平岡和徳氏に聞く「子どもたちの未来に触れる」スポーツ指導・学校部活動

2018年10月15日

休むこともトレーニング 子どもたちが「自分で決める」ようになるこれからのスポーツ指導の在り方

■休ませる勇気、休み方改革を

これからの指導者に必要なのは「休ませる勇気」だと平岡氏は言います。

―― 体の発育にも休養は重要ですね。

平岡 休むこともトレーニングになるんです。先生方も同じで、働き方改革というより、どう効率よく休養をとるかという『休み方改革』が必要だと思います。大津高校の場合も、月曜日はミーティングだけでオフにしていますし、毎日のトレーニングは疲労度を考えて休みを入れています。それはプレーヤーズファーストだからです。

指導者にとって大切なのは、『休ませる勇気』なんですよ。コンスタントに休養日を設けることで選手は自分の体と対話し、「なぜ今日がオフなのか」分かってきます。休養まで含めてトレーニングなんだという意識を持たせることが大事だと思いますね。

プロの選手にも、契約内容に決まった日数を休ませなければいけないという項目があります。アスリートにとって必要だから、トップレベルの選手達が休みを取り入れているのに、それを全く無視して、部活動をやっている子ども達を休ませないのは、やっぱりおかしいことですよね。

―― プレーヤーズファーストという観点では、とくに今年は、酷暑の中での甲子園の高校野球やインターハイ開催の問題がありました。連戦となる日程の問題もあります。平岡先生は「夕方やればいい」という意見をお持ちのようですが、大会運営、文科省、高体連等、関係各所との折衝も必要になってきそうですね。

平岡 インターハイなどの場合、ようやく、一県開催ではなくて、たとえば南九州総体とか、ブロック開催になってきました。それならもっと発展させて、夏のインターハイは東北でやるといった判断があってもいいのではないかと思います。

2月に行われる高校サッカーの九州新人大会は、福岡や大分での開催だと、雪が降って運営が大変な場合があります。それなら、新人大会インターハイ、九州大会が2つあるわけですから、寒い時期の新人大会は南九州、夏のインターハイは北九州と、南北で分けてローテーションを組んで開催すればいい。そういう、新しいことに取り組んではどうですかと、2種委員会で提案したこともあります。

夏の暑さがこれだけ異常になってきているわけですから、インターハイは西日本ではなく、東日本や、むしろ北海道でやってもいい。日本サッカー協会と高体連が連携して、補助金を活用すれば、できないことではないと考えています。

―― 夏の大会では、飲水タイムを設けたりして選手の体調に配慮されるようにはなってきています。

平岡 高校総体では5人交代できるレギュレーションになっていますが、頻繁にブレイクが入ると、せっかくの交代枠が使われず、サブのメンバーは試合に出られないまま終わってしまうことも考えられます。相手を疲れさせることもサッカーの一部分ですから、35分ハーフの試合で何度もブレイクタイムがあったら、別のスポーツになってしまいます。

選手達にとって暑さが危険だというのであれば、サッカーというスポーツの本質からかけ離れて何度もブレイクタイムを入れるといった規定を設ける手前の段階で、命を守るために安心、安全な方法として、涼しい場所でやるとか、いちばん暑い時間を避けて、午前中の早い時間や夕方に試合をする。そういうことが検討されてもいいのではないかと思います。

サッカーという競技の本質に対して指導者がどうあるべきか、世界のサッカーがどう動いていくのか、スタンダードはワールドクラスだという意識を常に持たなければいけないし、指導者もトップアスリートも、未来へ向かう子ども達のお手本になるような言動が求められていくと思います。

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