
日本代表のトレーナーとしても経験豊富な並木磨去光トレーナーに伺うコンディショニング講座。セルフコンディショニング、ウォーミングアップと、現場での実体験を交えながら学んできましたが、今回教えていただくのは「クーリングダウン」についてです。
「ウォームアップに比べると、クーリングダウンをしているチームはまだ少数派かもしれませんね。大人に比べれば次の日の影響が少ない子どもたちにも違いは感じられるはずです。いい習慣を身に付ける意味でも今からやっておいて間違いはありません」
ウォームアップに比べて馴染みがないかもしれませんが、筋肉の疲労を取り除き、次の日に備え、最善のパフォーマンスを引き出すのがクーリングダウンの目的です。効果の実感が薄くてもケガ予防や次の練習に向けて「試合後の5分でもやったほうがいい」と並木さんは言います。今回は、なるべく短時間でできる最低限のクーリングダウンを、その効果とともに教えてもらいましょう。
■血流とともに乳酸を流す クーリングダウンの役割
筋肉の疲労をとるというと、マッサージを思い浮かべる人もいるかもしれません。並木さんによると疲労原因物質のひとつとされる乳酸はマッサージでは除去できないそうです。
「マッサージは筋肉のハリや緊張を取り、ほぐすのには向いています。クーリングダウンは疲労をとるのが目的ですからそれよりも有酸素運動やストレッチが効果的でしょう」
クーリングダウンに最適なメニューは軽いジョギングとストレッチ。ジョギングはお互いに話ができるくらいのスピード、タッチライン=走る、ゴールライン=歩くくらいの負荷で十分。局所的なケガをしている場合などは同じ距離をゆっくり歩くだけでもいいそうです。
試合後はミーティングや後片付けなどやることもたくさんありますが、クーリングダウンの効果は運動直後であればあるほど高いという研究結果が出ています。体を動かした後は時間をとってジョギングだけでもするようにしましょう。
有酸素運動で全身の血流を流したら、次はストレッチです。このストレッチも血流を良くするのが目的です。筋肉を収縮させることで、血液の流れを作り、乳酸を一緒に流してしまうことを目的にしています。

■どっちもストレッチ? ウォーミングアップとクーリングダウン
「あれ?ウォーミングアップでもストレッチするよね?」
気になったあなたは大正解! そうです。ウォーミングアップ時にするストレッチとクーリングダウンでするストレッチは目的も性格も違います。
「この違いは重要です。これを説明することでクーリングダウンのストレッチの説明になるでしょうね」
並木さんもこの違いを重視しています。
「ウォーミングアップのストレッチは以前ご紹介したように、主に筋温を上げるために行います。よしこれから頑張るぞ! という刺激を身体に入れてサッカーモードへのスイッチを押す役割ですね。反対にクーリングダウンのストレッチはスイッチを徐々に切っていくためのものです」
大きな動力を必要とする機械は、いきなり主電源を切ってしまうと壊れてしまうものもあります。激しいトレーニングや試合の後は徐々に身体を休めていかないと、疲労が残り、次の起動に時間がかかってしまうのです。 一口にストレッチと言っても、場面や得たい効果によって種目も自ずと変わってきます。では、ウォームアップとクーリングダウンのストレッチでは、どんな変化をつけたらいいのでしょう?
次回は実践編として具体的な種目の違い、やり方の違い、ポイントなどをご紹介します。練習前、試合前、たくさん試合が続いたときはどうすればいいのか?などなど、現場での経験豊富な並木さんに、無理なくできるクーリングダウン実践編をたっぷりと聞いてありますので次回もお楽しみに。
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並木磨去光 //
なみき・まさみつ
日本代表アスレチックトレーナー。スポーツマッサージ・ナズー代表。トレーナーとしてW杯、五輪日本代表をサポート。ケガ人の治療、マッサージによる疲労の回復、コンディショニング、リハビリテーションなどを担当。今年行われたAFC U-16選手権では久しぶりにアンダーカテゴリーのトレーナーを担当。チームの準優勝、2013年に行われるU-17W杯出場権獲得に貢献した。
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取材・文/大塚一樹 写真/新井賢一(ダノンネーションズカップ2013より)