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インタビュー

多くの指導者たちや両親から吸収した「考える力」と「柔軟性」。高校・セレッソ・代表と複数の草鞋を履く西川潤の可能性

公開:2019年8月 3日 更新:2023年6月30日

キーワード:インターハイライフスキル感謝の心桐光学園自分で考える力西川潤

高2でセレッソ大阪に内定し、クラブ史上2番目の若さでデビューを飾るなど、今後の成長が楽しみな若手の1人、桐光学園の西川潤選手。先日幕を閉じたインターハイでは初優勝に貢献しました。

前回のインタビューでは自立心や自主性に磨きをかけ成長できた理由、サッカーの面で忙しい生活を送りながらも、授業への参加態度や課題の提出など学校生活も両立していること、監督の考えを理解して息子を預けたご両親はサッカーには口出しをしない、などサカイク的なお話をお伺いしました。

今回は西川選手本人の言葉を通して、常に自分で考えて判断するようになった背景にサッカージャーナリストの元川悦子さんが迫ります。ご両親への感謝の意も述べていますが、どんなところに感謝をしているのか、サッカー少年少女の保護者の皆さんぜひご覧ください。

(リード:サカイク編集部/ 本文取材・執筆・写真:元川悦子)

■監督の指示を頭の中で整理して試合に挑む

7月25日から沖縄県で開幕された2019年夏の高校総体。最大の注目は5~6月の2019年U-20ワールドカップ(ポーランド)に参戦した現役高校3年生FW西川潤擁する桐光学園だった。彼らは8月1日の決勝で富山第一を1-0で撃破。初の頂点に立った。

そのけん引役となった西川は2020年春のセレッソ大阪入りが内定。すでに4月13日のコンサドーレ札幌戦でJ1デビューを飾っている逸材だ。FCバルセロナが興味を示しているとも報道されており、今回の高校総体優勝も相まって世間の関心は高まる一方だ。

彼のプレー環境はこの半年で目まぐるしく変化している。

「1月にレバークーゼンのBチームに練習参加して、2~3月までセレッソのキャンプに行きました。その後、U-20代表合宿に帯同し、4月にいったん桐光に戻り、5月の連休はセレッソに。そこからU-20代表に合流してポーランドの大会に出ました。6月からは桐光で学業とサッカーに重点を置いてます。自分でも慌ただしすぎて、いつ何をやっていたか思い出せないくらいです」と本人も苦笑いするほどだった。

特に大きな刺激を受けたのが、セレッソとU-20での経験だ。セレッソではA代表経験のある清武弘嗣柿谷曜一朗らとともにプレーし、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督からポジショナルプレーという独自の戦術に触れ、自分なりに理解を深めた。

「キャンプの時の3バックと今の4-4-2とはスタイルが違いますけど、どのポジションでもトライアングルの真ん中に立って、プレッシャーのかからないところに位置取りすることはすごく言われていて、自分でも強く意識しています。今までやったことのないサッカーなので面白いし、やりがいも感じます。監督には自分から聞くこともありますし、ミーティングでメモを取ったりして瞬時に理解して、プレーで表現しようとしています。試合前はメモを取れないので頭の中で整理して試合に挑んでいます」と西川は自ら積極的に情報収集に努め、頭に叩き込む努力を欠かさないという。

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インターハイ初優勝の桐光学園をけん引したFW西川潤選手

 

■年長者のアドバイスは聞くが、大事なのは自己判断

こうした姿勢はU-20代表でも同じ。自身初のFIFA公式大会で、西川は初戦のエクアドル戦の途中出場を皮切りに3試合に出場。イタリア戦と韓国戦はスタメンに抜擢された。イタリア戦は田川享介(FC東京)と斉藤光毅(横浜FC)の負傷によって、西川のポジションが右サイドから2トップへの一角へと移動。絶対にベスト16入りを果たさなければならない難しい状況の中で適応力と柔軟性をしっかりと示した。

「ポジションが変わると守備のやり方とかは変わりますけど、自分のよさを生かすことはまず第一に意識してます。ポーランドに入る前、ずっとケガをしていて国内での調整試合や現地でのコロンビアとのテストマッチにも出られなかったことには焦りも感じました。『早く回復してプレーできるようにならないといけない』という気持ちが強くて、最初のエクアドル戦は空回りした部分もあった。メンタルの切り替えを強く意識しました」

苦境に直面した時、西川は監督やチームメートのアドバイスを頼りにするのではなく、自分で考え行動することをモットーにしている。U-20ワールドカップでも影山雅永監督やキャプテンの齊藤未月(湘南)ら年長者たちは心強い存在にはなったが、自己判断を大事にするのは忘れなかったという。

