U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022

2022年9月 2日

堂安律を輩出した関西の育成クラブ・西宮サッカースクールが「低学年のうちはパスを使わない試合もさせる」ワケ

関西有数の育成クラブとして知られ、堂安律選手を始めとするプロ選手を輩出する西宮サッカースクール。

U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2022では、決勝トーナメント1回戦(ラウンド16)でPK戦の末に敗退しましたが、随所に高い技術が光る好チームでした。

U-12の監督を務める上野洋輔さん(以下、上野)と選手たちに、試合の感想と選手育成について話をうかがいました。
(取材・文:鈴木智之、写真:新井賢一)

 


随所に高い技術力を見せつけた西宮サッカースクールだったが、惜しくもPK戦で敗れた(C)新井賢一

 

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■ワーチャレは中学生年代に繋げる良い大会

――ラウンド16はPKで敗退となりました。試合の感想をお願いします。

上野 前半はリードして折り返したのですが、もう1点取るチャンスがあった中で決めきれなかったのが残念です。ただ、初戦は負けから入って、引き分け、勝ちといい流れを作ることはできたかなと思います。

子どもたちも初めての11人制でしたが、一戦一戦自信を持ってやってくれました。中学生年代に繋げる意味でも、いい大会だったと思います。

 

■ピッチを大きく使うとゴールまでの距離が遠くなるので、「逆の発想」で戦った

――ボールを保持して攻める場面も多かったですが、チームとしての狙いはどのようなことだったのでしょうか?

上野 11人制のフルコートとなると、ピッチがかなり広いです。最初はピッチを大きく使ってプレーしようとしていたのですが、この年代のフィジカル、走力は大人とは違うので、ピッチを広く使うとゴールまでの距離が遠くなってしまいます。そこは試合をするごとに修正しながら、「逆に距離を狭くしてやろう」と言いました。

選手同士の距離を近くして、狭いスペースの中でプレーすることで、日頃トレーニングしている足元の技術や、自分たちの良さが活きてくるのではないかと考えました。距離を近くすることで点も入るようになりましたし、選手の特徴も発揮しやすくなったのではないかと思います。

 

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■年代に応じた指導、低学年のうちはパスを使わない試合もする狙い

――西宮SSは技術を重視する指導で有名ですが、どのような考えで育成しているのでしょうか?

上野 外国人と試合するとなると、日本人はフィジカルで勝つことはできません。どこで勝負するかというと、狭いスペースであったり、局面の技術だと思っています。そのために、低学年のうちはドリブルやリフティングの練習ばかりしますし、パスを使わないで試合をすることもあります。

高学年になるとパスも使うようになり、相手がパスを警戒するとドリブルが活きてきます。まずはドリブルができないと、パスも活きてこないと思っているので、パスを活かすためにもドリブルは必要です。

 

――年代に応じて、すべきことを分けて指導しているわけですね。

上野 はい。低学年と高学年では、少しずつサッカーが変わってきます。それは、年代に応じてやるべきことが違うからです。低学年のときは足元の技術、ドリブルを中心に、試合の結果にはこだわらないスタンスで指導しています。

私はジュニアを11年見ていますが、1年生から6年生まで続けて指導して、その後1年生に戻るという形なんですね。なので、いまは2周り目です。それも踏まえて「この年代ではこうしていきます」という方針のもとでやっています。

 

■中学年代に繋げる上で、12歳時点で重要なこと


年代に応じてやるべきことが違うので、それぞれの年齢に合わせた指導を行っていると語ってくれた上野監督(C)新井賢一

 

――中学生年代につなげる上で、小学6年生の時点で重要なことはなんでしょうか?

上野 ジュニアユースになっても、技術が必要なことに変わりはありません。中学年代を見ていると、ジュニア年代で技術をやっている子と、蹴るサッカーやフィジカルに頼ったプレーをしていた子では、差が出るように思います。

足元の技術があることで、狭いところでもプレーできますし、ジュニアユースで求められる、いろんなサッカーに対応できるのかなと思います。

 

■小学生年代Bチームでも中学、高校で伸びる子もたくさんいる

――OBとして、堂安律選手が有名ですね。

上野 うちに来てくれる子たちは、足元の技術が上手くなりたい、ドリブルで抜けるようになりたいという子が多いです。うちでサッカーをするとは、そういうことなので、中学生になったときに伸びる選手が多いのかなと思います。

小学生年代でBチームだったとしても、中学、高校で活躍している選手もたくさんいます。長い目で見て指導していますし、Bチームの子にも「しっかりと伸びるサッカーを教えてます」と、自信を持っています。

 

――ジュニアユースからJクラブのアカデミーに進む選手も多いですが、どのようなところが評価されていると思いますか?

