U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2020

2020年12月28日

イレギュラーなことが起きた時、何ができるか は「サッカー的思考」ワールドチャレンジ2日目

2020年は新型コロナウイルスの影響で、多くのイベントが中止に追い込まれました。サッカーも例外ではなく、例年とは違ったシーズンを過ごすことに。

そんな中、「ジュニアサッカーワールドチャレンジ」は毎年夏に行われていたところを、年末にずらすことで大会を敢行。海外クラブこそ呼ぶことはできませんでしたが、全国から32チームが集結し、連日熱戦を繰り広げています。(取材・文 鈴木智之)

 


初の全国大会出場を楽しんでいたAVANCE(白)

 

■創設1年半で全国大会出場、九州から参加のAVANCE

九州地方から唯一の参加となった「AVANCE U-12」(佐賀県鳥栖市)の斉藤敬嘉監督は、大会に参加できる喜びを、次のように話してくれました。

「(ワーチャレ)開催に関しては感謝しかないですよね。九州からは僕たちだけなんですけど、コロナの影響で来たくても来れなかったチームもあります。そういう方たちの思いも背負ってやろうというのは、選手にも話をしています。今回の遠征は保護者の方の協力もあって、実現できました。(コロナの影響で)例年より団体活動が減っています。グラウンドを使えるのも、当たり前のことではありません。子どもたちは、活動している地域の方への感謝、親への感謝をより感じていると思います」

選手たちは初の全国大会を楽しんでおり、FC市川GUNNERS戦で決勝ゴールを決めた、関惇仁選手(15番)は「全国大会に出たのは初めて。上手な選手がいっぱいいて感動しています」と素直な気持ちを話してくれました。

チームの中心として、中盤でゲームをコントロールした林大翔選手(7番)は「いろんなチームがあって、いろんな特徴があっていいなと思いました。自分たちも相手のいいところを盗みながらやっていきたい」と成長に意欲を見せていました。

 

■イレギュラーなことが起きた時に何ができるか、はサッカーでも同じ

さいたまシティノースの西村陽毅監督は、大宮アルディージャでプレーした経験を持つ元Jリーガーです。今大会はグループリーグを2勝1分で首位通過し、ベスト16入りを決めています。


さいたまシティノース

 

さいたまシティノースは新型コロナウイルスの流行以降、ワールドチャレンジが初めての宿泊を伴う大会参加となったようです。

「これまで出場させていただいた大会が軒並み中止になったこともあり、ワーチャレは子どもたちみんなが出たいと言っていました。遠征の宿も、普段は3、4人のところを1人部屋にして、マスクや手洗い、うがいなどを欠かさず、対策をして臨んでいます。保護者からは『大会を開催してくれるだけありがたいです』という声もありました。真剣勝負の場を経験できて、選手たちが楽しそうにしているのを見ると、参加できて良かったなと思います」(西村監督)

チームは新型コロナウイルスの流行が始まった3月から、緊急事態宣言が開けた6月頭まで、活動を自粛しました。どのチームも自粛期間中の過ごし方を試行錯誤する中、西村監督は、こんな話を子どもたちにしたと言います。

レギュラーなことが起きたときに、何ができるか。それって、すごくサッカー的な考え方だよねと。自粛期間中に、何を伸ばせるか。選手として差がつくのは、そういう時間の過ごし方だからと。できないものをできないと言っているだけではなく、これができるんじゃないか、あれができるんじゃないかと、みつけていこうと話しました」

選手たちには過去の試合映像を送り、「各自で見返して、良いところ、悪いところを探す時間にあててほしい。足りないものを見つめ直して、活動が再開したときに、ひとつでもいいのでできることを増やそう」と、メッセージを送ったそうです。

 

■サッカーができる喜びを爆発させる機会を持つことは大事

ワールドチャレンジの主催者であり、実行委員長を務める浜田満さんは「僕らだけじゃなくて、サッカー界全体として解決方法を探すというか、工夫しながらやっていかなければいけないと思う」と、未来を見据えて話します。

「こういう状況でも、大人が工夫して場を作るのは大切だと思っています。制限されている中で工夫して、楽しいことを探すという。僕自身、コロナの前から、どうすればみんなにとって良いものが実現できるかを考えて動いていたので、考え方としては、今回の開催もその延長線上にあります」

とはいえ、開催までにはいくつものハードルがあったと言います。大会の目玉となる海外チームの招聘は断念せざるを得ず、開催時期を夏から年末にずらしました。日本の参加クラブの予選も中止と再開を経て、大会直前に出場を辞退するクラブ、選手も出ました。

「何かあるたびに変更して、やれる道を探しました。めちゃくちゃ手間はかかりましたし、つぎはぎだらけだけど、こうしてグラウンドに子どもたちが集まって、ボールを蹴って感情を発散させている姿を見ると、開催して良かったなと思います」

2020年は大人だけでなく、子どもにとっても試練の一年でした。学校の休止やイベントの中止、大好きなサッカーができない期間も長くありました。多くの子どもたちは、いままでにないほどのストレスを抱えたことでしょう。浜田実行委員長は言います。

「子どもにとって、マイナスではなくプラスの方向に感情を爆発させる機会を持つことは、成長に寄与すると思うんです。コロナで学校に行けないとか、サッカーができないとか、押さえつけられてネガティブな感情が爆発するのと、サッカーでゴールを決めてポジティブな感情を爆発させるのとでは、同じ感情の爆発でも、人間性の部分で寄与するものが違うような気がします。それは人の成長にも大切なことだと思う」

 

■久保竜彦さんも「大人が頑張るべき」と発言

はからずも大会初日、大和ハウスFUTURESの監督として参加した、元日本代表FWの久保竜彦さんもこう言っていました。

「試合をしないとうまくならないのは、みんなわかっていると思う。そういうときは大人が頑張るべき。子どもは試合をしたくてうずうずしているんだから、エネルギーを発散させるために、大人が考えてやるべき」

困難な状況に立ち向かう。それはサッカー的なマインドでもあります。大会会場である福島のJヴィレッジでは、様々なことにチャレンジする光景が繰り広げられています。それはきっと、子どもたちの成長に大きな影響をもたらすことでしょう。

 

【全試合結果・詳細】U-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2020 公式ホームページ>>

 

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