■キッカーを受け手に変える長谷部誠の知性
日本はゴールキックだけでなくフリーキックも、試合の流れを作るために有効に活用しています。
たとえばパレスチナ戦に見られたシーンですが、自陣で得たフリーキックを森重がセットし、パスを出そうとしました。しかし、周囲の味方は相手にマークされ、パスの出しどころがありません。こうなると、ロングボールを蹴り出すしかないのでしょうか?
すると、アンカーの長谷部がスッと下りてきました。そして森重にサイドへ開くように指示を出すと、キッカーをチェンジ。長谷部をマークしていた相手選手は、ボールの周囲9.15メートルには近づくことができません。キッカーになった長谷部がパスを出すと、そこから森重がフリーでボールを運びました。
この場面、一見すると、森重はパスの出しどころを失ったように見えます。ところが、実はひとりだけフリーな選手がいたのです。それは他でもない、キッカーの森重本人です。
長谷部はキッカーをチェンジして、森重をパスの“受け手”に変えることで、この場面を難なくクリアしました。まさに、インテリジェンス(知性)です。
これはスローインにも言えること。
投げるときに味方がマークされ、出しどころがないように見えても、実はスロワー本人がフリーになれる場面があります。そのときは味方に投げてリターンパスを受け取れば、投げた本人がフリーでプレーできます。
もちろん、インプレー中も同様です。
ボールを持ったセンターバックが顔を上げたとき、味方がマークされていて、パスの出しどころに困ることがあります。しかし、実はフリーなのは自分自身。ゆっくりとドリブルで持ち上がり、自分にマークが来た時点で、空いたところへパスを出す。このようなプレーが可能になります。
今大会をみると、韓国やオーストラリアなど日本以外の国も、ゴールキックやスローインから足元でパスをつなぎ、確実に攻撃のバトンをわたそうとするビルドアップが多く見られます。試合の流れをつかむ“リスタート”に、今後も注目したいところです。
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