はとても重要なのです。

 

■横浜FCでのビジョンとエリートプログラムについて

――横浜FCでのビジョン、エリートプログラムについてお聞かせください。

ビジョンとしてはまず、日本で最高のアカデミーにすることです。質の高いサッカーを体系的に学べる環境をつくりたいと思っています。しかしながら、すべての選手がプロになれるわけではないので、サッカーをコーチングすると同時に、それ以外に一人ひとりの適正を踏まえて最適な道を提案できるようなアカデミーにしたいと思います。

エリートプログラム開設の狙いについてですが、世界で活躍するために必要な5つの要素を落とし込んでいきます。

・効果的な仕事ができる
・高い技術をもっている
・理解度に優れている
・運動能力に優れている
・人間性に優れている

これらを養うために、エリートプログラムでは選手をスカウト、セレクトします。そして世界で戦うために必要なレベルの高いトレーニングを行います。
海外遠征にも行きます。国外のチームとの試合経験を重ねながら育成することが非常に重要だからです。

選手個々の成長プロセスを定期的に評価し、適切なレベルでのプレー機会を提供することで選手の成長機会を担保していきます。

 

横浜FC「エリートプログラム」開校のご案内>>

 

リチャード・アレン氏プロフィール
2005年~2012年 トッテナム・ホットスパーFCアカデミー部門採用最高責任者
2012年~2014年 QPR FC アカデミー統括最高責任者
2014年~2017年 FA(イングランドサッカー協会)タレントID(才能発掘及び育成)最高責任者
2018年~2021年 ラフバラ大学フットボール統括ダイレクター
2022年~ 横浜FCシニアフットボールエグゼクティブ テクニカルアドバイザー

 

サッカー少年の親が知っておくべき
「サカイク10か条」とは

 

1

関連記事

関連記事一覧へ