「僕は地元の青葉FC、横浜F・マリノスのアカデミー、桐光学園で育ち、中学時代から代表に呼んでもらいましたけど、出会った数多くの恩師の話を聞いて、理解し実践することを繰り返しやってきました。それが自己判断力を高めたと思うし、苦しい状況でも自分で考える習慣がついたと思います。

例えばマリノスだったら、ジュニアユース時代の坪倉進弥監督、尾上潤一コーチ(現アカデミーアシスタントダイレクター兼スカウト)、菊原志郎コーチ(現広州富力アカデミーコーチ)、松木秀樹(現ジュニアユースコーチ)、ジュニアの田畑悠コーチといった方々にお世話になりました。桐光の鈴木勝大先生からは生活面でかなり怒られましたけど、それも人としての成長につながっていると思います。そして年代別代表ではU-17の森山佳郎監督、U-15の有馬賢二監督(現岡山監督)、カゲさんといった優れた指導者のミーティングを聞くことができた。それを早い段階から意識して取り組めたのは本当に大きかったと感じます」

 

■「あれこれ言わないでいてくれる」両親に感謝 

とりわけ、森山監督の情熱的なアプローチは琴線に触れたようだ。森山監督はサンフレッチェ広島ユース時代には槙野智章柏木陽介(浦和)を指導し、代表監督に転じてからは久保建英(レアル・マドリード)や中村敬斗(トゥエンテ)、菅原由勢(名古屋)らを育ててきたが、「小手先の技術よりタフなメンタリティ」を重視する指導法には定評がある。Jクラブという恵まれた環境の中でプレーしていた西川らには特にインパクトが大きかったようだ。

「15歳で初めて代表でゴリさん(森山監督)に会った時、今までに経験したことのないような熱意を感じました。映像を見せながら『これはダメだ』と具体的に示す戦術指導も刺激的で、驚きの連続でした。『努力しないやつは絶対に生き残れない』『今、スーパーだったとしても、先々には関係ない』といった苦言も呈されましたし、自分にはすごく響いた。マリノス時代は技術・戦術面を大きく伸ばしてもらいましたし、教えてくださった方々には感謝していますけど、泥臭さや守備意識といった部分がどこか足りないという引っかかりもあった。ゴリさんはそこに気づかせてくれた。だからこそ、桐光を選ぶことができました。3つ上の兄(公基=神奈川大学3年)が桐光に行って逞しくなっていくのを間近で見ていたのもあって、自分も変われると思って今の環境を選んだんです」

桐光が家から近く、サッカーに専念できる環境だったのもプラスに働いた。「学校が終わったらすぐにグランドに出て練習できるし、自主練も長くやれる。夜8時くらいまではみっちり練習してます」と本人も言う。母・和美さんが昼の弁当を含めて3食しっかりとサポートしてくれたのも大きかった。

「桐光に入ってから代表との行き来が多くなり、2年からプロ入りの話が出て、環境が慌ただしく変化しましたけど、私たち親は潤が目指している方向に行ってくれればと思っています」と和美さんも黙って息子の背中を押すスタンスを貫いている。

「父(佳宏さん)からは試合前にメッセージが来ますけど、だいたいはメンタル面のこと。プレー面はあまりないです。両親ともにサッカー経験がないので、あれこれ言わないでくれている。そこも自分で考えて取り組む姿勢につながったのかなと思います」と西川自身も自主性を促してくれる両親に感謝の念を覚えている。

 

■自分は何をすべきなのかを考えながらやっていく 

こうして複数の草鞋を履きながら「考える力」と「自立心」に磨きをかけた西川。これからの半年間は最後の高校サッカー生活に力を注ぐと同時に、タイミングを見ながらセレッソや年代別代表の活動にも取り組んでいくことになる。

「なるべく早く海外へ行きたいって気持ちはありますけど、まずはセレッソでレギュラーを取って試合に出ることが目先の目標です。僕は右サイドと最前線のどっちかで勝負したい。理想像をあえて挙げるとしたら、リヤド・マフレズ(マンチェスター・シティ)ですかね。個人で持ち込んで勝負ができて、タテにも行けてハードワークもできる選手なんで、すごく参考にしています。自分はフィジカル面含めてまだまだ足りない部分が多いので、何をすべきかしっかり考えながらやっていきます」

久保や斉藤光毅と同じ2001年組のスター候補生の1人がここからどう変貌していくのか。興味深く見守りたい。

 

元川悦子(もとかわ・えつこ)
サッカージャーナリスト
94年からサッカー取材に携わり、ワールドカップは通算5回取材。Jリーグ、日本代表、年代別代表などを精力的に取材。選手だけでなく、指導者など個人の深いところまで潜る執筆活動も行っている。主な著書は『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)など。

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取材・執筆・写真:元川悦子

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