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元日本代表コーチが教える! サッカーと勉強の相乗効果を引き出す方法

サッカーを続けている限り「どこかで誰かが観ている!」

2014年4月 4日

サッカー日本代表コーチとして、また、育成年代のスペシャリストとしてもさまざまな現場でたくさんの選手を見続けてきた小倉勉さん(ヴァンフォーレ甲府ヘッドコーチ)は「サッカー選手に必要な才能は?」と問われて、少し意外な才能を挙げてくれました。
DFをぶっちぎる「足の速さ」、他の選手を圧倒する「身体の大きさ」、主に才能と呼ばれる「ボールタッチの柔らかさ」や「豊かなイマジネーション」。これからプロを目指す選手たちに必要で、一流の選手、長く現役を続けた選手たちが絶対と言っていいほど持っていたのは、こうした“サッカーの才能”ではなく「生涯学び続ける才能」だと言います。
 
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■プロ選手に共通する生涯学び続ける力

プロ選手になりたい! もしあなたのお子さんが自分の気持ちを伝えてきたら“ドリームサポーター”に徹しましょうというお話は前回させていただきました。子どもたちはプロ選手になりたい、サッカーを続けたいと思っていても、一生懸命練習をする以外に具体的には何をすればいいのかわかっていないことも多いと思います。
 
実力や性格、子ども一人ひとりに応じた環境を整えてあげることも大切ですが、親からは「サッカーでメシが食いたいのなら、誰よりもサッカーのことを考え、愛し、サッカーについて勉強しなさい」と励ましてあげてください。
「将来はJリーグで活躍したい」「日本代表になって世界の強豪と戦いたい」「海外のチームに所属して世界の一流選手とプレーしたい」どんな夢でも人生の中のひとつの目標であって、ゴールではありません。どんなに優れたプレイヤーでも、いつかは現役を引退する時期はやってきます。選手として活躍したあとも、大好きなサッカーと関わっていく素敵な人生を歩むためには、サッカーに必要な身体能力や技を磨くだけではなく、人間力を高めなければなりません。
 
 

■サッカーは総合的な人間力を高めてくれる

どれだけサッカーが上手でも、チームメイトや指導者とコミュニケーションが上手に取れない選手はチームの中に溶け込めないだけではなく、その後の人生を豊かに過ごすことができません。指導者の道を歩むにしても、解説者としてサッカーに関わるにしても、サッカーのプレーを通じて人間力を鍛えてこなかった人は魅力のある仕事ができません。サッカーの技術だけでなく総合的な人間力は、引退したあとではなく、現役時代に培われるものです。
 
総合的な人間力とは、チームワークの基礎になるコミュニケーション力、目標や課題解決に向かって挑戦するポジティブな思考と姿勢、新しいことに挑戦する好奇心、強い相手に立ち向かう勇気、障害を乗り切るための忍耐力、精神力、人の話を聴く謙虚な気持ち、自分を磨いてくれる相手に対する感謝の気持ちなどなど、とにかくサッカーを通じて養われるすべての要素です。
 
私が「サッカーの上達に勉強が大切だ!」と声を大にして言うのも、勉強とは単に成績を競い合うことではなく、こうした人間力を高めるためのトレーニングになるからなのです。サッカーに真剣に取り組み、ボールを中心に大切な仲間と過ごした時間はその後の人生にも大いに役立ちます。サッカーほど、困難を乗り越える精神力や忍耐力、問題解決能力が身につくスポーツは他にないのですから。
 
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■どこかで誰かが観ている!

