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汗の分だけ、成長できる

「努力がつらいならキミは成長できない」元日本代表FW・高原直泰

2015年4月22日

サッカー界の第一線で活躍する選手が、自身の少年時代に汗をかいて努力した思い出や、その経験を通して得たものについて語る連載企画『汗の分だけ、成長できる』。
 
今回は、南米はアルゼンチン、欧州ではドイツを中心に活躍し、2006年のドイツワールドカップにも出場した元日本代表ストライカーで、現在はSC相模原の主将としてチームを牽引する高原直泰選手の登場です。(取材・文/杜乃伍真 写真/新井賢一)
 
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■サッカーは好きだからやっていただけ

――まずサッカーを始めたころの話から伺えますか。
 
「静岡県の子どもは皆、遊びの一環でボールを触っていますから、その流れで自然と少年団に入っていました。どこにでもあるような少年団です」
 
――少年サッカーといえば全日本少年サッカー大会の大きな大会があります。
 
「もうまったく縁がないですね。そういう大会は清水市や静岡市の子どもが出場するものだったので、僕がいた三島市のチームはかすりもしない(笑)。僕も子どもの頃はそういう大会の存在すら知りませんでしたから」
 
――将来サッカー選手になるという夢は持っていたんですか?
 
「それはありましたね。当時はまだプロはなかったですけど、サッカー選手になることが当時から夢でした」
 
――そのために努力したといえるようなことはありますか?
 
「うーん、努力したことはないですね。サッカーは好きだからやっていただけ。楽しいからサッカーをやる。自分が努力しているという感覚はまったくなかったです。もちろん勝ち負けには拘っていました。負けるのは悔しいので」
 
――当時、指導者によく言われていたことなどはありますか?
 
「うーん、ないです。まずコーチがいなかったので。一応、父兄の方が見てくれてはいたんですけど、こういう練習にこだわってやっていた、という記憶も正直あまりない(笑)。もう遊びの延長のまま、自由気ままにゲームを楽しんでいたような子どもだったんです」
 
――では当時、うまくなるために拘っていたことは?
 
「うーん……それもない(笑)。とにかく身体が大きくて、当時小学生で166センチほどあって足も速かったし、足下もそこそこ、というか巧かったので(笑)、別に何もしなくても全部できてしまったんです(笑)。どこにでも顔を出して、ボールを奪って、自分で最後までドリブルしてシュートを決めちゃうような子どもだったので」
 
――なるほど。むかしの少年サッカーには神童と呼ばれる子どもが全国各地にいましたね。
 
「昔はそういう子どもが多かった気がしますね。いまはあまりいないのか、自由気ままにプレーすることをコーチに止められてしまっているのか、ぼくにはわからないですけど」
 
――そうすると当然周りからは注目されますよね?
 
「そうですね。あまり強くないチームだったけど、小6のときは静岡県大会で決勝まで進んだんですよ。決勝が清水のチームで、ボコボコにゴールを奪われて負けましたが(笑)。一応、そのレベルまでは行けました」
 
 

■夏場はポカリを凍らせて試合会場へ

――野性味あふれるプレースタイルを想起させる幼少期を過ごしてきた高原選手。少年時代のポカリスエットとの思い出を教えてください。
 
「ポカリはめちゃくちゃ飲みました。夏場はペットボトルの1.5リットルサイズが入るプラスティック容器に入れて、それを冷凍庫で凍らせて、毎週練習や試合会場に持って行っていました。その凍ったポカリが解けてきたころを見計らって飲むんですけど、一口目はいつもよりちょっとだけ甘いんです(笑)。それを水で薄めたり、自分たちで工夫したりしながら飲むのがちょっとした楽しみだったかもしれません。ぼくらサッカー少年の必需品でした」
 
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昨季はリーグ戦21試合に出場し5得点。今年はプロ初となる10番を背負いキャプテンとしてチームをけん引する
 

■サッカーのベースを叩きこまれた中学時代

――高原選手が世間的に注目されて頭角を表すのは中学に進んでからですか? 高校では名門の清水東高校に進学されて活躍されていますが。
 
「ぼくが昔を振り返って一番良かったと思うのは、中学のときに東海大学第一中学(現東海大学付属翔洋高等学校・中等部)に進み、そこで個人技術を徹底的に叩き込まれたことです。それが今のベースになっているし、それがなければサッカー選手として生きることもできなかった。自分が成長するための基礎をすべて学んだ時期だと思います」
 
