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U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2021

8人制では小さい子は使いにくい!? 11人制で輝ける子も。ワーチャレ上位監督が語る8人制をやりすぎる弊害とは

公開:2022年1月31日 更新:2022年2月 7日

キーワード:11人制FCトリプレッタ渋谷ジュニアYF NARATESOROワーチャレワールドチャレンジ8人制

先日開催されたU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ。準優勝のFCトリプレッタ渋谷ジュニア海老根監督と3位YF NARATESOROの杉野監督に、大会に参加した意義や11人制サッカーについて伺いました。

U-12といえば普段は8人制でプレーしていますが、ワールドチャレンジは11人制の大会。杉野監督は8人制と11人制についての問題提起をしてくれました。
(取材・文:貞永晃二、写真:吉田孝光)

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準決勝 ディアブロッサ高田FC U-12対FCトリプレッタ渋谷ジュニア(写真:吉田孝光)

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■普段対戦する機会のないチームとの試合で選手たちも成長

FCトリプレッタ渋谷ジュニアは、東京都渋谷区を拠点に活動するチームで、今大会は、グループリーグから決勝トーナメントのR16、準々決勝と5戦連続無失点勝利。準決勝で初失点を喫するが快勝し決勝進出。決勝では敗れ準優勝となりました。

――大会に参加された狙いは?
海老根宏監督 全少出場を目指してやっていたんですが、東京都の大会で敗退してしまいました。今年は日程が変わったり、予選の状況が変わったりでしたが、タイミングよくこの大会の予選が最後残っていたので、世界一を目指そうという狙いの中で出させてもらいました。海外のチームが来れないのは残念でしたが、普段対戦する機会のない関西のチームや全国でやったことのないチームと対戦できて、選手も毎試合すごく成長してくれているなと感じられましたし、参加してよかったなと思います。

 

■ピッチが大きくなりスペースと時間ができる中での守備を練習してきた

――R16まで無失点ですが、守備力に自信ありですか?
海老根 点がそんなに取れないのでしっかり守備をしているということでもあるのですが(笑)。この年代だと普段は8人制かつハーフコートでやっているので、ワーチャレではピッチが大きくなってスペースと時間ができる中でボールの奪い方、奪う場所、タイミング、そこから攻撃を、という部分を出場が決まってからずっと合言葉のようにやってきました。試合をやるにつれて徐々に連係も良くなってきて、粘り強い守備から攻撃ができているのかなと思っています。

――11人制への準備は?
海老根 1か月弱です。トレーニングとウチのジュニアユースとのトレーニングマッチをやらせてもらいました。なかなか東京ではグラウンドがないとか、出場する近辺のチームとかとはできなかったので。こういう大会がない年は、基本的に8人制のまま終了してしまい、11人制は中学に行ってからとなります。ウチのジュニアユースへ進む子が多いですが、このチームから2人がFC東京、大宮アルディージャへ進みます。(青木智史くん、中嶋翼空くん)。クラブとしては当然みんなジュニアユースへ上がってほしいんですが、チャレンジしたいという子にはさせています。ウチからFC東京U-15へ行った梶浦勇輝くんがU-18からトップ昇格するのは嬉しく思っています。

 

■見ていて楽しめる、応援してもらえるチームを目指している

――チームのコンセプトは?
海老根 個々のスキルアップはもちろん、チームとして見ていて楽しめる、応援してもらえるチームになろうというのがベースにあります。幼稚園の頃からずっとやってる子が多くてスタメンの内8人が7~8年一緒にボールを蹴っている仲間です。この大会が小学生年代最後の大会になっちゃいますが、みんな一致団結して頑張れてる要因なのかなと。

――トリプレッタの選手の特徴はどんなところでしょう?
海老根 技術的に優れている部分と、球際の早さと強さがよく評価されています。止める・蹴るは当たり前ですが、球際、切り替え、運動量をベースに、球際へ行けるスピード感、こぼれ球へ行ける早さとかを徹底しています。小学生でも大人でも必要とされることだから今から身に付けて行こうと。中学・高校へ行っても評価してもらえるところです。

――カテゴリーにユースがあるのはいいですね。
海老根 高3まではウチでやれるのは魅力の一つだと思います。「ここでやりたい」とJクラブの誘いを断る子もいます。中高一貫で大学まで行ける学校へ進んで、サッカーはウチでやるという子もいます。いろんなニーズに応えられるように門を広げていないと難しい時代ですね。

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大会3位のYF NARATESOROは準決勝で、センアーノ神戸ジュニアと対戦。11人制にも難なく対応できるスキルとサッカーの理解の高さなど、ハイレベルな試合を見せてくれましたが、PK決着で3位決定戦に回りました。「止める」「蹴る」といった基礎を大事にし、選手個人が主体性をもってプレーすることにこだわるYF NARATESORO杉野航監督に、今大会を振り返ってもらいました。

 

■試合を重ねるごとに11人制にスムーズに移行していけた

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3位決定戦YF NARATESORO対ディアブロッサ高田FC U-12(吉田孝光)

 

――準決勝は2-0からの逆転負けでしたが、内容は良かったと感じました。
杉野航監督 そうですね。試合の入りも悪くなかったし、2点目追加点をとれたところも悪くなかった。ちょっとだけ気持ちが下がったというか、守りに入っちゃったところ、重心が下がったところから相手にズルズルと行かれたので......。サッカーの難しさを経験できましたね。

――ここまでの試合を振り返ってください。
杉野 初戦試合を負けたところから、試合をやるごとに11人制にスムーズに移行していけています。勝ち上がれた結果、他のチームより試合数を多くさせてもらえて、この子らのジュニアユースにつながると思うので、1試合でも多くできるのはありがたいです。この舞台(パナスタ)で真剣勝負をやらせてもらえるのは何よりだと思っています。

