運動能力
【練習動画つき】「一生懸命走りなさい」はNG!子どもの走り方がグッと良くなるアドバイス方法
公開:2015年9月28日 更新:2025年10月10日
「子どもの足がなかなか速くならない」
「息子に腕を振れっと言っても一向に腕を振れるようにならない」
子どもの走り方が悪いことや足が速くならないことに悩みを抱えている方は多いでしょう。
つい子どもに「一生懸命走りなさい」とアドバイスしたくなるものです。
しかし、このアドバイスでは逆に足が遅くなってしまう逆効果さえあります。
アドバイスの仕方1つで子供の走りは大きく変わります。
そこで今回は、ヴァンフォーレ甲府でフィジカルコーチを務める谷真一郎さんに、小さいころから実践すべき足が速くなるトレーニングや声掛けを聞いてきました。 (取材・文 杜乃伍真 写真 サカイク編集部)
■足が速くなる3つのコツ
「みんなは足の速さは生まれつきのものだと思っていないかな? 走りはトレーニングすることで速くなるんだよ」
タニラダーでお馴染みのヴァンフォーレ甲府・谷真一郎コーチの声がピッチ上に響き渡ります。どうしても足が速くなりたい! そんな思いで集まった子どもたちが真剣な眼差しで谷コーチを見つめていました。
今回集まったのは、小学3年生以下の子どもたちばかり。
「3年生以下となるとタニラダートレーニングの理論を理解するのは難しいので、とにかく子どもたちに動いてもらい身体で理解してもらいます。言葉もなるべくイメージしやすいものを使うことが大事です」
そんな子どもたちに谷コーチが伝えたのは次の3つのポイントです。
1.大事なのは『行進の動き』。行進の歩き方をだんだん速くして走りにつなげよう2.100%の力で走ると力んで逆に遅くなるので、70%~90%の力で走ってみよう3.足下はフライパンのように熱いというイメージで。地面に足をつけている時間を短くしよう
この3つのポイントを意識して走ると、子どもたちの走りはみるみる変わっていきました。
■走る練習は、行進からはじめよう
それでは指導の手順を見ていきましょう。
まずは、子どもたちに普段どおりの走リ方をしてもらい、じっと観察する谷コーチ。
「腕はどうなっているかな?」「ちょっと斜めになっていたよね?」「肘が伸びてしまっているよね?」
ここで谷コーチがタニラダーを準備し、こんな提案をしました。
「みんなで行進をしてみよう」
子どもたちが不思議そうな顔をしながら、ラダーの各ブロックを通過するように行進を始めました。
元気よく、腕を振りながら、順番に"行進"をする子どもたち。
「腕はしっかり曲げて、まっすぐに振ろう」
「このときに膝もしっかり曲げて、できるだけ脚を速く回転させよう」
「前かがみにはなってはいけないよ」
そして谷コーチが「だんだん速く行進をしてみよう」というと、子どもたちの行進がスピードアップ。行進のままの綺麗なフォームで、やがて子どもたちは走り出しました。これだけでも足が速くなったような印象を受けるから驚きです。
谷コーチが子どもたちに問いかけます。
「行進の動きの延長に走ることがあるのがわかったかな? 歩く動きと走る動きは別々のものではないんだよ」
子どもたちは納得するように頷いていました。
■100%で走ると足は遅くなる!?
次に、谷コーチはこんなふうに子どもたちに問いかけました。
「みんなは速く走りたいときに何%の力で走る?」
子どもたちが即座に「100%!」と答えます。すると谷コーチが次々に問いかけました。
「じゃあ、まずは50%で走ってみよう」
「次に60%だとどうかな?」
「じゃあもう少しスピードアップして70%で走ってみよう」
子どもたちが走り終わると、谷コーチが再び問いかけました。
「何%のときが一番身体を楽に、速く動かすことができたかな?」
すると子どもたちからは「70%!」という答えが元気よく返ってきました。
谷コーチがにっこりと微笑みます。
「みんな、走るときは100%の力を出して全力で走らなくていいんだよ。全力で走ると身体が力んで逆にスピードが遅くなっちゃうんだ。みんながいま一番速いと感じたパーセンテージの力で、気持ちよく、楽に走るのが一番速く走れるんだよ」
「陸上選手のウサイン・ボルト選手は知っている? 100メートル走のスタート前に、手や足をぶらぶらさせてリラックスしているでしょう? 速く走れる人は、力むことが走るときの天敵だということを知っているんだ」
子どもたちはまた、うんうん、と頷いている様子でした。
■フライパンの上を走っているようなイメージを持とう
最後に、谷コーチが使った魔法のフレーズが「フライパン」でした。
準備したのは、50センチ間隔に置かれた6つのミニハードル。このミニハードルを子どもたちに走ってもらうのですが、ここで谷コーチが子どもたちにこう伝えました。
「このミニハードルの間は全部フライパンになっています。足下が熱いので気をつけてください」
「ゆっくりと足をつけてしまうと、ヤケドしちゃうので気をつけようね」
子どもたちは驚いたような、喜んだような表情を浮かべながら、はしゃぐようにミニハードルを次々と飛び越えていきます。
するとどうでしょう。子どもたちの太ももがしっかりと上がり、グングンと前へ進んでいくような推進力をもった走り方に変わっていったのです。
「下を向かないように、周りを見ながらだよ」
「気持ちよく走ろうね」
「腕もしっかりとまっすぐ前後に振ろう」
谷コーチの言葉に子どもたちも反応します。別のコーチがコートの隅から、パン! パン! パン! パン! というように手拍子を加えると、子どもたちはさらにリズムよく走れているようでした。
3つのポイントを抑えるだけにみるみると走りが変わっていた子どもたち。谷コーチは最後に、子どもたちの父母たちにこんなメッセージを付け加えました。
「今までこういう動き方をしていなかったと思うので、ゼロが1になる、そのきっかけを掴むだけでも大きいと思います。ただ、いきなり全員が全員、理想的な動きを身につけられるわけではありません。大事なのはちょっとしたきっかけ掴んだこれから。お父さんやお母さんたちが、子どもたちにもわかりやすい言葉で伝えてあげてくださいね」
「どうしても自分の子どもには『もっと全力で走りなさい!』と怒ってしまうものですが、それでは力んでしまって、逆にスピードが落ちることがわかったと思います。親御さんが子どもたちの走りをしっかりとみながら、しっかりとポイントを指摘して直してあげるように心がけてください。後天的なトレーニングで子どもの走りは確実に速くなりますよ」
子どもの足を速くしたい親必見!足が速くなるコツの上手な伝え方>>
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取材・文 鈴木康浩 写真 サカイク編集部