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超集中状態! ゾーンに入る方法

本田圭佑も陥っている!?ポジティブ思考の落とし穴

2014年4月28日

キーワード:メンタル

前回の連載第2回の記事では、浦和レッズと清水エスパルスの試合を例に挙げ、実際にネガティブな意味付けがどのような影響を与えるのかを説明しました。そこから解き放たれて外側の出来事に揺らがずとらわれずな状態になるためには、言葉、表情、態度、思考という4つの要素を自ら選択し意識するライフスキルを備え、内なる動機を引き出すことが大切です。
 
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取材・文/清水英斗 写真/田川秀之・サカイク編集部
 

■ネガティブな意味付けとの付き合い方

では、このようなライフスキルをうまく使えない大多数の人は、ネガティブな意味付けとどのように付き合って生活しているのでしょうか? スポーツドクターの辻秀一氏は、次のように説明しています。
 
「ライフスキルが低く内なる動機を引き出せない人は、認知の脳を使って4つの方法でネガティブな意味づけから心を切り替えようとします。そのひとつは外界を変えること。たとえば雨が降っていたら、『やまないかなあ』、嫌な人がいたら『あいつ早くどっか行かないかな』、嫌いな会議に出たときは『早く終わらないかな』と、外界を変えることを脳が考えるんです。だけど、これらの外界は変えられない。だから結局は、脳がネガティブな意味付けにとらわれたまま、フローは起こりにくいです」
 
どうにもならない外界要因に、ただただイライラし続け、そしてノンフロー状態になって力を発揮できない。いかがでしょうか? 過去の自分の習慣を振り返り、思い当たるところはありますか? 
 
そして、次の2つ目の方法は、誰もがよくやっていることかもしれません。
 
「認知の脳は行動の内容が大事なので、何らかの行動をとって気分を切り替えようとします。たとえばメシを食うとか、寝るとか、温泉に行って、飲みに行って、タバコ吸って、テレビを見て、何かの行動で気分を変えようとするんですね。だけど行動に関しても、いつでも変えられるとは限らない。制限や限界はありますからね。いつもこれをやっている人は、フロー化が起こりにくいです」
 
試合中に温泉に行くわけにはいきませんし、行動にはさまざまな制限があります。ご飯を食べてストレス解消する人も多いと思いますが、一日に数回しか使えない方法です。また、やりすぎると体型や健康に悪影響を及ぼすかもしれません。思い当たるフシはたくさんあるのではないでしょうか。
 
「3つ目の方法ですが、多くの人は、自分の気分が“ノンフロー”になっている要因が、出来事や他人にあるということ自体をやめようとするので、“気にしないように”と考えるようになります。点数なんて気にするな、こいつがいるのを気にするな、グラウンドが悪いことなんか気にするな、とか。それってじつは、めちゃくちゃ気にしているんです。気にしないと考えるのは、気にしていることと同じなので、全然フロー化が起こらないんです。そういう人にはゾーンもやって来ないです」
 
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■ポジティブ思考の落とし穴とは?

そして4つ目。この方法を実践するタイプの人も、多いのではないでしょうか。
 
「最後に、いちばんみんながよくやるやり方ですが、人間は意味付けをして生きているので、その意味付けを、無理やりプラスに変えようとします。プラス思考やポジティブシンキング。これは大流行していますが、最新のスポーツ心理学では、むしろ限界があると言われています。たとえばイチロー選手や吉田沙保里選手は、ポジティブシンキングを一切しませんが、本田(圭佑)選手は自身にプラス思考を強いている感じがします。雨が降っているおかげで水が飲めるから、雨は良いことだとか、怪我をしてもチャンスと思えとか。いや、怪我はそもそも怪我なのに、チャンスとして上書きして、無理やり良い意味付けをしているわけです。そのままだと、どこかで苦しくなるはず。もちろん、ケガをしたことで生まれた時間を筋力トレーニングに使ったり、チャンスに変えることはあるんですけど、ケガしたこと自体をチャンスと思い込もうとするのは、かなり難しいですよ。どこかで自分にウソをつくことになるし、エネルギーを使わなきゃいけない。だからプラス思考をしている人は、疲れて、しんどくなってくるんです。実はネガティブ思考とプラス思考は、僕からすれば同じです。意味付けにまみれていて、意味の付け方が違うだけ。外にとらわれているのは変わらない。
 
松岡修造さんは、『俺が現役のときは、3秒は長い! 3秒あれば充分なんだ!』と自分に気合を入れるイメージだったそうですが、プラス思考はウソがあるから気合が必要なんです。本当は『3秒は短い』と思っているのに、『長い』と上書き保存して、ウソをついて自分をだますから気合が必要なわけで。プラス思考は疲れるんです。
 