上野 Jに行く子は武器があります。西宮の選手はベースとして足元の技術はありますが、それに加えてスピードがある、強い、視野が広いなどの武器がある選手が、Jクラブの育成組織に行っている印象です。Jクラブに限らず、全国の強豪校でプレーしている選手もいるので彼らの活躍は嬉しいです。

 

■中学にあがる前に11人制を経験できるのは良い体験

――あらためて、ワールドチャレンジという大会を振り返って、感想をお願いします。

上野 この大会に出られるのは、すごく光栄なことだと思います。予選から勝ち上がり、強豪チームと試合をすることができて、いい経験になりました。海外のクラブと試合ができなかったのは残念でしたが、ワーチャレの良さは、中学校に上がる前に、11人制を経験できることです。そこも含めて、良い経験ができた大会だったと思います。

 

■選手たちが4日間の大会を通じて得たもの

選手にも話をうかがいました。

 


大会を通じて「戦う気持ち」を得られたと語った鹿島正成くん(C)新井賢一

背番号20番・MF 鹿島正成(かしま まさしげ)

――ラウンド16の試合を振り返って、感想をお願いします。

鹿島 前半からペースをつかんでいましたが、そこで決めきれなかったのが敗因だと思います。

 

――大会を通じて得たものはありますか?

鹿島 メンタルというか、戦う気持ちが得られました。

 

――西宮SSのサッカーの特徴は? 

鹿島 高い技術とパスワークで、相手ゴールに襲いかかるところです。

 


――憧れの選手はいますか? 

鹿島 遠藤航選手です。守備の要で、ボールを奪って攻撃につなげていくところが好きです。

 


ワーチャレを通じて選手間の会話が増え、一人ひとりが意思表示できるようになったと語った上原颯介くん(C)新井賢一
 

背番号23番・MF 上原颯介(うえはら そうすけ)

――試合を振り返って、感想をお願いします。

上原 全体的にラインを上げて、自分たちの流れが来ていましたが、決めきることができませんでした。カウンターの場面で、最後はボールを奪うことができたけど、はっきりするところと、中途半端になるところがあったので、もっと明確にやればよかったです。

 

――大会を通じて得たものは? 

上原 チームワークです。Bチームの子たちと話す機会が増えたことで、一人ひとりが意思表示できるようになったのは良かったです。

 

――憧れの選手は?

上原 特にいなくて、自分らしくプレーできたらいいなと思います。

 


「自分たちで勝利を失った感じ」と試合を振り返った林祐未くん(C)新井賢一

背番号10番・DF 林祐未(はやし ゆうみ)

――試合を振り返って、感想をお願いします。

林 先制点を決めて流れをつかめたけど、相手に決められた後、流れがちょっと悪くなって、シュートを打てるタイミングで打たずにPKに持ち込んでしまいました。自分たちで勝利を失った感じです。

 

――西宮SSで身についていることは? 

林 ボールタッチや技術、パスワークなどが身についていると思います。

 


岡部遥希くんは「決めるところで決めきれなかった」ことを悔やんだ(C)新井賢一

背番号7番・FW 岡部遥希(おかべ はるき)

――試合を振り返って、感想をお願いします。

岡部 全体的に押し込めたけど、決めるところで決めきれませんでした。自分のプレーとしては1対1で負けてしまい、ゴールに結びつけられなかったのが悔しいです。

 

――憧れの選手は?

岡部 グリーリッシュ選手です。ドリブルで切り込んで、シュートを決めるところが好きです。

 


先制点を決めた野山悠行くんは、将来「わかっていても止められない」選手になりたいと語った(C)新井賢一

背番号21番・MF 野山悠行(のやまゆあん)

――試合を振り返って、感想をお願いします。

野山 自分が先制点を決めることができて嬉しいですが、負けてしまったので悔しいです。

 

――大会を通じて得たものは? 

野山 自分の得意な、スピードを活かすドリブルはできたかなと思います。この大会は強い相手が多かったので、メンタルを強く持ってプレーすることができました。

 

――憧れの選手は?

野山 エムバペ選手です。足が速くて、わかっていても止められない。僕もそういう選手になりたいです。

 

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