■高くても良いボールを買うと最終的には安上がり
坂本さんがダービースターの存在を意識し始めたのは、ブレーメンから、バイエルン州にあるTSVイッフェルドルフへ移ったときのこと。ブレーメン時代はクラブがボールをシーズン毎に新品と交換する管理をしていて、全チームがダービースターで統一されていました。しかし、バイエルン州のクラブはブレーメンほどのビッグクラブではなかったので、ボールがなくなるたびに安価なものを買い足していました。
「そこで気がついたのが、ボールによって重さも大きさも違うこと。おかしいな、ブレーメンのときは、どこのメーカーのボールを使っていたんだっけと思い、当時の同僚に電話して聞いたところ"ダービースターだよ"と教えてもらいました。そこで思い出したのが、試合用のダービースターと練習用のダービースターを分けて使っていたことです。あるとき、試合前に監督から、『このボールは他の練習用のものと一緒にしないように』と言われて、試合用の高価なダービースターを渡されたことがありました」
ドイツの冬は寒く、ボールの管理を誤ると、一冬で使い物にならなくなってしまうこともあったそうです。
「安いボールを買うと、凍てつく寒さで表面が固くなったり、空気が抜けたりと、すぐにダメになってしまうんです。結局、毎年新しいボールを買うはめになり、アカデミーダイレクターに『去年買ったじゃないか』と言われ、『いや、(凍っちゃって)もう使い物にならないから』と返したら、『1年で使い物にならないなんて、何を言ってんだ』と小言を言われたこともありました(笑)。そのときの経験から、特価品ではなく、いいボールを買ったほうが、選手のプレーにも良い影響が出ますし、結果として長持ちすることを学びました」
取材・文 鈴木智之 写真 坂本健二