 

■8人制サッカーをやりすぎている

――11人制への準備期間はありましたか?
杉野 全少と日程的にかぶっていたから、基本的にはできていないです(笑)。試合も紅白戦と中学生と練習試合をした程度で、この大会に向けてという形ではできていないです。

――大会の意義をどう感じていますか?
杉野 もちろん海外のチームが来て、世界レベルを体感するというのが、本来の目的だとは思いますが、今回みたいに来日していなくても選手の成長につながるようないい体験はできました。サッカーは11人でやるものなのですが、ウチも含めて「8人制をやりすぎている」のかな、という印象があるので、指導者として8人制がゴールではないし、目的ではないということを忘れずに取り組まないといけないと感じられるだけでも意義があるのかなと思います。

――8人制をやりすぎているとは?
杉野 ボールを蹴る、つなぐは上手いチームは多かったですが、ただそれがゴールに向かっていない。ボール中心にポジショニングは取れるけど、ボール以外のところが取り切れていないとか。サッカーの本質的なところが、やっぱり11人になった時に少しボケるのかなと。ボケるというか、たぶん8人ででき切れていない。少し悪い言い方かもしれませんが、器が小さい、スケールが小さくなりがちなので、そこは8人制をやりすぎないようにしないといけないなという反省はあります。

 

■8人制だから損する子、11人制だから輝ける子もいる

――11人制につながるように8人制をやれていない?
杉野 やれていないところも多かったり、どうしても違う部分があったり。8人制で必要とされるものと11人制で必要とされるものが、少し離れている部分もあるので、どうしても個人的には11人制に移行する時期がいつなのかも含めて、早めるべきかもしれないと思っています。小6は11人でいいんじゃないかな、(8人制の集大成である)全少がゴールじゃなくてもいいのかなと......。

もう少しスケールを大きくしてあげられるんじゃないかなという気がします。11人制だからこそ輝ける子もいるし、8人制では損をする子もいたりするので。できるだけそうならないようにしているけれど、そういう子もいるという現状があるかなと思うので。

 

■8人制では小さい子は使いにくい!?

――8人制では小さい子は使いにくいと言われる監督さんもおられました。
杉野 そうですね。上手く使っているチームももちろんありますけど、全少ベスト4とかを見ていると、なかなかね。

11人制ではゴールまでが遠いし、人数も多いので、8人制だと1人かわされたらゴール前までいってしまっておそらく得点機会になってしまう。11人だともう少し人数もいますし、普段よりもドリブルで抜いているエリアから残り半分あるので、そこでドリブルの使い方を覚えないといけなかったり。

でも11人でやる方が個人的には楽しいです。楽と言ったらおかしいですが、メリハリがとれればポジションによっては楽ができる。8人制だと基本的にはみんな動いていないといけないですから。そこで特徴が出しにくい。それこそ小さい子、ちょっと足の遅い子、運動量はないけど別のことができる子は8人制だとなかなか難しい。

ジュニア年代を8人制でやっていく中で、ジュニアユースへの進路のこととかあって、8人制ではなかなか活躍の場が少なかったけど、こいつは11人制ならもっと重宝されるんじゃないかという選手もいますから、そういうのも伝えたりします。逆もいますしね。

――今大会で選手の成長を感じた部分はありますか?
杉野 弱さが見える選手もいれば、成長が見える選手もいて、11人制への適応とかを含めると進んでいるので、ゲームをこなして良くなりますし、そのゲームがトレーニングマッチじゃなくてこういう真剣勝負の場で、お客さんに見てもらえる。こういう中でプレーして発揮できたものは自信につながるので、これから先にもつながるのかなというのが感想です。

 

ボール奪取の上手さが光ったYF NARATESORO背番号76大田ありすさんにも話を聞きました。

■全力でやったつもりだけど、後悔が残った

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状況を読むスキルに長けていて、ボール奪取が抜群に上手だった大田ありすさん。夢はプロ選手になること(写真:吉田孝光)

――3位で終わりましたが、大会の感想は?
大田 みんなで優勝しようと言っていて、3位になっちゃったけど、準決勝でもっとできることがあったなと思いました。全力で走る部分で終わったあと後悔があったから。自分では全力でやったつもりだけど、今思うともっとできたと思ったから、そこは悔いが残っています。

――ポジションはずっと今のところ? 中盤は楽しい?
大田 始めた頃はトップとか前の方をやっていたけど、小4くらいから真ん中になりました。中盤はめっちゃ楽しいです。

――憧れの選手と今後の目標、進路を教えてください。
大田 憧れの選手はイニエスタ選手です(笑)。今は守備が中心ですけど、攻撃もできるようになることが目標です。進路はINAC神戸(テゾーロ)です。

――ロングヘアと進路から、澤穂希さんにあこがれているのかと思いました。
大田 もちろんあこがれの選手です。将来はプロ選手になりたいです。

――大会前と後で自分が成長したなと思う点はありますか?
大田 今日はなかなかシュートが打てなかったけど、昨日は点がとれました。それでちょっと自信がついたと思うので、そこが成長したところかなと思います。

 

U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジは、11人制での試合になります。8人制から11人制への移行期で、幅やスペースの使い方などを課題に挙げるチームがたくさんあります。中学以降、11人制のサッカーでも輝ける選手になるためにどんなことが必要なのか、杉野監督の言葉をヒントにしていただければと思います。

 

ワールドチャレンジ2021結果はこちら>

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取材・文:貞永晃二、写真:吉田孝光

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