教えて西部さん! 初心者の素朴な疑問に答えたサッカー観戦Q&A

2018年7月30日

世界との差はフィジカル!? そもそも日本人はサッカーに向いてないの?

息子・娘がサッカーをやっているけど、サッカーのことがよくわからないお父さん・お母さん。

専門書は難しいし、試合を見ているだけでは中々理解が進まない。子どもが好きなサッカーを一緒に楽しみたいんだけど......というあなたにおススメ!

「あんなにゴールが大きいのにシュートが入らないのはなぜ?」
「4-4-2、4-3-3て何の数字?」
「裏ってどこのこと? 表はあるの?」

といった、いかにも素人なザックリとした質問や、予想のななめ上をいく珍問・奇問に、戦術解説の第一人者、西部謙司さんがサッカーの本質を噛み砕いて説明します。

サッカーのどこをどう見れば楽しいか、これを見れば手っ取り早くわかります。

代表の試合やスーパースターのニュースは見るけど、わかりやすいプレーの場面しか理解できない人、サッカー好きと、そうでもない人をつなぐコミュニケーションのヒントに!! ぜひお子さんとも一緒にお楽しみください。


それでは今回の質問と回答をどうぞ。


Q.フィジカルの差とか言われるけど、小さい選手も活躍しているから関係ないのでは?

A.あんまり関係ないかもしれません。


【西部さんの解説】

歴代のスーパースターはだいたい身長170センチ前後で、180センチを超える人は少ない。ペレ、フェレンツ・プスカシュ、アルフレッド・ディ・ステファノ、ディエゴ・マラドーナ、リオネル・メッシ......皆小柄です。むしろ、背の高い人はスーパースターにはなれないのかもしれません。

マラドーナはジネディーヌ・ジダンを評して、「もう少し小さかったら史上最高の選手になれたかもしれない」と言っていました。

サッカーは機敏であることが有利に働きます。器用で小回りが利いて、瞬発力に優れているのは小柄な選手であることが多い。背の高い選手は空中戦では有利ですが、その他の場面ではむしろ大きすぎないほうが有利です。

(C)高田桂

足のサイズも関係があるかもしれません。ブラジル代表のスターだったソクラテスは193センチの長身でしたが、彼はチームメートのジーコを「パーフェクト・フットボーラー」と表現していたそうです。技術的にパーフェクトというだけでなく、体の大きさや足のサイズがちょうどいいという理由でした。ソクラテスは長身で足も長かったのですが、彼のサイズだと足下にあるボールをすぐに蹴り出すには大きすぎたそうです。シューズのサイズも大きいので、足首を寝かせたキックでないとボールの芯に足の甲を当てられない。身長172センチのジーコだと、足のサイズも26~27センチなのでボールを置き直さなくてもすぐに蹴ることができる、サッカーに適したサイズだと。

フィールドやボールの大きさが決まっている以上、サッカーに向いた体格というのもだいたい決まっていて、180センチ以下ということなのかもしれません。

ただ、大きな選手にはそれなりの利点はあります。空中戦や競り合いには有利でしょうし、リーチの長さも利点でしょう。サッカーはそもそも体格差にあまり影響を受けない競技です。バレーボールやバスケットボールでは長身が有利ですし、ラグビーのFWは軽量では務まりません。サッカーにはそうした体格の影響がほとんどないのです。

とはいえ、フィジカル能力の差は当然影響します。スプリントの速さ、走りきるスタミナ、パワーといった要素で優劣が生じます。しかし、それも技術や読みといった他の要素でカバーできる部分もあります。あまりにも差があれば別ですが、少しの差ならフィジカル能力は絶対ではないでしょう。

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