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「自分で考えるサッカー」を実践しているクラブ・少年団を訪問!

言い出せる環境をつくり出して、自分の考えをきちんと言葉にする――FC湘南辻堂

2013年5月20日

キーワード:コミュニケーション

「自分で考える」サッカーを実践する上で大切なのは子どもたちの自発的な発言。おとなしい子どもが多いと言われる現代っ子たち。どうしたら闊達な意見が飛び交うチームになるのか?ちょっとやんちゃで、サッカー頭?のいい子どもたちに出会いました。
 
 自分で考えるサッカーを志すクラブを巡る連載第5回は湘南の風薫るFC湘南辻堂の登場です。
 
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■ケンカ発生? 子どもたちなりの解決方法

「蹴ったって言ってるけど、誰か見てた人いる?」
 
 サカイクが主催した選手の自主性を引出す大会「サカイクマッチ」で、ちょっとびっくりする光景に出会いました。
 
 ウォーミングアップをしていたはずの選手が、些細なことをきっかけに突然とっくみあいのケンカを始めたのです。ウォーミングアップも自分たちで考えてやるのがサカイクマッチ。取材をしているこちらとしても、安易に口出しするわけにはいきません。
 
「ちょっとケンカなんかしてたらチームワークにひびが入るよ」
 
「なんで怒ってるの? 蹴られたの見た人いる?」
 
 当事者たちが仲間に引き離されたあと、子どもたちが原因を探りながら自分たちで解決を図ろうとしているのです。
 
「コーチ呼んできた方がいい?」
 
 一人の子がそう言ったと同時にコーチの下に走り出します。後ろから追いかけるような仲間の声。
 
「大げさにするなよ」
 
 コーチの答えは「そのまま試合の準備」。なんだかこのチーム、元気がいいのです。
 
「ああ、そんなこともありましたね」
 
 後日、練習試合の会場に取材に伺うと、湘南辻堂U-10を指導する須田英一郎コーチは「まぁいつものことですよ」と、こともなげに言います。
 
 須田コーチは現在高校生の息子さんが辻堂に入ったときにお父さんコーチとしてチームに携わり、しばしのブランクを経て2011年から再びクラブに戻ってきました。
 
「息子たちのときはひどい失敗をしているんですよ」
 
 当時の須田コーチは有り余る情熱が空回りし「息子に厳しい」タイプの指導者だったそう。
 
「一から十までうるさく言って、結局間違っていたんですよね」
 
 そのときの反省を元に、選手たちに問いかけ、自主性に任せるサッカーを実践している。
 
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■言い出せる環境 自分の意見が言える子どもたち

「強気ー、前向きー、積極的ー、練習大好き! 失敗大好き! うれしい! 楽しい! 絶対勝つぞ」
 
 試合開始前のピッチで辻堂の円陣から声が響いてきます。対戦相手も何事か? と思わず見てしまうメンタル・トレーニングで学んだ『チームルーティーン』を取り入れたかけ声。
 
「いいものはすぐに取り入れるんです。でも円陣であんなに大声でやるとは思っていませんでした」
 
 須田コーチも予想していなかったようですが、辻堂の子どもたちは、恥ずかしがったり、はにかんだりすることがありません。
 
「ボールを止めるとどうなるの?」
 
 練習中、須田コーチが選手に問いかけると「ボールが回らなくなる」「相手に近づかれるー」「流れが止まるー」選手たちは我先にと争って一斉に答えます。
 
 質問しても答えが返ってこない。わかっているのに声に出して答えてくれない。そんな悩みを抱えるチームの多いこと。
 辻堂はそんな悩みとは無縁のチームです。
 
「彼らの『言い出せる環境』って言うのはどこからきているんですかね?」
 
 須田コーチに聞いてみます。
 
「まず基本的なことは教えています。うちでは言葉の意味を教える座学の時間もきちんと取って『わからなかったら質問しなさい。質問することは恥ずかしいことじゃないよ』っていう話から、仲間を積み木にたとえて、実際に積み木を積んでみて、GK、DF、MF、FW、どれがかけてもサッカーはできないんだよなんて話、バイタルエリアってなんだろう? っていう話までするんです」
 
 確かに彼らは、試合中、お互いにかなり高度なことをアドバイスし合っていました。言葉として学んでいることは口にしやすいのでしょう。辻堂の“うるささ”は単に元気がいいからだけではありません。 
 
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■サッカーができる幸せに感謝する気持ち

 冒頭のケンカにしても、はじめは正直「大丈夫かなあ」と思ったのですが、結局は彼らなりに考えて解決を導きました。その後の試合で自分たちのサッカーに自信を持ってプレーする彼らの姿を見て、その光景と目の前で繰り広げられているこのプレーに関連性を感じたのです。
 
「感謝ということはすごく言いますね」
 須田コーチがもうひとつ大切にしているのはサッカーができることへの感謝の気持ち。
 
「お父さんやお母さんの協力があってサッカーができている。自分がサッカーをすることで、土曜、日曜日に親を取られる妹や弟が寂しい想いをしているかもしれない。そういうことがわからない人間はサッカーをする資格がない。これははっきり言いますね。だから兄弟、姉妹を思いやることや、家の手伝いを何かひとつでもいいから行い、目に見える感謝を伝えることが大切です」
 
 元気でやんちゃな彼らはサッカーができることに日々感謝して精一杯プレーしています。活発なコミュニケーションはしっかりしたチームの土台あってこそ。FC湘南辻堂は自分で考えるだけでなく、自分の考えをきちんと言葉にできる、選手同士でコミュニケートできるチームでした。
 
 
FC湘南辻堂//
藤沢市の辻堂小学校および周辺地域の子どもたちを中心に1968年から『子どもたちが楽しくサッカーをする=サッカーの楽しさを教える』をモットーに活動。選手たちに問いかけ、自主性に任せるサッカーを実践している。
 
U-10チームの指導に当たる須田英一郎コーチは、facebookなどを介し、様々なチーム、指導者との交流を図り、子どもたちにフィードバックを続けている。
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取材・文・写真/大塚一樹

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