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運動能力

子どもの成長を急かさない。育成にあせりは禁物【マンチェスターUの指導理論3】

2012年2月 1日

キーワード:イングランドトレーニングフィジカル練習

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昨年末に行われた指導者講習会、『ナイキ エリートトレーニング』のゲストとして招かれた、マンチェスター・ユナイテッドFCの育成コーチ、ケビン・ウォード氏。彼の指導理論の中から、今回は子どもの成長に関するお話を紹介します。
 
<<マンチェスター・ユナイテッドの指導理論2から読む
 
みなさんの周りには、例えば小学4年生なのに6年生に交じってサッカーをするなど、『飛び級』をしている選手はいますか?
 
子どもの成長スピードは人それぞれです。早熟タイプなら飛び級も良いかもしれませんが、逆に晩成タイプの場合、回り道をすることも時には必要になります。周囲と比較してあせってはいけません。個人の成長スピードに合わせることが大切なのです。
 
現在、マンチェスター・ユナイテッドのトップチームでは、アカデミー(クラブの育成組織)出身の若い選手たちが活躍しています。
 
その中の1人、ケビン・ウォード氏の教え子でもあるセンターハーフ、トム・クレバリーも晩成タイプでした。ウェイン・ルーニーのように若いころから大人のような体つきをしていた早熟タイプとは違い、トム・クレバリーは回り道をしながらゆっくりと成長を遂げ、見事、最終的にマンチェスター・ユナイテッドのトップチームへの昇格を果たしています。
 
彼は飛び級どころか、『カテゴリーダウン』を経験した選手でした。
 
 

■フィジカルが未熟だったトム・クレバリー

マンチェスター・ユナイテッドのアカデミーは、9才から18才まで、1才ごとにカテゴリーを分けて練習や試合が行われており、その中には飛び級をして、上の年代に交じってプレーする選手もいます。
 
「私は飛び級に関しては、技術があることはもちろんですが、フィジカル面で体ができている選手を選ぶようにしています。それはなぜかといえば、プレミアリーグはすごくフィジカルの厳しいリーグだからです。体がきちんとできていなければ、あせって飛び級させず、選手に時間を与えるようにしています」(ケビン・ウォード氏)
 
今シーズン、マンチェスター・ユナイテッドで試合に出場し、2011年8月にはイングランドA代表にも初招集されたトム・クレバリーも、そのような判断からケビン・ウォード氏に時間を与えられた選手でした。
 
「彼は技術がある選手でしたが、体ができていなかったので、U-12のときにカテゴリーを一つダウンさせ、U-11でプレーさせたことがあります。つまり自分よりも若い選手と一緒にプレーするということです。彼は当時、非常にショックを受けていました。しかし、それは才能や能力がないという意味ではなく、体の成長スピードが他の選手とは違ったというだけのこと。事実、トム・クレバリーは今ではトップチームで活躍する選手に成長しています」
 
飛び級やカテゴリーダウンという考え方は、個々の成長スピードの違いを調整するための手段であり、それ以上でもそれ以下でもないということを理解しておく必要があるでしょう。
 
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■人を育てることに、あせりは禁物

子どもの成長を急かさない、という考え方は、ケビン・ウォード氏の指導の中にも現れています。
 
ナイキ エリートトレーニング』では、参加した指導者の中から次のような質問がありました。「子どもの場合、みんながボールを持ちたがる気持ちが強いため、ボールの周りにワーッと人が集まって団子サッカーをする傾向があります。どうすればサイドチェンジなどスペースを広く使う意識付けをすることができるのでしょうか」
 
彼の答えは以下のとおりでした。
 
「まずはウォーミングアップからパスを出させたり、スペースへ入るような動きを反復させておくことが必要でしょう。そしてミニゲームを行うとき、左サイド、中央、右サイドの3つに分けたピッチを使います。おそらく子どもたちは、どれか一つのスペースに入ってサッカーをしてしまうでしょう。そこで問いかけるのです。“残り2つのスペースを使えるか?”と。大切なのは子どもに自主的にチャレンジさせること。無理に“ワイドに開け”とは言いません。こうした状況判断は、大人になるにつれて覚えていくものなので、ゆっくりと、本人が自分で必要性に気づいていかなければ意味がありません。あせりは禁物です」
 
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ケビン・ウォード//
Kevin Ward
マンチェスター・ユナイテッドFC アカデミーに所属。イングランドFAが将来の代表選手となるべきユース年代の育成を目的に設立した「FAナショナル・スクール・オブ・エクセレンス」で指導経験を積み、U18のアカデミーコーチとしても12年間の指導経験を有す。マンチェスター・ユナイテッドFCアカデミーではコーチとして7年間、様々年代を指導。技術育成コーチとして指導に従事する傍ら、アカデミーのスカウト、保護者とのコミュニケーション、トレーニング・プログラムの作成とその質の向上の責任者も務める。
 
 
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取材・文/清水英斗(サッカーライター)、写真/TOTAL FOOTBALL

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