そこには、残り時間が3秒という単なる状況があるだけで、そのために何をしなきゃいけないと戦略を考えるのは認知の力。ただし、それには“やばい”とか、勝手な意味付けもくっついてくるから、そういう外発的なものとは違うところに内なる動機を持ち、心を解き放つライフスキルを持っておく。この両方を兼ね備えることがすごく重要なんです。イチロー選手にしろ、吉田沙保里選手にしろ、そういう人は安定したパフォーマンスを出します」
 
自分が意味付けをしていることに気づき解き放たれれば、ネガティブでもポジティブでもなくなるということでしょうか。
 
「そういうことです。そのほうが自分の力が出ます。イチロー選手はいつもそれをやろうとしているけど、元々言い始めたのは宮本武蔵で、彼の五輪書の中では、何をやるのかという戦略を考えるのはとても大事だと。しかし、それを考えすぎると、人間は揺らいだり、とらわれたりする。だから人間は心の状態を整えるために、心を作ることも意識しないと天下無双にはならない。そう言っているんです」
 
イチロー選手や吉田沙保里選手の他にも、辻氏が考えるライフスキルの高いスポーツ選手には、ソチオリンピックで金メダルを獲得した羽生結弦選手も挙げられるそうです。
 
「金メダルどうこう以前に、どんな競技大会でも自分のプログラムをやり切ることを大事にしているとか、いろいろな人に応援してもらっていつもありがたいとか。羽生選手のライフスキルは非常に高いですよ。彼が拠点としているカナダは、メンタルトレーニングが盛んですし。おもしろいのは、彼には気づきの力があること。インタビューで、“ショートプログラムが終わった後、フリーの演技をするまでにどんなことを意識していたんですか?”と聞かれたら、“ショートで1位になって、フリーの演技を1位で迎えるので、金メダルを取らなきゃいけないとか、意識しないように、金メダルを考えないようにと思ってやりました…” 普通の人はそこで終わり。ところが羽生選手は続けて、“…でも、金メダルのことを気にしないって言ってること自体が、いちばん気にしちゃってるんですけどね~、ははっ”と、最後に笑ってたんですよ。これはライフスキルの高い人にしか言えない。」
 
サッカー日本代表が臨むブラジルワールドカップでも、このようなコメントは聞かれるのでしょうか?
 
次回、最終回では、より子どもの指導に特化した場面を想定して、ライフスキルを生かす方法を取り上げていきます。お楽しみに!
 
 
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辻 秀一さん
辻 秀一
スポーツドクター。株式会社エミネクロス代表。
http://www.doctor-tsuji.com/
 
1961年東京都生まれ。99年、QOL向上のための活動実践の場としてエミネクロスメディカルセンター(現:(株)エミネクロス)を設立。スポーツ心理学を日常生活に応用した応用スポーツ心理学をベースに、パフォーマンスを最適・最大化する心の状態「Flow」を生みだすための独自理論「辻メソッド」でメンタルトレーニングを展開。エネルギー溢れる講演と実践しやすいメソッドで、一流スポーツ選手やトップビジネスパーソンに熱い支持を受けている。現在、「辻メソッド」はスポーツ界だけではなく、そのわかりやすく実践しやすいメソッドに反響を得てビジネス界、教育界、音楽界に幅広く活用されている。またドクターという視点を活かし、現在は健康経営という考え方を取り入れた新しい企業の経営の在り方を、産業医として取り組み、フローカンパニー創りに大きな成果を上げている。辻メソッドの真髄を学べる「あなたの人間力を10倍高める心と脳のワークショップ」は、一流アスリートやトップビジネスパーソンから大学生や主婦、コンサルタント、経営者まで、老若男女が参加。心と脳の仕組みをわかりやすく、すぐに実践できるこのワークショップは毎回大きな感動を呼び、受講者から「世界NO.1」との声もあがっている。また、スポーツの文化的価値の創出を提供するNPO法人エミネクロス・スポ-ツワールドの代表理事もつとめる。複数のスポーツが1日で楽しめるスポーツのディズニーランド「エミネランド」や、スポーツを "する" だけではなく "聴く" "支える" という形でスポーツに触れる機会を独自の形で提供している。「スポーツを文明から文化」にする活動をミッションに一般社団法人カルティベイティブ・スポーツクラブを設立。2013年より日本バスケットボール協会が立ち上げる新リーグNBDLに東京エクセレンスとして参戦予定。
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取材・文/清水英斗 写真/田川秀之・サカイク編集部

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