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JFAグラスルーツ推進部部長が行く!あなたの街のサッカーチーム訪問

「大会でいい成績を収めるより、子どもにとって楽しい居場所に」スポーツクラブのあるべき姿とは

2016年11月15日

キーワード:JFAグラスルーツ春日イーグルス松田薫二

日本サッカー協会、グラスルーツ推進部松田薫二部長がやってきたのは福岡県春日市。今回訪ねたのは「幼児から高齢者まで、身近に気軽に楽しめるスポーツクラブ」を掲げ、30年以上の歴史を持つ春日イーグルス。福岡市の中心部から10㎞ほど、福岡のベッドタウンとして発展してきた春日市には、イーグルスが培った「本物のクラブ文化」がしっかりと根付いていました。JFAグラスルーツ推進・賛同パートナー制度のテーマ「ずっとEnjoy♫」、「みんなPlay!」、「だれでもJoin♪」の三つすべてに賛同するパートナーである春日イーグルスを取材しました。
(取材・文 大塚一樹)

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【今回訪問した春日イーグルスは以下の賛同パートナーです】
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<<減点方式ではなく加点方式が子どもの可能性を引き出す
 

■いつも子どもたちの居場所でありたい

練習が行われている春日東小学校を訪ねた松田部長の目に飛び込んできたのは、広々としたグラウンドと、子どもたちの笑顔でした。ナイター設備も備え付けられている環境の良さに驚いていた松田部長は、クラブの代表である渡邊透さんの話を聞いて、さらに驚くことになります。
 
「私はこの後、ほかの小学校に行って練習を見なければいけませんので、後ほどまた」
 
ほかの小学校? ここにも一チーム分くらいの人数はいるのに? 頭の中が?マークで一杯になる松田部長ですが、東小学校の練習を担当する井上恵悟会長は「市内の10の小学校の子どもたちがイーグルスにいます。いまやっているのは4年生と5年生です」と、こともなげに言います。
 
1980年、小学生を対象としたサッカー教室からスタートした春日イーグルスは、ジュニアチームの発足、ジュニアユース、ユース、社会人(トップ)と組織ができあがっていき、いまでは、女子、シニアなどの各カテゴリに加え、バドミントン、3B体操教室、走り方教室まで行う、総合型スポーツクラブとして地域に根付いています。
 
松田「クラブの成り立ちはどんな経緯だったんですか?」
 
井上「下からと上から、小学生と社会人のクラブが原型になって自然に各年代のチームができていった格好です」
 
松田「こうしたクラブでユースまであるのは珍しいですね。下から選手が成長していって、ジュニアユース、ユース、トップ、そしてシニアと全年代のチームができて行くというのは理想的ですよ」
 
井上「僕らはそれが普通だと思ってやってきたんですよ。特別なことはしていません。ユースでもセレクションはないし、もともとイーグルスの卒業生がサッカーをするため、みんなで集まれる場所を作るためにどんどん上の年代のチームができていったようなものですから」
 
松田「市内にもほかのクラブはあるんでしょうけど、イーグルスの存在感がすごいというのは、練習とお話を少し聞いただけでよくわかりました。小学生の練習を手伝っているのはOBですか?」
 
井上「高校生とか、大学生とか、イーグルスのOBがほとんどですね。コーチはたくさんいて困ることはないので助かっています」
 
松田「小学生が中学、高校生や大人と接する機会も得られて、サッカーの技術を学ぶだけではない魅力がありますね」
 
井上「私たちの願いはイーグルスを通じて『心が育つ』ということなんです。だから手段はサッカーでも何でもいい。子どもたちの“居場所”を作ってあげることが、イーグルスが地域に果たす役割なんじゃないかと思っているんです」
 
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■スポーツのあるべき姿を体現する総合型スポーツクラブ

井上さんの話に耳を傾けていた松田部長はこの話を聞いて大きくうなずきました。聞けば、井上さんのこうした考え方やイーグルスの理念は、ヨーロッパの地域スポーツクラブ文化のあり方に強く根ざしていると言います。
 
「少しドイツにいたもんですから、あちらのクラブは日本と違うよなと。少年サッカーひとつとっても、フィロソフィーがないと、競争ばかりに目が行って、勝った、負けた、その瞬間だけにとらわれることになります。ドイツはそうじゃなかった。サッカーのあるべき姿があったと思います」
 
井上さんは「少しドイツにいた」と謙遜しましたが、ドイツには、サッカーを学びに留学目的で滞在、留学先のケルン体育大学には同時期、田嶋幸三日本サッカー協会会長もいたそうです。井上さんは、ドイツで学んだサッカーの“あるべき姿”をイーグルスで実現させるために、長年奮闘してきました。
 
「地域の人たち、まずはコーチにわかってもらおうと、30年くらい前かなぁ、ヨーロッパに研修に行ったんですよ。イタリアから入って、オランダ、いろいろなところを見て回った。そのときに、ある小さなクラブで、子どもたちがサッカーを終えると、もうリタイアしたような年齢の人たちが、温かい飲み物を渡して『寒かったろう』と声をかけている光景に出会ったんです。これが本来のスポーツのあり方、クラブ文化じゃないかと思ったんです」
 
総合型スポーツクラブという概念がまだ日本にほとんどなかった頃、井上さんは、老若男女、地域のすべての人が関われる、コミュニティを支えるようなクラブ作りを目指そうと心に決めました。世界各地のクラブ文化を視察している松田部長も井上さんの考えに多いに賛同します。
 