――小学生時代に自由気ままにプレーしていた高原選手が、そこで改めて基礎を身につけるんですね。それは窮屈だったのか、新鮮だったのか、どうだったんでしょう。
 
「むしろそこから努力することになったと思います。自由気ままにプレーして通用する、なんていうのは小学生くらいしかできない。そんなプレーを続けていたら、その選手は終わってしまう。それ以上はいけないでしょう。自分がサッカー選手になりたいのならば貪欲にいろいろなことを身につける姿勢が絶対に必要で、そのためにぼくは、わざわざ三島市から静岡市に通って私立の東海第一中に入ったんです。親にもお金を出してもらって本当に感謝しています。そこで目標を定めることができたので、あとは自分で考えてやっていくだけになりました」
 
――小学生のときは自分の技術が足りないと感じていましたか?
 
「それはまったく思っていないけど、単純に強いチームでプレーしてみたいという思いでした。あのころは、今の子どもたちとは根本的なところで考え方が違ったかもしれない。いまはサッカーに限らず情報が溢れているから、テレビをつけたり、雑誌などを見たりすれば、簡単に解説が手に入るじゃないですか。ぼくが小学生のころは全然情報がないから、自分で探さないといけなくて、強いチームに入るしかなかった。そこで出会う監督や先輩や仲間たちとサッカーを通じて刺激を受けていくという感じでしたね」
 
――では、そこで初めて努力をしたということですね。
 
「うまい選手ばかりだったので刺激になったし、徹底的に個人技術を繰り返して叩きこまれたのはよかったと思います。でも、努力という感じではないですよ。それをやるのは当たり前なんですよ。自分がどうありたいか目標が決まったら、何をしなければいけないかがわかる。それを自分で努力しているなあ、頑張っているなあ、なんて思っていたら、はっきり言ってそいつはダメなんですよ(笑)。やるのが当たり前だから」
 

■自分で考えてプレーしたかった

――確かにそうですね(笑)。中学時代に切磋琢磨があって、そして清水東高校へと進んでいくわけですね。
 
「正直、清水東はそんなに意識していなかったんです。ただ、中学校の監督がめちゃくちゃ怖くて、それが高校の3年間も続くのは嫌だなと思っただけなんです。もっと自分で考えてサッカーをプレーする環境を望んでいました。その当時の中学の監督にも『お前は俺に言われてプレーするのと、自分で考えてプレーするのとどっちがいいんだ』と聞かれて『自分で考えてやったほうがいいです』と答えていたくらいですから(笑)。ただ、ピリッとした緊張感があるなかでサッカーができた中学の3年間、それも絶対に必要だったと今になって感じます。半強制的な徹底した指導があったからぼくはうまくなれたし、そのなかで自分の意思をしっかり持ってサッカーができればいいだけなので。そうそう、中学の監督には一度『謙虚になれ』と怒られたこともあります(笑)。当時、初めてアンダー世代の日本代表に選ばれて天狗になっているのが態度に出ていたのかもしれません。監督は見抜いていたんでしょうね。ぼくは『はい!』と答えて、もうがむしゃらになって一生懸命に取り組むだけでした(笑)」
 
後編:点を取り続ける秘訣は「気にしないこと」元日本代表FW高原直泰>>
高原直泰
1979年6月4日生まれ。静岡県出身の元日本代表。1998年にジュビロ磐田に入団し開幕戦に途中出場すると、Jリーグ初得点を挙げる。1999年にはワールドユースで3ゴールをマークし準優勝に貢献。2006‐2007シーズンには、当時所属していたブンデスリーガのフランクフルとで11得点を挙げた。昨季からSC相模原に所属。今季から完全移籍しキャプテンに就任した。
 
【汗の分だけ、成長できる】
山口素弘さん編
自分たちで考えて練習した小学生時代
負けず嫌いがサッカー選手のベースになる
 

 
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取材・文/杜乃伍真 写真/新井賢一

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