私がユース年代の日本代表コーチを務めていたときは、代表候補のリスト作成し“まだ見ぬ才能”に出会うための「スカウティング」で、それこそ全国各地を飛び回っていました。
 
「九州に良い選手がいるらしい」と聞けばすぐに観に行き、次の日は東京で別の選手を、またその次の日は関西へ。たくさんの選手を観た中から代表候補になる選手を選ぶのです。アンダーカテゴリーの日本代表クラスの選手選考をしていても「良い選手だ」と聞いていた選手ではなく、全然名前が挙がっていなかった対戦相手の選手や、隣のピッチで試合をしていた選手が目に止まることが頻繁にありました。U-17日本代表(17歳以下の日本代表)のコーチをやっていたときは、どんな選手でも先入観なく、良い選手だと思ったら選ぼうという気持ちですべての選手を平等に観ていました。
 
現在の技術レベルも大切ですが、将来伸びる可能性はもっと大切です。何よりも目に止まるのは、人が観ていないときでも一生懸命プレーしている選手です。どんなときも全力でプレーしている選手は輝いているので、上手い下手ではなく、自然に目が留まるのです。 いまチームでレギュラーではない選手も、他のチームでは必要とされる選手なのかもしれません。みなさんの才能や実力が伸びるのはもっと先なのかもしれません。
夢を諦めずに、どんなときでも全力でプレーしていれば、必ず誰かの目に留まり、引き上げてくれるのです。
 
どんな試合でも、たとえそれが毎日と同じ練習でも、手を抜かずいつも「誰かが観ている」という気持ちで一生懸命にプレーしていれば、その努力は必ず報われます。
 
 

■小倉さんからのメッセージ「君の努力は必ず誰かが観ている」

私自身も、ドイツの日本語学校でサッカーのコーチをしていたときに、たまたま日本のサッカー関係者の方の目に留めていただきました。Jリーグは、ドイツサッカーの仕組みを参考にして作られたそうですが、Jリーグ発足前に、下部組織の重要性、ジュニア育成の重要性を、本場のドイツに学びに来た関係者が「ドイツでジュニアにサッカーを教えている面白い日本人がいる」と、私を訪ねてくれました。もしそのときにドイツにいなかったら、日本にいて教師を続けていたら……、まったく違った人生が私を待ち受けていたに違いありません。私を観てくれていた人がいたおかげで、私のサッカー人生は拓けたのです。
 
「どうせ可能性がない」「才能がない」「努力しても無駄」そんな風に思ってサッカーも勉強も中途半端に諦めてしまっている子どもたちがいるとしたら、それは間違いです。
 
セレクションに落ちた、メンバーから外れた、レギュラーになれない……。そういう挫折は実はプロになるような選手でも数多く経験しているのです。問題はその後どうするか? 「どうせがんばっても」という発想でサッカーを諦めるのか、「誰かが必ず観ている」と努力を続けるのか。すでにお話ししたように、私はがんばり続けていれば誰かが必ず観ているのがサッカーのピッチの良いところだと思っています。
 
ドイツでの恩返しではないですが、私も人知れずがんばっている子どもたちに会いに、そしてまだ見ぬ才能を探しに行きたいと思っています。これからも日本中のサッカーキッズを観て、日本をワールドカップ優勝に導いてくれる「金の卵」を探し続けたいと思っているのです。
 
 
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小倉 勉(おぐら つとむ)
1966 年生まれ大阪府出身。大学卒業後、同志社香里高等学校で講師として教鞭を執りながら、サッカーを指導。1990年に渡独、ブレーメン国際日本学園の教員、サッカー部監督を務める。92年、帰国し、ジェフユナイテッド市原 (現、市原・千葉)で育成部、サテライト、トップなど、あらゆるカテゴリの指導者を歴任。日本代表コーチとしてイビチャ・オシム監督、岡田武史監督の下でコーチを務め、2010年南アフリカW杯に出場。12年には関塚隆監督の下U-23日本代表コーチとしてロンドン五輪に出場。大宮アルディージャを経て、現在はヴァンフォーレ甲府ヘッドコーチ。
日本サッカー協会公認A 級、AFC 公認プロフェッショナル
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構成/大塚一樹 写真/田川秀之(JA杯全農チビリンピック2013全国決勝大会より)

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