「サッカーは手段で良い。本当にそうですよね。大会でいい成績を収めることよりも、春日市の子どもたちにとってイーグルスが楽しい居場所になることの方がよほど大切です」
 
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■勝利だけでは心は育たない 一人ひとりがどう成長できるか

現在代表を務める渡邊さんも、ヨーロッパのクラブ文化には強い思い入れがあります。教員を目指し日体大を卒業した渡邊さんの目に、地元福岡のクラブチーム、イーグルスの求人広告が飛び込んできました。
 
「当時は、サッカーコーチ、しかも地域の小学生のクラブのコーチで食べていけるなんて考えはありませんでしたから、思い切ったことをしたなと自分でも思います(笑)」
 
渡邊さんは大学卒業から28年間、イーグルスのコーチとして総合型スポーツクラブの運営に携わってきました。
 
「クラブチームというのがなかなかな認知されず、時間はかかりました。ジュニアユースを立ち上げた当初は車のライトを照らして練習していましたからね」
 
渡邊さんはそう言って笑いますが、早くから総合型スポーツクラブの理想を掲げて活動してきた春日イーグルスは、いまや、各年代にチームを持ち、地域の人々に「地元のスポーツクラブ」として認知されるまでになりました。
 
「スクールも入れると、幼稚園、小1からシニアまでですからね。小1からイーグルスという卒業生が20代後半ですから歴史はずいぶん積み重ねてきましたよね」
 
自身もヨーロッパに研修に出向き、1997年にはジュニアユースチームを引き連れてルーマニア、オランダ遠征を実施、99年にはカナダにも行った。
 
「海外のクラブと接して思うのは、彼らはサッカーだけを教えているんじゃないと言うこと。カナダのチームはその後、日本にも来てくれたんですけど、子どもたちの態度を見てコーチが言うわけです。『君たちは日本に招いてもらって、歓迎してもらっているのにそんな態度で良いのか? 感謝を示すべきだろう』と説教でもなく、諭すように語りかけている。自分だったらどう伝えるか。指導論や技術論はもちろんですが、こうした何気ないところに見える哲学みたいなものは本当に勉強になりました」
 
渡邊さんも井上さんも、「大切なことは子どもたち一人ひとりの成長」と声を揃えます。こうした指導の結果か、全国でも激戦区として知られる福岡の高校サッカーにあって、県内の6つの高校のキャプテンがイーグルス出身だったと言います。
 
「だからすごいとか、正しいとかじゃなくて、単純にそういう選手たちが卒業生にいるというのはうれしいですよね。大切なのは、サッカーを通じて学ぶことですから」
 
井上さん、渡邊さんの話を聞いた松田部長は、みんなの居場所であり、何歳になっても戻って来られる場所であるイーグルスのあり方に「こんな地域クラブがあったのか」と驚きを隠せません。次回は、地域との共存共栄を目指す総合型クラブとしてイーグルスが取り組んできたことを中心にさらに掘り下げてお話を聞いていきます。
 
 

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■グラスルーツ推進・賛同パートナー制度ってなに?
この制度の目的はJFAが掲げる『JFAグラスルーツ宣言』に賛同し、共に行動していただける団体と仲間になることで、グラスルーツサッカーの環境改善を推進することです。本制度の賛同パートナーになってもらい、その活動の理念や内容が好事例として日本全国に広く伝わり、JFAと同様の考え方で進められている活動であるという理解が深まることを期待しています。また、さまざまな好事例を多くの方々と共有することで、全国により良い環境が広がるきっかけになればと思っています。ぜひ賛同パートナーとなり、グラスルーツサッカーの環境改善にご協力下さい。
 
■グラスルーツ推進・賛同パートナー制度に申請する2つのメリット
1.あなたの団体・チームの宣言・活動内容等がJFA.jpに掲載されます。
2.松田部長とサカイク編集部が取材に伺うかもしれません。
 
■3つのテーマ
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■こんな活動をしていると認定してくれる
 
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学校卒業、就職、転勤等、人生の節目で「引退」して終わるのではなく、サッカーをやりたい人は、どこにいても気軽にサッカーが継続できるように、子どもからお年寄りまで、生涯にわたってサッカーやスポーツを楽しめる場づくりに取り組む団体(※)を認定します。
 
※指導方法や選手への意識づけという面だけでなく、実際に切れ目なく定期的・継続的にプレーする場を提供している、または今後提供を予定している団体
 
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『補欠ゼロ』には、「上手い・下手関係なく、その人のレベルに応じて必ず試合を楽しめるようにしたい」という思いが込められています。レギュレーションによって全員が試合に出られないこともあります。しかし、その試合に出られなくても他の試合でしっかりと出られるようにする等、万年補欠でサッカーを終えることなく、みんなが心からサッカーを楽しむことができるように取り組む団体を認定します。
 
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サッカーはみんなのもの。障がいを持つ人も安心してサッカーを楽しめるようになれば、豊かな社会の実現の一助となるでしょう。そのためには、多くの人達が障がいのことを理解し、どうすればみんなが楽しめようになれるかを考え行動することが必要です。「障がいの有る無しに関わらず、サッカーやスポーツを通じて、安心して個性が発揮できる場づくりに取り組む団体を認定します。
 
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取材・文 大塚一樹

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