■栄養素は、ひとつでも足りないものがあるとうまく機能しない
「食事に対してかけられる時間は人によってさまざまだと思います。手間をかけて気合いの入った手作り料理をつくる人もいれば、共働きのため毎回手作りの料理というわけには行かない人、どちらかというと料理が苦手で出来合いのものの割合が多い人。いつも同じおかずになってしまう人。いろいろな人がいると思います」
「手間暇をかけた手作りの料理が毎食できたら苦労しないでしょ」と思ったそこのあなた、柳生さんは「時間や手間をかけた手作りの料理が子どもたちにとって必ずしもいい料理とは言えない」と言います。十分な知識がある場合は、食材の持つ栄養素などのバランスを理解して材料やメニューを選べるというメリットがありますが、せっかく時間をかけてつくった料理も、栄養素のバランスが取れていなければ、その食事から得られる栄養は十分ではないというのです。もちろん、お母さんの手作りのご飯を家族みんなで食べることはとてもいいことなので、その点は誤解しないでくださいね。
栄養素のバランスと聞いて、みなさんはどんなことを思い浮かべるでしょうか? 食事について“バランス良く”というのは、ずいぶん昔から強調されてきたことですが、柳生さんは、栄養素を摂取する際にバランスが必要な理由をこう説明します。
「食事に関する情報を見ていると、○○にはこんな栄養素が効きます。これを摂れば食生活が改善しますという対処療法的なものが多いですよね。でも、栄養素ってなにかひとつだけを摂ればいいというものではないのです。ちょうどサッカーみたいなもので、チームワークで働くものなんです」
栄養素は単体で摂っても意味がない!? これはちょっと驚きの事実です。専門的に言うと、こうした研究はパントテン酸や葉酸を発見したロジャー・ウィリアムス博士が提唱した“生命の鎖”という考えかたに基づいています。
「人間の細胞を健全に代謝させるためには、40数種類の栄養素をチームとして働かせる必要がある」
ウィリアムス博士の理論を簡単に説明すると、「バランスよく取るとよい働きが期待できる」ということではなく「ひとつでも足りないものがあるとうまく機能しない」ということなのです。
「ビタミンCやビタミンB1、カルシウム、亜鉛、葉酸......、これら一つひとつの栄養素が、鎖をつくっている小さな輪だと考えてください。この一つひとつの輪がつながって、生命を守る鎖になります。栄養素がしっかりとつながった生命の鎖は、ネックレスのように“環”になって、私たちの健康を守っています。でも、その中のどれか一つでも、弱かったり欠乏すると鎖は切れてしまいます。ですから、どれも同じ強さでなければ元気な体にはなりません。バランスのとれた毎日の食事が、“生命の鎖”を太く強くしなやかにするのです」
柳生さんはさらに続けます。
「縦長の板を組み合わせた"桶"を思い浮かべてみてください。この桶の板が一枚でも短かったらどうなるでしょう? 水を張ろうとしても、短い板の部分から水がこぼれてきますよね。一枚一枚の板を栄養素と考えてみてください。栄養素もどれかひとつが足りていないと、そこまでしか栄養を摂ることができなくなるのです」
ビタミンなしではミネラルが働かず、ミネラルなしではビタミンが働かない。特定の栄養素がたくさん含まれた食事でも、足りていない栄養素がひとつでもあれば、それに足を引っ張られるようにして、効果が低下してしまうのです。
“ビタミンたっぷり”とか“ミネラルが豊富な”というキャッチフレーズはよく聞きますが、栄養素がそれぞれ相互に関係しあって働くことは意外と知られていません。
栄養という視点から見ると、これまでの食事と栄養に関する常識が少しずつ変わっていきます。
今回はイントロダクションとして、カロリーと栄養素の違い、バランス良く栄養を摂ることの本当の意味を教えてもらいました。次回はもう少し具体的に効果的な栄養素の摂取のメカニズムや、普段の生活に役立つ栄養の知識をご紹介します。
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取材・文 大塚一樹