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ジュニア年代の正しいフィジカル・コンディショニング論

【第6回】「早く試合したい!」ジュニア年代を"やる気"にさせるコンディションづくり

公開:2012年10月 2日 更新:2020年3月24日

キーワード:コンディショニングタニラダートレーニングフィジカル体力づくり疲労回復

Jリーグフィジカルコーチの谷真一郎さんに聞く「ジュニア年代の正しいフィジカルコンディション論」。最終回となる今回は、ジュニア年代の指導者も知っておくべき、選手のフィジカルコンディションづくりについてお聞きしました。選手の集中力が足りないとき「集中しろ!」と注意するのではなく、何が原因なのかを冷静に分析することで、選手のコンディションをコントロールすることができるようになるといいます。ジュニア年代の選手を伸ばすために必要なコンディション作りの原則とは?(取材・文/鈴木智之)

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■選手のコンディションを把握し分析するのも指導者の役割

前回のコラムでお話した通り、夏場の走り込み等、過度なトレーニングは選手を上達させるどころか、疲弊させることにつながります。指導者の果たす役割が「選手を上達させること」である以上、選手の状態(コンディション)をしっかりと把握することから、トレーニングの組み立てが始まると考えています。

大切なのは、指導者が選手のコンディションをどう判断するかです。具体的には、選手のコンディションが良い時と悪い時の違いを、どこで感じることができるか。例えば、練習や試合の中で思ったより早く動きが悪くなる、あるいは集合したときの選手の顔が暗い、雰囲気が重い……など、コンディションを肌で感じる手がかりはたくさんあります。

選手たちが、どうも練習に集中できていないとします。それが、トレーニングのやり過ぎからくるコンディションの低下にあるのか、それともメンタルの部分に原因があるのか。仮にコンディションに原因があった場合、それを見極めずに「集中が足りない!走ってろ!」などとしてしまうと、選手はより疲労がたまり、疲弊してしまい、ますます状況は悪化してしまいます。
みんな、サッカーが好きで一生懸命、練習や試合に取り組むものです。それができていないということは、コンディションに原因がある場合が多いのです。集中できていない原因は普段の生活にあるのか、トレーニングの量や質にあるのか、目標設定などのメンタル面にあるのか。それを分析するのが、指導者の役割でもあります。

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■身体に疲労が蓄積されないよう、回復する時間を設けることが大切

選手たちのコンディションをどのようにコントロールしていくのか。1週間の中で、コンディションが良い時と悪い時があっても問題はありません。大切なことは、その状態を指導者側が意図して作り出しているかどうかということ。例えば、プロのスケジュールの場合、オフ明けの日は多少、動きが重くても仕方ありません。また週の初めには負荷をかけられるので、週の前半は疲労感も伴うものです。大切なことは、週の半ばから後半にかけて、動きのスピードは上げながらも、疲労からの回復期を設けてエネルギーを蓄え、試合の当日に身体がムズムズして「早く動きたい!」という状態に持っていくことです。そして試合で選手達がやりたいプレーが出来るようにしていきたい。選手がそのような状態になっていると、集まった時の雰囲気に、活気があふれているのがわかります。

コンディション作りの原則は『過負荷、超回復』です。選手のコンディションは負荷をかけることで下がりますが、休養を与えると、トレーニングをする前より良い状態に回復します。これは、身体がトレーニングの負荷に適応しようとするためです。毎日、ハードなトレーニングをこなすと、回復する時間がありませんので、身体に疲労がたまっていきます。当然、コンディションはなかなか上がらず、結果としてパフォーマンスの低下やケガを招くことにもつながります。

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中高生のサッカー部員で華奢(きゃしゃ)な選手が多いのは、トレーニングのやり過ぎも一因として考えられます。中高校生に中期的なオフを与えると、体重(筋肉量)が一気に回復することがあります。それは普段、充分に回復しきれていないからです。一週間の休みがあると、壊れた筋肉が回復して、ぐっと体重(筋肉量)が上がるのです。身体が疲弊していると、食欲も減退します。必要な栄養素が足りない状態では、身体も回復しませんし、筋肉量のアップも見込めません。

過負荷、超回復に必要なのは、適切なトレーニングの量と休養(=食事+睡眠)です。最近は食事や睡眠についても、より細かなノウハウが知られるようになってきました。私が柏レイソルのジュニアを指導していたとき、「食事をたくさん食べられない選手は、良い選手になれないよ」と、よく言っていました。合宿に行って出された食事を、全部食べられない選手がたくさんいたのです。

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そこで、当時は出された食事プラス、ご飯をおかわりしないと、試合には出さないというルールを決めました。そうすると、選手たちは試合に出たいので、なんとかがんばって食べるようになります。いくら良いトレーニングをしていても、食事で栄養を補給しなければ、パフォーマンスは上がっていきません。初めは食べられなかった子たちも、日々の取り組みによって、着実に食べられる量は増えます。たくさん食べることもトレーニングなのです。そして、食べられる選手は強く、上手くなっていきます。

食事だけでなく、睡眠も大切です。睡眠時間が十分にとれていないと、身体がしっかりと回復しないので、コンディションはよくはなりません。このように、ジュニア年代から食事の大切さ、身体のケアやコンディショニングについての知識を得ておけば、日常の過ごし方が変わってくると思います。サカイク読者のみなさんは、ジュニア年代に携わっている方が多いと思います。指導者、選手、そして保護者が一体となり、成長期に必要な知識とコンディション作りについて、少しでも目を向けて頂ければと思っています。

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谷真一郎(たにしんいちろう)//

愛知県立西春高校から筑波大学に進学し、蹴球部に在籍。在学中に日本代表へ招集される。同大学卒業後は柏レイソル(日立製作所本社サッカー部)へ入団し、1995年までプレー。 

引退後は柏レイソルの下部組織で指導を行いながら、筑波大学大学院にてコーチ学を専攻する。その後、フィジカルコーチとして、柏レイソル、ベガルタ仙台、横浜FCに所属し、2010年よりヴァンフォーレ甲府のフィジカルコーチを務める。 

『日本で唯一の代表キャップを持つフィジカルコーチ』(2012年9月現在)


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取材・文/鈴木智之 写真/サカイク編集部

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