テクニック
【動画】Jクラブなどの指導者が教える数的優位でボールを失わないコツと低学年向けトレーニングまとめ
公開:2024年4月22日
「サッカー指導者のためのオンラインセミナー『COACH UNITED ACADEMY』」では、毎月8本のトレーニング動画を配信している。
日本各地のJクラブ、街クラブ、海外で指導経験のあるコーチのトレーニングなど、バラエティ豊かな動画の中から、今回はJクラブやJFAで指導をするコーチが実践する「3対1など数的優位の状況で、ボールを失わないトレーニング」をまとめた。
指導対象はU-8~10年代で「サッカーを始めたばかりの子どもに、どのような指導をすることで向上させていくのか?」 に焦点を当てている。U-8~10年代でも取り組むことのできる、周囲を見てプレーを選択し、技術を高めるトレーニングを紹介したい。(文・鈴木智之)
パスの優先順位とポジショニングの状況判断を磨く4対1
まずは鹿島アントラーズのアカデミーで長くコーチを務めた、蹴和サッカースクール代表の上田原剛氏による「4対1のボール回しで、パスの優先順位とポジショニングの状況判断を磨くトレーニング」から。
設定としては、ロンドの要領で攻撃4人、守備1人でボール回しを行う。ここでのポイントは四隅のコーンの中間地点にフラットマーカーを配置し、「パスを出した選手は、マーカーに戻ってから次のプレーに移る」というルールにすること。
ボールの受け手は、ボール保持者にプレッシャーがかかっていなければ、マーカーから離れてパスを受ける。パスを出した後は、再びマーカーの位置へ戻る。
上田原コーチはその理由を「左右どちらにも動きやすい場所だから」と説明。「ボールの状況を見て、味方に寄る、離れるをやってみよう」と声をかけていった。
さらには、パスの出し方をアドバイス。「ディフェンスが来た時は、ボールを止めた方がいい?止めないほうがいい?」と問いかけ「相手が来ている時はワンタッチが有効。使い分けよう」とレクチャーしていく。
加えて、パスの優先順位にも言及。4対1の状況を試合と仮定すると、ボール保持者の左右(サイドハーフ)ではなく、前方の選手(FW)にパスを出すことが得策だ。
ただし、守備側も前方からボールを奪いに来るため、正面にパスを出そうとしてもコースがなく、奪われてしまう。
そこで重要なのが、味方からボールを受けるためにパスの受け手が下がり、前方のDFを外した状態でパスを受けること。その動きと連動し、次にパスを受ける正面の選手は、左右に動いてパスコースを作ることがポイントになる。
上田原コーチによる、「周囲の状況を観て、どうすればいいかを判断すること」にアプローチできるトレーニングだ。
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ジェフ千葉のコーチが実践する「3対1の鬼ごっこ」
2つ目は、ジェフ千葉の河野太郎コーチによる「U-10からでもできる、ボールを失わないスキルを伸ばすトレーニング」。
ここで実施したのは「3対1の鬼ごっこ」。河野コーチは「鬼ごっこだから、鬼の近くに行かない方がいいよね。自分の最初のコントロールはどういうところに止めた方がいい?」と問いかけ「ボールを受けたら鬼を見て、エリアの中で鬼から遠いところへコントロールし続けよう」とアドバイスを送る。
さらには「足元にボールを止めない」「ファーストタッチはどこ?」「相手、エリア、味方を見よう」とシンクロしながらコーチングし、選手たちの意識を向けさせていった。
続いて、3人の真ん中にコーチを配置し、「鬼から逃げながら、タイミングを見計らってコーチにパスを入れる」という設定にチェンジ。河野コーチは「まずはコーチを見て、パスを入れられなかったら、鬼から遠いところへボールを動かそう」と声をかけていた。
鬼ごっこのゲーム性を取り入れながら、周囲を見てドリブルをすること、ボールを受ける際に、方向づけたコントトールをすることなど、U-10年代で身につけておきたい、基礎技術にアプローチできるトレーニングだ。
