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子どもが自らサッカーノートを書き出す方法

勉強の成績UPにもつながる!川崎フロンターレが実践するサッカーノートの使い方

2015年11月12日

キーワード:サッカーノート川崎フロンターレ

「サッカーの上達には、サッカーノートを書いて振り返ることが大切である」とはよく聞く話です。川崎フロンターレの下部組織でアスレティックカウンセラーを務めた椎名純代さんは「ノートを続けたことで、サッカー上達の他にも役立つことがたくさんあります」と語ります。
 
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■サッカー以外にも役立つサッカーノート

「川崎フロンターレではユース(U-18)を卒業するとき、『目標を設定することはサッカー以外で役に立ちましたか?』というアンケートをとるんですよ。私も、はじめはサッカーに関する回答がほとんどだと思っていました。でも、『受験で役に立ちました』『体育祭で与えられた役割を果たすのに役立ちました。計画から実行までうまく進められたのはサッカーノートのおかげです』といったサッカー以外の回答が多いんです」
 
これは、まさに目からウロコです。川崎フロンターレの下部組織では、プロになるために必要なスキルトレーニングとして、「目標設定シート」を選手たちに書かせています。「目標設定シート」とはサッカーノートと類似したもので、計画から実行までを管理するシートのことです。
 
しかし、なぜ、目標設定シートを導入していたのでしょうか。それは大きな目標を設定することで、それを達成するために今するべきことが明確になるからです。それは練習や試合に挑む選手たちの姿勢にも影響を与えます。
 
「選手たちが目標を立てるとき、特に競技スポーツだと、強ければいい、うまければいい、勝てばいいというマインドセットに陥りがちです。しかし、かっこいい勝ち方、かっこいい負け方というのがあります。選手としてのベースには、公正なプレーを尊重し相手の選手を尊敬、賞賛する精神、つまりスポーツマンシップが必要であることを伝えなければいけません。また、目標設定をすることによって、目の前の試合が目的を達成するための通過点にすぎないということを認識するようになります。ここを指導しておかないと、自分よりも下手な選手を攻撃したり、格下のチームに手を抜くような行動をとったりする選手が出てしまいます」
 

■サッカーノートで“ライフスキル”を磨くことで、社会に通用する人になれる

椎名さんは、目標設定シートが「ライフスキル」を養う手段の一つであることを教えてくれました。「ライフスキル」とは、目標を立てて与えられた時間内で実行するなど、サッカー卒業後も活かせる「自分の人生を切り開く力」のことです。Jクラブの下部組織に所属している選手のほとんどはプロになれません。ユースを卒業すれば、サッカー中心の生活から離れ、一般社会に身を置いて生活をすることになります。だから、自分のやりたいことを実現する「ライフスキル」を培うことが、選手自身の人生を豊かにする上で大切なことなのです。
 
椎名さんは、川崎フロンターレの選手向けのワークショップを開いた時のことを話してくれました。
 
「今の子どもたちは本当に忙しいので、目標を達成するためにはサッカーと学業を両立できるよう時間を作る工夫が必要になります。だから、目標を設定した次のステップとしてタイムマネジメントのスキルを学びます。企業の社員研修ではないですが、子どもたちにもそれに近いワークショップを開き、毎回の目標設定シートの書き込みが難しいものではなく、日常的にやれるものだということを認識してもらっています」
 

■川崎フロンターレ流!実力が伸びる目標設定のコツ

サッカーノートを通じてライフスキルを身につけるには、どんなことに気をつけるとよいのでしょうか?ここでは、目標設定のコツに焦点を当てて、川崎フロンターレ流のやり方をお伝えします。
 
「サッカーが上手くなりたい!」といったような、漠然とした目標を決めてもサッカーノートを続けるモチベーションは保てません。ノートを書き続け、目標を実現する力をつけるために、椎名さんから目標設定のポイントを教えてもらいました。
 
