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休まざるをえない時こそ成長のチャンス。スポーツドクターが語る、歩みを止めないための親の関わり方とは?

公開:2020年3月24日 更新:2020年4月 9日

サッカーをする上で避けて通ることができないのが、ケガをしてしまうこと。プロになりたい、試合に勝ちたい、もっとうまくなりたい!という気持ちが強すぎた結果、ケガを抱えながらもプレーする子どもたちも多いようです。

サカイクではサッカー日本代表のサポ―ティングカンパニーであるMS&ADホールディングスとともに、日本サッカー協会のスポーツ医学委員を務める大塚一寛先生(上尾総合病院センター長)にお話を伺い、最近のスポーツ少年・少女におけるケガの傾向やケガをしてしまった際の効果的な休み方、ケガをしてしまったことをポジティブに変えるための考え方などについて教えて頂きました。(記事提供:MS&ADホールディングス)

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■『勝利至上主義』が子どもたちに慢性的なケガをもたらしている

大塚先生は最近の傾向として「勝利至上主義のチームが多く、練習のしすぎでケガをする子が増えています」と注意を呼びかけます。

なかでも問題になっているのが、スポーツ少年・少女の中で慢性的な障害を持つ子が増えていることです。大塚先生によると、ねんざや骨折などのスポーツ外傷が30.4%。その倍近い60%のスポーツをするお子さんが、トレーニングのしすぎによる慢性障害を抱えているそうです。

「サッカーをする子に多いのがオスグッド(※1)です。小学生のときにオスグッドになった子が、中学生になってシンスプリント(※2)になってしまうケースもあります。ほかにもアキレス腱周囲炎やシーバー病、中足骨、足根骨疲労骨折、グローインペイン症候群、腰椎分離症など、過度なトレーニングによる慢性障害には、様々なものがあります」

痛みが出たら、無理をせずにトレーニングを休むことが必要ですが、休むだけでは根本原因の解消にはならないようです。大塚先生は、次のように説明します。

「痛みが出たらサッカーをするのはやめましょう。でも、安静にするのもよくありません。ただ休んでなにもしないでいると筋肉が落ちますし、痛みの原因となるアライメント(体の使い方)を改善しないと、痛みが出る→休む→復帰する→休んだことで体が弱っているので、トレーニングをするとまた痛みが出るという悪循環に陥ってしまいます」

痛みが出たら病院に行き、そこでPT(理学療法士)さんと一緒に、痛みのもとを改善するトレーニングをする。そうすることで、痛みが出る前よりも、レベルアップして復帰することができます。

「私のもとには何人もの日本代表選手が来ますが、彼らはケガをしたことで自分の弱点に気がつきます。そこを補うトレーニングをし、さらなるレベルアップをして復帰していきます。日本代表クラスの選手であっても、体のバランスが悪かったり、スクワットをすると体がぶれてしまう。片方の股関節に負担がかかる走り方をした結果、バランスが崩れて痛めてしまう選手もいます。大事なのは痛みの原因に目を向けて、サッカーを休んでいる間に、改善のためのトレーニングをすることです」

休むことは大切ですが、そこで立ち止まらずに、よりよい選手になるために取り組む。自分の持てる能力を最大限発揮し、常に次のレベルに成長しようと努力をする。まさに「歩みを止めないこと」が大切なのです。

■ケガの期間を有効に過ごすために親としてできること

ジュニア年代のお子さんの場合、レベルアップに向けた取り組みの中で、自分ひとりで改善のトレーニングをするのは難しいもの。大塚先生は言います。

「女の子は精神年齢が高いので、小学校6年生や中学1年生になると、自分の意思で物事を決めたり、トレーニングに向き合うことができます。でも、小学生の男の子はまだ精神的に発達の途中で、自立している子が少ないので、保護者の方がサポートしてあげてください」

スポーツ経験のない保護者の中には、子どもに対してどのようなサポートをすればいいかがわからないという人もいます。そこで大塚先生は「私の場合、保護者の方にやり方を説明して、お子さんと一緒に取り組んでもらうようにしています」と話します。

「スポーツ経験のない保護者の場合、子どもにどのようなトレーニングをすればいいかを教えるのは困難です。そういう方には、来院頂いた際に私が実践しながらやり方を教えています。親子で共有して取り組むことが大切で、男の子は自己管理ができるのがおおよそ16歳からで、小学生に自己管理をさせるのは無理があります。そのため、保護者のサポートがとても大切なのです」

子どものときに痛みを抱えてプレーしたり、正しいアライメント(体の使い方)ができないと、ケガや障害につながってしまいます。無理をさせずに、正しい体の動かし方を身につけることが、ジュニア年代ではとくに重要だと言えます。

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「スポーツはそもそもラテン語で、語源が『心を癒やし、現世から離れ、リラックスする』というものです。体を鍛える、試合に勝つことだけがスポーツではありません。なので、まずはリラックスして楽しみましょう。もし体のどこかを痛めてしまったときは、サッカーから離れて、痛みの原因を改善するトレーニングをすること。リハビリはつまらないかもしれませんが、選手たちには『そのときに身につけたものがあるからこそ、いまの自分があるんだと言えるように取り組むことが大事なんだよ』という話をしています」

ジュニアからプロになるまで、一度もケガをしなかった選手はいません。大塚先生のもとに通うJリーガーもケガをして自分の弱点に気がつき、それを克服するトレーニングに地道に取り組んだからこそ、動きが改善されて、さらに良いプレーができるようになりました。その結果、試合で活躍し、日本代表に選ばれた選手が何人もいます。

「彼らがなぜ日本代表になれたのか。それは、ケガなどで一度挫折した経験があるからです。ケガを機に自分の体と向き合って動きを改善し、レベルアップしました。ケガとどう向き合うかは、すごく重要なことだと思います」

ケガをネガティブなものととらえず、成長の機会ととらえる。これは覚えてほしいポイントです。しっかり休息をとり、もしケガをしてしまったとしても歩みを止めずに、前を向いて一歩一歩進んでいく。それが、サッカー選手としてだけでなく、人として成長する上で大切なことなのです。

ケガをしないことが一番ですが、もしケガをしてしまったとしても、良いきっかけととらえて、治療やトレーニングに前向きに取り組んで行きましょう!

※1 オスグッド
脛骨結節(お皿の下の骨)が徐々に突出してきて痛みが出る症状です。
赤く腫れたり熱を持ったりすることもあります。休んでいると痛みが無くなりますがスポーツを始めると痛みが再発することがあります。発育期のスポーツ少年に起こりやすいのが特徴です。

※2 シンスプリント
サッカー・バスケットボールや陸上競技の中・長距離選手など走ることの多い競技に多く見られます。疲労が溜まったときに下腿(スネ)の内側に痛みが起こる障害です。

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大塚一寛(おおつか・かずひろ)/医師
上尾中央総合病院整形外科・スポーツ医学センター長。1999年からJクラブのドクターとしてチームとともに帯同を続けている。そのほか、『日本サッカー協会スポーツ医学委員』や、『Jリーグチームドクター会議部部会長』を務める。多数の講演にも出演し、現場のノウハウや選手のケガ、障害予防などの啓発活動も積極的に行っている。


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