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JFAフットサル・テクニカルダイレクターが行う「2対1」
最後はJFAフットサル・テクニカルダイレクターを務める、ボンフィンFC豊島コーチ兼GMの小西鉄平コーチによる「2対1」のトレーニング。
設定としては、3人1組を作り、そのうちの1人が守備者となる。フットサルコート全面を使ってプレーしながら、攻撃側は守備者にボールを奪われないように、2人で協力してプレーする。
小西コーチは選手たちのプレーを見た後、「起きがちな現象」について解説。「ボールを持っている選手が、味方が良い準備ができていない状態でパスを出してしまうことがある」と話し、攻めている方向を仮定して、どのような体の向きを作ればいいかを実演していく。
「味方が良い体の向きを作るまで、ボール保持者はドリブルをして時間を作ろう。もし相手がボールを奪いに来たら、ドリブルを使って時間を作り、なるべく内側を向いて、味方が良い準備ができたらパスをしよう」
動画では、ボール保持者がプレッシャーを受けた場面で、どのように局面を打開していくかを実演。「常にコートの内側を見て、情報を得ながらプレーしよう」と説明していった。
小西コーチの説明のトーンやスピード、言葉選びはシンプルで明快だ。子どもたちにわかりやすいものになっているので、ぜひ動画で確認してほしい。
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ボールの持ち方で変わる!ボールを繋ぐ為に必要な「味方がサポートに入る時間とパスコース」を作る練習法
今回はJリーグやJFAでの指導経験のあるコーチの動画を紹介したが、声掛けのスタンスやトレーニングの雰囲気は三者三様だ。練習内容に加えて、トレーニングの雰囲気を見比べると、新たな発見があるかもしれない。ぜひ動画を見て、エッセンスを感じ取ってほしい。
【講師】上田原剛/
15歳の時にジーコサッカーキャンプに参加、ジーコにスカウトされアントラーズユースへ入団、その後大学を経て指導者の道へ。CFZ(ブラジル)で指導者をスタート。2005年~2021年までの15年間は鹿島アントラーズのアカデミーにて指導。茨城県トレセンU12、ナショナルトレセン(関東)U12担当。2021年4月に蹴和サッカースクールを立ち上げ現在は小中学生の指導にあたる。
スクールのほか指導者育成活動(練習会や講義)を行い、2021年6月からスタートした「お父さんコーチ向け練習会」には既に150名以上の指導者が参加している。
【講師】河野太郎/
高校卒業後、ジェフユナイテッド市原・千葉の前身である市原SCに入団。2000年にチームの主将に就任し、チームをJFL昇格まで率い、2007年に引退。
その後指導者の道に進み、2010年からジェフユナイテッド市原・千葉のスクールコーチとなる。普及ダイレクターを経て、今現在は社会連携活動グループマネージャーとして、幼児、小学生の指導とスタッフの育成、
また、地域の指導者との交流(指導者講習会)など、クラブの普及を行っている。市原SCから含めて23年間、選手、指導者でジェフユナイテッド市原・千葉に所属。
【講師】小西鉄平/
クーバーコーチング、Jフロンテッジフットボールスクール、東急Sレイエスなど育成年代の指導を経て ミャンマー女子フットサル代表監督として東南アジアオリンピックに出場、その後日本フットサルリーグ(Fリーグ)のU23選抜監督などのトップカテゴリーの指導者としてのキャリアを積む。同時に株式会社ボンフィンのGM兼コーチとしてフットサルの普及や育成年代の指導を再開。
また、2008年より日本サッカー協会のフットサルインストラクター、2010年よりアジアサッカー連盟のエリートフットサルインストラクターとして日本、アジア全土で指導者養成を担当。 2015年からは日本サッカー協会フットサルテクニカルダイレクターとして日本代表チーム強化、育成、指導者養成、普及の4つのエリアの発展のため日々奮闘中。また2020年よりボンフィンFC豊島1年生担当コーチとしてジュニアユース世代の指導にも携わる。