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U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2015

「サッカーで生きたかったら何をすべきだと思う?」名門ボカ・ジュニオルスのエースを育てた母親のひと言

2015年9月18日

グラウンドの防球ネットにクラブの横断幕をくくりつけ、選手たちに声援を送る集団。アルゼンチンからやってきたカミオネーロスは、選手やスタッフだけでなく帯同してきた家族たちも強烈でした。カミオネ-ロスの監督を取材していると、その一団から声が挙がります。
 
「この人を取材した方がいいよ」「この夫婦の息子はすごい選手なんだ」
 
もちろん言葉は通じませんが、とにかくすごい迫力。慌ててチーム担当の通訳にお願いして、急遽インタビューが始まりました。
 
彼らが「ぜひ取材した方がいい」というその人は、カミオネーロスの強化部長で自身もサッカー選手だったというギジェルモ・カジェリさんと妻のベッティーナさん。彼らの息子は現在アルゼンチン1部リーグ(プリメーラディヴィシオン)2位につける、名門中の名門、ボカ・ジュニオルスのストライカー、ジョナタン・カジェリ選手。ジョナタン・カジェリといえば、ボカに帰還したアルゼンチン代表カルロス・テベス選手を、抑えて現在チーム得点王とエース級の活躍をしており、アーセナルやインテルも獲得を検討していると報道される21歳の新星です。せっかく世界有数のヤングスターの両親が揃っているのですから、アルゼンチンの子育ても含めて話を聞かない手はありません。まずは、カミオネーロスの強化部長を務めるギジェルモさんに話を聞きました。(取材・文・写真 大塚一樹)
 
<<なぜ、アルゼンチンの大人たちは何度注意されてもピッチに入るのか
 
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■明日の勝利のために今日も勝つ! アルゼンチンの育成流儀

「この大会はオーガナイズが素晴らしいね。2つのピッチでどんどん試合を回していくスタイルは気に入ったよ」
 
ギジェルモさんは、息子が所属していたオールボーイズのトップチームの強化部長を務め、新興チームのカミオネーロスに引き抜かれる形で加わったそうです。ジョナタンがオールボーイズの下部組織にいたときには自身が監督を務めたこともあるそうです。
 
「ジョナタンは15、6歳まで背が低かったんだ。私が監督をしていたチームでもスタメンではなかったし。ベンチに入れないこともあった。アルゼンチンではたとえ育成の現場であっても“その日の勝利”が優先される。そこがバルセロナとは違うだろ?(笑)だから体格のせいでジョナタンにチャンスが与えられない時期もあったんだ」
 
アルゼンチンでは「選手の将来のために目先の勝利を問わない」という考え方はないそうです。日本でも、育成段階では目先の勝利にこだわらないという考え方が浸透してきましたが、ギジェルモさんは「アルゼンチンでは明日の勝利、将来の勝利のためには今日も勝たなければいけない」と言い切ります。
 
では、試合に出られないジョナタン少年は、どうやって飛躍のチャンスを得たのでしょう。ギジェルモさんの答えは明快でした。
 
「大切なのは、勝つために必要なことをチームでも選手個人でもやり続けることなんだ。ジョナタンの身長が低いからMFに回すとか、足が速いからサイドで使うとか、そういうことはしなかった。試合に出られなくてもジョナタンはつねにストライカーであり続けたし、私たちもそういう風に指導した。それで、フィジカルが追いついたときにはチームで一番のストライカーになっていたんだ」
 

■やり続けた結果がプロ選手への道に

発育の遅かったジョナタン選手ですが、身長が伸び出してからは、それまで学んだ駆け引きや身体の使い方が糧となり、一気に地域で注目を集めるストライカーへと成長しました。結果として、オールボーイズからボカに引き抜かれ、179㎝75㎏の立派な身体に成長したいま、アルゼンチンからヨーロッパをうかがう選手となったのです。
 
「勝ちたいからといって選手の将来を犠牲にしていいわけじゃない。選手の特長や適性をしっかりと見極めて、勝てる方法、選手の明日につながるサッカーをしていくのがアルゼンチンのサッカーだ」
 
なかなか試合に出られなくても、月曜から金曜のリーグ戦、火曜と木曜はバビーフットボール(アルゼンチンで盛んに行われている6人制、スライディングありのミニサッカー)の練習、日曜はバビーの試合と、ジョナタン選手のスケジュールはサッカーで埋まっていきます。日本以上に激しい競争に負けず自分のサッカー、ストライカーとしての資質を信じ続けたジョナタン選手ですが、いつも傍で見守り続けた母親のベッティーナさんには、また違った感情があるようです。
 
次ページ:夢を諦めかけた息子に母親が問いかけたこと
 

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取材・文・写真 大塚一樹

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