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  4. 情熱的に褒めて長所を伸ばすことで、親子の会話も弾む

楽しむからうまくいく!ポジティブ心理学で良いプレーを引き出す

情熱的に褒めて長所を伸ばすことで、親子の会話も弾む

2014年3月31日

キーワード:コミュニケーション親子

前回は、ポジティブ心理学の真骨頂、親子間のポジティブなコミュニケーションについて教えていただきました。今回も引き続き親子の会話、コミュニケーションについて、ポジティブ心理学を日本で正しく広める活動を展開されている青木みちるさんにお話をお聞きしていきましょう。
 
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親子サッカー
 

■最善のリアクションは、情熱的に褒めること

さて、早速ですが前回出題した問題のおさらいです。
 
Q.あなたはお子さんと話をしています。お子さんが話してくれた今日の「良いこと」エピソードに対して、どんなリアクションをするのがいいと思いますか?
 
1.「素晴らしい!それは良かったね」と情熱的に褒める
2.「それはこうじゃないかな?」と間違いを正す意見を言う
3.「なるほどね」とだけ答えてあえてリアションをしない
4.無視する
 
正解はもちろん1の情熱的に褒めることです。大げさに褒めるのはちょっと違うのかな? と思う人もいるかもしれませんが、ポジティブ心理学が確立されて以降、二者間のコミュニケーションで、それぞれのリアクションをした場合の反応をみる実験が多く行われていて、結果がはっきりと出ているそうなのです。
 
「1は『情熱的支持』と言います。良いことを報告した人に対して、4パターンのリアクションをするグループを作り、その後の作業能率を調べた実験によると、1の情熱的支持を受けた群は作業能率が明らかに上がりました。2の否定的見解を受けたグループはその意見が正当かどうかに関わらず作業の能率が落ち、3のように自分の話を受け流された人も同様に効率は下がって行きました」
 
「なかでも最悪なのは」と、青木さんがもっとも悪いリアクションと鋭く指摘したのが4の無視でした。
 
働いてきて疲れていたり、家事をしながら聞いていたりすると、子どもの話が頭に入ってこないこともあるかもしれません。しかし、こうしたリアクションが親子のコミュニケーションを減らすきっかけになるばかりか「子どもたちの成長に重大な弊害を生む」と青木さんは言います。
 
「無視という行為は『何もしない』わけですから、作業効率は変わらないのでは? と言う仮説もありました。しかし、無視をされたグループは4群のなかで一番作業効率が落ち、作業意欲さえも失ってしまったのです」
 
無関心や無視は、子どもたちに何も与えないどころか、意欲や可能性を奪いその後の関係性にも大きく影響を与える、親が「やってはいけない」行動の典型です。
 
「そのほかのリアクションも、否定的な意見を言われたら感受性が豊かな子どもは特に、怒られたからやりたくない。行為自体が良くないことなんだと思い込みがちです。話は聞くけど受け流すというのも『どうでもいい話なのかな?』と察して、やがて話をしなくなります」
 
 

■短所より長所を伸ばすコミュニケーションを

否定的な意見もときに必要という声も聞きますが、悪いところを指摘されると自分のプレーの悪いところばかりに目が行くようになり、良いところ、自分の武器を伸ばすことより、欠点を補おうとする気持ちが強く働くと言います。青木さんによると「欠点の改善は人間が自然界で生き延びるために組み込まれた無意識下のプログラムなので、あまり強調する必要はない」のです。
 
サッカーでも「長所を伸ばすか、短所をなくすか」という議論は良く耳にしますが、青木さんは「逆T字理論」と言う理論の説明で、長所を伸ばす方が効果的だと言います。
 
逆T字理論
 
「どんなに欠点を練習しても、すべての能力を均等に引き上げることは不可能で、Tを逆さまにした、あるいは凸の文字のように突出した部分が出てくる。だから基礎技術を身につけた後は突出した部分を伸ばしていきましょう」
 
悪いところを指摘するのではなく、良いところを見つけて情熱的に褒めてあげる。これができれば、親子の会話が単なるコミュニケーションではなく、子どもの成長に直結する重要なチャンスになるのです。
 
「会話の質を高めるためにはコミュニケーションの内容だけでなく質も高めていかなければいけません。会話は対話ですから、サポートする大人は子どもたちの心がどう変化しているのか、どう感じているのかに敏感でなければいけません」
 
子どもたちの心をポジティブに保つためには、ポジティブ心理学の「ABCDEモデル」が役立つと言います。
 
ABCDモデル
 
「ABCDEモデルは、会話の齟齬、対話の結果生まれるネガティブな感情や状況をプラスに変換するものです」
 では早速、サッカーのシチュエーションでABCDEモデルを見ていきましょう。ここでの主人公はサッカーをプレーする子どもです。
 
