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親子でチャレンジ

本田圭佑も実践する"夢からの逆算"で子どもを育てる

2014年3月 6日

キーワード:コンディショニング成長

日本代表の本田圭佑選手は「セリエA(のチームに)に入団して、10番で活躍する」という夢を小学校の卒業文集に書き、それは実現しました。なぜ本田選手は夢を叶えることができたのでしょうか? スポーツ教育コンサルタントの椎名純代さんは「それは夢から逆算して目標を立てていたからでしょう」と説きます。サッカーだけに留まない、自ら考えて夢に近づく子どもの育て方を伝授します。
 
試合前入場
 

■そもそも、あなたは子どもの夢を知っていますか?  

「将来、大きくなったら何になりたい?」
 
親ならだれもが子どもにそう質問した経験があるでしょう。どういった答えが返ってきましたか? 男の子ならサッカー選手、警察官、学者、宇宙飛行士など、女の子なら食べ物屋、看護師、アイドル、保育士など、その答えは子どもによってさまざまです。サッカー日本代表の本田選手は幼いころから明確な目標があり、それを公言してきました。
 
「目標設定は”自己成就的予言”とも言えます。こうなるのではないかという予期が人を無意識のうちに予期に適合した行動に向かわせ、結果として予言された状況を現実に作ってしまうプロセスのことです。オイルショックなどはこの有名な一例です。スポーツでは、大きな目標を持てば、それに適合しようと(叶えようと)努力するようになるので、夢を持つことは、子どもが成長するために大切なことです」(椎名さん)
 
しかし、なかには自分の夢がなんなのかさえ、まだわからない子どももいます。本当は違うのに親が喜ぶような夢を察して答える子どももいます。
 
子どもの夢がわからない。そういった悩みがサカイクにも多く寄せられます。
 
「子どもの夢がわからないようでしたら、好きなものを画用紙に切り貼りするなどして、なりたい将来像をイメージしてもらうと良いでしょう。文字ではなく絵で表現することが得意なお子さんもいます」(椎名さん)
 
たとえば、サッカーボールの切り貼りのほかに野球ボールやテニスボール、バスケットボールが貼られていたら、その子はサッカーだけでなく球技全般に興味があるのかもしれません。食べ物ばかりが集められていたら、料理人を目指すのがその子にとって良い道かもしれません。子どもは親の思う通りには成長しないもの。子どもの好きなものを知ることで、その子の成長を助けてあげることはできます。
 
「ただし、子どもの夢を見つけようとするあまり、親がそれを決めてしまってはいけません。すぐに夢が見つからなくても焦る必要はありません」
 
子どもに「夢や目標を持って、それに向かって努力することが大切」といくら説いたところで、あなたが目標に向かって努力しない人ならば、子どもは矛盾を感じてしまいます。子どもの夢が見つからないのなら、まずはあなたが目標を持ってそれを叶えるために努力する姿を見せることから始めましょう。
 
 

■夢から逆算して目標を立てましょう

夢を持っていても漠然としたイメージがあるだけでは、あまり意味がありません。夢は永久に夢のまま。本田選手は前述の卒業文集にこうも書いています。「世界一の選手になるためには世界一がんばらないといけない」。これが夢からの逆算の第一歩です。では、世界一がんばるとは、なにを、誰と、どこで、どのくらい行えばいいのでしょうか? それを子どもと一緒に考えてあげることが親の役目です。 
 
ニューヨーク・ヤンキースに所属するイチロー選手が、小学校の卒業文集に以下のように書き記しています。
 
“ぼくの夢は一流のプロ野球選手になることです。そのためには中学・高校で全国大会に出て、活躍しなければなりません。活躍するには、練習が必要です。ぼくは3歳の時から練習をはじめています。3年生の時から今までは、365日中、360日は激しい練習をやっています。だから、一週間中、友達と遊べる時間は5~6時間の間です”
 
これこそが夢を実現する逆算の目標設定です。本田選手は卒業文集にイチロー選手ほど明確な逆算を記してはいません。しかし、頭の中ではしっかり逆算していたのではないでしょうか。だからこそ輝かしい実績を残せているのではないでしょうか。
 
椎名純代さん
 

■目標設定シートを使って一週間単位で逆算しましょう

では、どのようにして夢を細かく逆算していけばいいのでしょうか。椎名さんが監修する目標設定シートを利用すれば、簡単に一週間単位の目標を立てることができます。
 
※クリックすると大きくなります
目標設定シート
 
【いますぐ活用できる!目標設定シートを無料でダウンロード】
目標設定シート.pdf
 
「私が川崎フロンターレの下部組織の教育担当をしていたときに使っていたシートです。たとえばメンタルの欄には、何事にも向上心を持って行動する、読書40分など実行する具体的な項目を書いていきます」(椎名さん)
 
