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蹴球子育てのツボ ~サッカーで子どもは一人前になる~

どんな言葉で応援すればいいんだ問題

公開:2016年12月22日 更新:2023年4月24日

キーワード:島沢優子応援悩み母親

わが子のサッカーを観戦する際に気になるのが、どんな言葉で応援することが良いのかということ。

 
「がんばれー」
「そこだ!シュート」
「ナイスプレー」
「遅い!」
「いいぞ、いいぞ!」
「簡単に奪われるな」
「持ちすぎるな」
 
子どもたちプレーするサッカーグラウンドには、大人たちのさまざまな言葉が飛び交います。子どもたちの成長にとって、どんな言葉がプラスで、どんな言葉がマイナスなのでしょうか? 
 
ご自身もサッカー少年少女の母としての子育て経験を持つ、教育・スポーツジャーナリストの島沢優子さんが、読者の悩みに答える連載の第4回。今回は、応援の正しいスタンスや子どもにかける言葉の選び方について答えてもらいました。
(文 島沢優子)

 

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<サッカーママからの相談>
小学2年と4年生の兄弟を育てています。サイドコーチングならないように気をつけてはいるのですが、応援はしたい。子どもも応援はして欲しいって言います。どんな声かけなら良いのか、全く声をかけないのが良いのか、判断に迷います。

 

■少年サッカーの応援の基本は「ほめる」と「励ます」で十分

>違うご相談を受けた際、ワタクシめの「黒歴史」をお伝えしたのを憶えていらっしゃいますか。
 
「左にスペースあるよ~」
「裏、裏狙え!」
 
と、指示しまくっていました。いろいろ言ったけど、低学年の子どもたちは「スペース」とか「裏」って何やのん?てな感じで、単なる騒音でした。子どもたちはどんなにか気が散ったことでしょう。
 
一番恥ずかしかったのは、小学4年生の娘の試合でのコーナーキック。サイドコーチングを我慢してたのですが、みーんなゴール前に集まっていたので、つい言ってしまいました。
 
「ショートコーナー、あるよ!」
 
すると、娘が振り向いて首をかしげたのです。(ショートコーナーってなに?)
目がそう言ってました。試合後「ケーキ屋さん思い出しちゃった」と。いや、それ、コージーコーナーやん、みたいな。本当に間抜けで恥ずかしい思い出です。
 
ピッチに入ったら、というより、家を一歩出てグラウンドに向かう時点で子どもはチームの一員です。それなのに、試合でミスをしたり、負け始めると、自分の親のほうをちらちら見る子どもが非常に多いのが日本の現実です。逆もまた然りで、ゴールすると、お母さんのほうを見てガッツポーズします。低学年ならまだしも、中学年以降は一番に仲間と喜び合える感覚になってほしいもの。親はあくまで大勢いる「ギャラリー」の一部で良いのです。
 
よって、少年サッカーの応援の基本は「ほめる」と「励ます」で十分です。
 
いいプレーがあれば「ナイス!」
頑張って最後までボールを追った子には「ナイスファイト!」
ミスした子には「ドンマイ!」
バテそうな子には「頑張れ!」とか「もう少しだよ!」
 
それらの言葉を精一杯の拍手にのせて、子どもたちに贈ります。
 
負けてしまったら「次、頑張ろう!」と励まし、勝てたのなら「良かったね」でいいのです。サッカーの経験者じゃないからとか、ルールをよく知らないからと遠慮することはありません。頑張っている子どもたちをリスペクトする気持ちを持てば、口から出てくる言葉はおのずと選ばれるものです。

 

■リスペクトする気持ちから滲み出るもの

汚い言葉で罵ったり、怒鳴ったりする大人は、子どもたちをリスペクトしていません。大人に尊ばれない子どももまた、対戦相手や仲間をリスペクトできません。大人は子どもの鏡。子どもも、そこにいる大人の鏡なのです。
 
エース級で上手な子どもが、技術の劣る仲間を罵倒するという話をよく聞きます。そんな子どもが減らない背景には、スキルの優劣や強い弱いに関係なくリスペクトし合う大切さを、チームでも家庭でも伝えていないからです。
 
例えば、福島から避難している小学生を新潟や横浜で「菌」呼ばわりしたり、「国からもらった賠償金があるだろう」と恐喝したのは、やった子どもたちの周りにいる保護者や周囲の大人が福島の人をリスペクトしていないからでしょう。それと同じように、少年サッカーでもかかわる大人の影響は大きいのです。
 
また、サイドコーチングする親は基本的に過干渉な方、もしくは自分の姿を子どもに投影している方が多いと感じます。加えて「自分は子どもに良い影響を与える存在だ」と思い込んでいます。
 
かつて、私もそうでした。家を出る前、子どもにどんな声がけをしたら試合で活躍できるのか。どんな話をしようか、などと一生懸命考えていました。勘違いも甚だしい親でした。
 
「最後まで走り切れ」とか「ゴールに向かえ」などと親が言っても、子ども自身の成長の糧になりません。それよりも「楽しんでおいでね」と笑顔で送り出せばよかったのです。
 
10数年前から、少年サッカー指導歴50年のベテランである池上正コーチ(京都サンガ普及部長)とお仕事をさせていただく機会に恵まれました。ダメ親だった私は、池上さんから「楽しんでおいでね」と「楽しかった?」の声がけだけで何もいらない、と教えられ、変わることができました。

 

■「好きなようにやってごらん」という気持ちで

その池上さんから以前、スペインの親の話をうかがいました。試合中は「行けー!」とか「攻めろー!」とか「頑張れ!」とすごく高いテンションで応援するのですが、終わるとわが子が勝とうが負けようが関係なく笑顔になって帰っていくそうです。
 
彼らのなかに「子どもが負けて悔しい」などという感情はさらさらありません。サッカーを楽しくやれてよかったね、という満足感だけ。スペインはそんなカルチャーの中から、名門クラブでプレーするような子どもが生まれるわけです。
 
私が著者で池上さんが監修された新刊『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(12月6日発売/カンゼン)に、「好きなようにやってごらん」というフレーズが掲載されています。
 
サッカーは自由なスポーツです。子どもの自立や主体性も「自由」のある場所にしか生まれません。「好きなようにやってごらんよ」という気持ちで試合を眺めてみませんか。
 
「たかが少年サッカー、されど少年サッカー」と言う人がいます。たかが少年サッカーじゃないんだよ!と「されど感」の強い人は、子どもを追い込む傾向が強いようです。だから、自分でも気づかないうちにサイドコーチングをしています。以前は私も「されど」な親でした。
 
けれど、池上さんのおかげで気づけたのです。
 
「されど」は、いつか子どもが自分で決める。
「たかがサッカー、されどサッカーなんだよ!お母さん!」
 
そう言える子が最強だということを。

 

 

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島沢優子(しまざわ・ゆうこ)

スポーツ・教育ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』や『東洋経済オンライン』などで、スポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。主に、サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』『王者の食ノート~スポーツ栄養士虎石真弥、勝利への挑戦』など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著/いずれも小学館)、錦織圭を育てたコーチの育成術を記した『戦略脳を育てる テニス・グランドスラムへの翼』(柏井正樹著/大修館書店)など企画構成も担当。指導者や保護者向けの講演も多い。日本文藝家協会会員(理事推薦)1男1女の母。

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