A 困った状況(Adversity)
コーチから「もう少しシュート練習をしようね」と言われた。今日はいいパスをたくさん通せたし、いいプレーでチームに貢献できたと思っていたのに…。なんだかショック。
 
B 思い込み(Belief)
きっとコーチは僕を次の試合に出さないつもりなんだ。精一杯やっているし、自分でもうまくなってきている感覚があるのにどうして? きっとコーチは僕のことが嫌いなんだ。
 
C 結果(Consequence)
僕はとても落ち込んでいる。このままサッカーを続けていても試合に出られないなら意味ないや。練習に行くの嫌だなあ。
 
A~Cまでは、それぞれ困った状況に陥ったあるサッカーキッズのエピソードの、A.状況、B.どう感じたか?C.Bのような感情を持った結果どうなったか? を表しています。
 
こういう状況は、頻繁に起こります。Bで示しているように、多くの場合は周りから見れば「何もそこまで思い詰めなくても」「それは思い込みでしょう」と思えるようなことだったりします。それでも子どもたちは大人の何気ない言葉や行動に深く傷ついているのです。
 
これをなんとかプラスに変換していくのがDとEのテクニックです。
 
D 反論(Disputation)
コーチはシュートの話をしただけ。自信がついてきたパスについては評価しているかもしれない。コーチが声をかけてくれたこと自体が期待の表れかもしれない。もっとうまくなるためにシュート練習をがんばればいいんだ。ちょっと言われたくらいで辞めてしまうほどサッカーへの気持ちは中途半端じゃない。
 
本来は自分の気持ちを自分で変えられると良いのですが、子どもたちがこうした気持ちになるためにはやはり親の手助けが必要です。そこでDの反論では、お父さんやお母さんが、子どもたちの思い込みをほぐしてあげるようなヒントをあげてください。
 
E 元気づけ(Energization)
パスがうまくなったんだ。練習すればきっとシュートもうまくなる!
この前の試合はたしかにパスが良かったよ!
今度のお休みに、お父さんがGKをやるから一緒にシュート練習しよう!
 
Eは、自分で自分を勇気づける、元気づけることですが、これにもやはり第三者からの働きかけが重要になります。お父さん、お母さんは子どもたちの良いところを積極的に褒めて、元気づけてあげてください。
 
「ABCDEモデルはBの「思い込み」で歪んでしまった現実を元に戻す方法です。思い込みの怖いところは、永続性、普遍性があるところです。誰かに何気なく言われたことを『いつも』『絶対』『みんなが』と、どんどん悲観的になっていき、その感情が行動に現れるようになります。日常会話のなかで子どもたちの誤解や思い込みを解いてあげることが、最上の親子コミュニケーションになるでしょう」
 
 

■まずはあなたがポジティブな目で子どもを見ること

親子のコミュニケーションの場は前向きにサッカーに取り組むための最高のチャンスです。今回教わった理論を元に会話ができればこれまで少なくなりがちだった親子のコミュニケーション量も増えて、さらに質を高め、子どもの良いところも伸ばせる。まさに良いことづくめのポジティブ心理学ですが、最後に青木さんは「すべての基本」として次のような注意点を挙げてくれました。
 
「みなさんも感じていると思いますが、ポジティブ心理学を理論として理解することと、実際にわが子に活用することはやはり少し違います。子どもたちの気持ちを良い方向に向かわせることで行動や結果を変えていこうという考え方ですから、子どもたちへのアプローチは、現実をねじ曲げてポジティブに捉えるのではなくつねに現状を正しく把握していなければいけません。つまり、お父さんとお母さんは、まず子どもたちをしっかり観察し、時間をかけてコミュニケーションを取り、子どもたちを正確に理解する必要があるのです」
 
 まず欠点に目が行くのは人間の本能。良いところを褒めるためには注意深く子どもたちを観察する必要があります。的確なリアクションを返してあげるためには、子どもたちの気持ちに寄り添うことがなにより重要です。
 
 お父さん、お母さんがまずポジティブな目で子どもたちのサッカー、子どもたち自身を見つめることからはじめましょう。
 
 
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青木みちるさん
青木みちる
国際基督教大学教養学部国際関係学科
コミュニケーション学・心理学専攻
マーティン・セリグマンによって提唱されたポジティブ心理学を研究、日本に正しく紹介、普及させることを使命に活動する。PwCコンサルティング株式会社(現日本IBM)人事業務の改善、システム導入のコンサルタント株式会社エル・ティー・エスでは複数部門の責任者を経験し、現在はマーケティング部 部長 兼 新規事業開発の責任者
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取材・文/大塚一樹 写真/サカイク編集部

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