楽しまなければ勝てない~世界と闘う“こころ”のつくりかた

2018年11月28日

女子駅伝の四つんばいゴールは美談か? 「選手が勝ちたがっている」が理由にならない根拠とは

■スポーツは「わが子のすべて」ですか?

スポーツは「非日常」のものなのに、日本人は「日常」としてとらえがちです。目の前の敗戦を「世界の終わり」と、とらえています。彼らの世界(日常)はスポーツだけではないのに。そのため、自分の選手生命が終わっても、世界が終わるよりはいいと考えます。

※写真はサカイクキャンプです

保護者も、スポーツを日常として「わが子のすべてだ」ととらえているので、「あなたが思うならやりなさい」と言ってしまう、欧米の人たちからすると、まったく理解できないでしょう。

先ごろ開催された女子体操の世界選手権でも、同じ声を聞きました。腰痛に悩まされている日本代表の選手は、この大会で座薬を入れて演技したそうです。

「ここでやらないと(代表から)落とされてしまうから」とインタビューに答えていました。

「落とされてしまうかも」と選手が思っているのだとしたら、「そんなことはない。きちんと故障を治してもう一度チャレンジしよう」と伝えたほうがいいと私は思います。

少年サッカーの「選手が勝ちたがっている」という言い訳も同じです。


何が何でも勝つというのは違うと伝えてください。全員が出場する。適度な時間強度で楽しく練習する。痛いところがあったらすぐ休む。それらを「なぜそうしなくてはいけないか」ときちんと理解させ、日常を大事にすることを伝えるのが指導者の役目でしょう。

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高橋正紀(たかはし・まさのり)

1963年、神奈川県出身。筑波大学体育専門学群ではサッカー部。同大学大学院でスポーツ哲学を専攻。ドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院留学中に考察を開始した「スポーツマンのこころ」の有効性をスポーツ精神医学領域の研究で実証し、医学博士号を取得。岐阜経済大学経営学部教授及び副学長を務めながら、講演等を継続。聴講者はのべ5万人に及ぶ。同大サッカー部総監督でもあり、Jリーガーを輩出している。
Jリーグマッチコミッショナー、岐阜県サッカー協会インストラクター、NPO法人バルシューレジャパン理事等を務める。主な資格は、日本サッカー協会公認A級コーチ、レクリエーションインストラクター、障害者スポーツ指導員中級など。

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