あなたが変われば子どもは伸びる![池上正コーチングゼミ]

2019年10月25日

試合中にどんな声を掛け合えばいいのかを理解させる指導を教えて

■多くの子どもがただ見ているだけで声を出さない理由


(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

そもそも、なぜ声が出ないか。そこも考える必要があります。
ボールの横にサポートについたとしても、本人に「何のためにそこにいったか」の意識が薄いようです。ただやっている。たまたまパスが来た。中学生でさえ、そんなことが多いです。

外部指導員を務めている中学校の部活動で指導するとき「君が声を出せば、違うプレーができたよね」と伝えます。

例えば、バックの選手が守っている場面で混戦からのボールを拾ったとき。
「コントロールして前を向けば、攻められるよ」
「落ち着いてつなごう!」

といった周囲から声が必要です。

本人は混戦からのこぼれ球なので、少し焦っている。周囲からの声があれば落ち着いて前を向けるのに、誰からも何も言われないから簡単にクリアしてしまいます。そこでベンチやほかの選手は「ナイスクリア!」と拍手。監督さんだけが「フリーだったのに、なんで前向かないんだよ!」と怒っています。

多くの子どもは「あの子はどうするのかな?」と思いながら、ただ見ています。頭にひらめていても、コーチングして間違っていたらどうしよう? と思っているかもしれません。こうなるのは、ミスを責めることに時間を費やしトライ&エラーを習慣にしていない教育にも、声が出ない原因のひとつに思えます。

さらにいえば、失点したときに「おまえ、そこでなんでいかないの!」と多くのコーチが怒鳴っています。事象だけをなぞる声掛けです。

そうではなく、近くにいた選手に「その選手に、詰めろって言ったかな?」と尋ねたほうがいい。声を出せという要求ではなく、声を出す必要性を実感する指導をすることが大切です。

池上 正(いけがみ・ただし)
「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。
大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。
12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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