【各項目の具体的な記入例】
 
サッカーのスキル・テクニックに関するもの
 
「インサイド1100回」
「ロングキック350回」
「ボールタッチ1600回」
「ヘディング 前・左右各70回」
 
メンタル(気持ち・心構え)に関するもの
 
「何事にも向上心を持って行動する」
「読書40分」
「声だしをする」
 
コンディショニング(食事・睡眠)に関するもの
 
「食事は、野菜や肉やごはん、いろいろなものを組み合わせて食べる」
「早寝早起きする(○時に寝て、○時に起きる)」
「腹筋45×5」
「背筋35×5」
「腕立て20×7」
 
学校/その他に関するもの
 
「家の手伝いをする」
「勉強30分」
 
 
こうして立てたそれぞれの目標を下記の基準Aで自己評価し、さらに一日の目標、一週間の目標を基準Bで自己評価すると良い、と椎名さんは言います。
 
【目標別の評価基準】
 
計画通り実行できた場合 ○
計画していたほどできなかった(やらなかった) △
できなかった(やらなかった)×
やる予定がなかった /
 
【一日、一週間の評価基準】
 
100~75%できた A
75~50%できた B
50~25%できた C
25~0%できた D
 
 
目標シートをチェックする際には、なぜその目標を立てたのか、または自己評価で「×」や「/」、「C」や「D」をつけることになってしまった理由を聞くこと。そこをしっかり分析して、翌週、翌々週の目標を考えることで、逆算の精度が高まります。こうして大きな目標を達成するために小さな目標を立てる作業が子どもの考える力を培います。
 
 

■「サッカー“だけ”少年」は危険 

「夢から逆算して目標を立てることは子どもが成長するうえで大切なことですが、夢ばかりになってしまい勉強や他の事が疎かになるのは、その子にとってリスクにもなり得ます」と椎名さんは忠告します。それは怪我をしてサッカーを辞めなければいけない、あるいは社会に出るときなど、サッカー以外の環境に飛び出していく際の足かせになる可能性があるということです。
 
「どういうことかと言うと、サッカーをする子どもは自然とサッカー選手としてのアイデンティティが強くなります。これは欧米ではアスレチックアイデンティティと呼ばれています」
 
普通の子どもは「あなたは何者ですか?」と尋ねると、たとえば兄にとっては「弟」、両親にとっては「息子」、クラスメイトからは「生きもの係」といった風に、いくつもの意識を持っています。しかしサッカーをする子どもにとっては「弟」や「息子」「生きもの係」という意識よりも、「サッカー選手」としての意識が大きくなる傾向にあります。これがアスレチックアイデンティティです。
 
「それは強豪チームの子どもほど大きくなります。それがないとサッカー選手として成功できないのですが、それ以外の意識が小さいと、サッカーから離れたときに何をしたらいいのかわからなくなってしまいます」
 
アスレチックアイデンティティ
 
これはサッカーだけに関わらず、野球やほかのスポーツをする子どもにも同じことが言えます。たとえば、高校までは体育会系の部活でエースだった子どもが社会に出てどうすればいいのかわからなくなってしまう、というケースがありますが、これはアスレチックアイデンティティが原因です。
 
「そうならないためにも、サッカー以外の経験を与えてあげることが大切です。たとえば、サッカーがオフの日に一緒に旅行に行くとか、映画や博物館に行くとか、そのようなことです。フロンターレでは震災が起きたあとに、子どもたちに震災作文を書いてもらい、チームメイトの前で発表してもらいました」
 
そのように夢以外の子どもたちの可能性も伸ばしてあげることも、夢から逆算して目標を立てることも、どちらも子どもの成長には必要なことですので、バランス良く経験できるようにオーガナイズしてあげましょう。
 
 
椎名純代さん
椎名純代
州立ユタ大学心理学部卒業後、スプリングフィールド大学大学院心理学部アスレティックカウンセリング学科にて修士号を取得。 在学中は大学のスポーツチームにてアスレティックカウンセラーとしてサポートを行うほか、冒険教育のNPO法人プロジェクトアドベンチャーにて 日本人初のインターンとして勤務。帰国後、一般企業を経て、スポーツマネジメント会社へ転職。スポーツ教育部部長として、 日本オリンピック委員会(JOC)はじめ、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)、一般社団法人日本女子プロゴルフ協会(LPGA)など 数々のスポーツ競技団体、チームへ教育プログラムを実施。 2010年からはJ1川崎フロンターレ 育成・普及部の教育担当としてスポーツを通じたリーダー育成プログラム「フロンターレアカデミー」を開発・展開。 
千葉大学非常勤講師(2004~2012年)のほか、大学生へのワークショップ、セミナーも多数実施。  
2009年よりスポーツに携わる女性の会「女性スポーツコミュニティ」を主宰。勉強会、交流会、イベントなどを企画運営し、延べ約500名が参加する。  
2013年スポーツの教育的・文化的価値の向上を目指し、スポーツを通じた場づくり・環境づくり・キャリアづくり・未来づくりを行うGood Sport associationを設立。  
国際ファシリテーター協会(IAF)認定プロフェッショナルファシリテーター 
日本生産性本部キャリアコンサルタント講座 修了
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取材・文/出川啓太(サカイク編集部) 写真/新井賢一・サカイク編集部

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