U‐12ジュニアサッカーワールドチャレンジ2015

2015年9月 9日

「おまえの日じゃなかった。明日またがんばろう」FCバルセロナの子どもたちを支える大人の役割

チームの責任者という立場として、子どもたちと関わるエミリ・コール・グイシェンスさん
 

■子どもたちとどう接するか? 世界一のクラブが教えてくれること

今大会、準決勝で敗退した後、審判に抗議したバルセロナの子どもたちにセルジ監督から注意があったことはすでにお伝えしたとおりです。この件について二人にも聞いてみたところ、声を揃えて「あれはバルサの選手がとるべき行動じゃない」と言いました。
 
「選手にはサッカーの勝ち負けだけではなく、他のことも大切にしてほしいと常々言っている。だいたいサッカーを続けていれば勝つこともあれば負けることもあるんだ」(ジョアンさん)
 
「これはクラブとしての教育。この年代は特に教育が大切だなんだ。あの態度は良くなかったと選手たちに話したよ」(エミリさん)
 
コーチの他にこんな風に選手を見つめている年長のスタッフがいることは、子どもたちにも心強いはずです。そんな彼らにインタビューを進める内に、彼らから気になるキーワードが出てきました。
 
「選手たちを最もダメにする要素、それはサッカー以外の外からの力だよ。両親の過度な期待、年齢が上がっていくと周りに現れる代理人。こうしたプレッシャーから彼らを守ることも大切な仕事のひとつなんだ」
 
エミリさんは顔をしかめながらこう言います。「日本でも両親のプレッシャーは問題になることがある」そう伝えると、「親の問題? 日本でもそうなのか? 本当に困ったなあ」と天を仰いだエミリさんは、こんなことを話してくれました。
 
「バルセロナはクラブとしてコーチと親が直接話すことを禁止しています。練習も基本的には見学禁止。個別の選手についてコーチが話すこともしませんし、ピッチ内外で気を遣っている。地方の小さなクラブはこうはいかない。保護者がコーチに詰め寄ったり、口論をはじめたりすることも珍しくない。こういうクラブは保護者がお金を払っているという意識が強いので問題も起こりやすい」
 
その話を聞いていたジョアンさんは「こうしたプレッシャーもあって、プレーを失敗した後に交代しただけで泣いてしまう選手もいる。バルサだからこそのプレッシャーもあります。そういう選手にはおまえの日じゃなかった。明日またがんばろう」と声をかけます。
 
すべての選手がメッシになれるわけじゃない。チャビやイニエスタ、ブスケツだって悔しい思いをしてきた。二人の“おじいちゃんコーチ”は、ここにいる選手がすべてプロになれないことを誰よりも知っているからこそ、生活面を律すること、勉強をすること、プレッシャーに負けずにプレーすること、まとめてしまえば「バルサの選手として振る舞うこと」の大切さを教えることができるのかもしれません。
 
「これまでいろいろな選手を見てきた。どういう選手がプロで活躍できるかなんてこの時点じゃ誰もわからない。だから、自分の中にある問題や親、代理人、外からのプレッシャーでダメになっていく選手は見たくない」
 
二人は選手たちにいつもこんな言葉で語りかけているそうです。
 
「雲の上にいるんじゃない。これは現実なんだ。毎日をしっかりと生活して、プレーひとつひとつを大切にしよう」
 
 

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