大切なのは、最終目標を決め、「いつまでにどうなりたいかを具体的にすることです」
 
「何歳でプロになるか。何歳でヨーロッパの強豪クラブに入るか。目標は人それぞれですが、選手たちは『何歳でA代表に入る』といった最終目標を具体的に持っています。最終目標が明確になると、そこに到達するために今やるべきことが逆算しやすくなります。たとえば、20××年のオリンピックに出場するためには、20××年のアンダー世代のワールドカップ代表選手に選ばれる必要がありそうだ、など。ヨーロッパのクラブに移籍したい選手は語学を習得する必要もあるでしょう。『目標設定シート』を作ったら、壁に張っておくことをオススメします。モチベーションを保つことにつながりますから」
 
 
【例】サッカー少年の目標設定
 
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サッカーノートを書くときは『今日の目標』に対して各項目の回答を記入するだけです。目の前のことに集中するため、『何のためにやっているのか?』ということを見失いがちです。しかし、目標設定シートが目に入る場所にあれば、「まずはジュニアユースに昇格するために続けているんだ」というような近い将来の目標を再確認しやすくなります。それは同時に、今の自分に足りないものを振り返りやすくもなるのです。
 
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■プロを目指す選手は、サッカー以外に目を向けることも大切

椎名さんは川崎フロンターレでこんな工夫をしていたことを教えてくれました。
 
川崎フロンターレの目標設定シートでは、技術やコンディション、メンタルの要素に加え、『家・学校(私生活)』という項目を作りました。たとえば、学校のテストの結果が悪く、追試を受ける状況になったとします。すると、練習に遅れる、トレーニングが短くなる、成長が遅れる、という流れになり、サッカーに悪影響を及ぼします。勉強などの私生活はサッカーの成長にとても重要な要素として絡んでくるのです。だからこそ、私はこの項目を追加しました」
 
また、プロを目指す選手は、頭の中がサッカー中心になりすぎる傾向があります。自分の存在意義(アイデンティティ)がサッカーをプレーすることに偏ってしまいがちです。これをアスレティックアイデンティティと言います。
 
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こういった選手は、サッカーがうまくないと自分はダメな人間だと、つい思い込んでしまいます。しかし、そもそも人間にはいくつかの顔があります。サッカー、学校、プライベート、長男、仕切り役、支え役など、人は数多くの顔を持っています。それらがあるから人間としてメンタルバランスがとれるのです。サッカーがうまくいかなくてダメだからといって、人間としてダメなわけではありません。逆に、サッカーがうまいからといって人間として素晴らしいわけでもありません。サッカーはあくまでも人生を豊かにする一つの手段に過ぎません。大人が『この子のココが伸ばしたい』と願っているものがあれば、シンプルに選手のよいところを認めて自信をもたせてあげたらいいのです。
 
私生活を自分でコントロールし、選手が一番がんばりたいサッカーに注力するためにも、また、選手がサッカー以外の環境でも活躍して自信を得るためにも、計画的に物事を進める「ライフスキル」がきっと役立つはずです。
 

■サッカーノートのおもしろい活用法

椎名さんは、サッカーノートのおもしろい活用法を示してくれました。
 
「私は、選手が書き続けたノートを、一年ほど経った後に見直すワークショップを開いていました。一年前に書いた目標は意外と覚えていないものです。さらに、一年前のノートをチームメンバーで見せ合うのです。そうすると、自分の成長を良くも悪くも考える機会になります。ポジション争いをしている選手同士は『えっ、(この選手は)こんなに考えて練習しているの。これでは敵うわけがないから考え直さなきゃ』というように刺激を与え合うきっかけになります。意外と恥ずかしがることなく、子どもたちはキャッキャと見せ合いますし、数多くの学びを得ていたようです」
 
一年前と見比べるのはハードルが高いかもしれないので、チーム内でノートを見せ合う・よく書けている選手のノートを紹介するなど、一部だけでも取り入れてみてはいかがでしょうか?
 
 
初心忘れるべからず。人は一年前の目標を忘れてしまうものです。目の前のことに集中しすぎても目標を見失ってしまいます。今日の目標と近い将来の目標、そして達成したい最終目標をその時々で見比べながら歩むことが大切です。そのために、目標設定シートを毎回記入し、月末ごとに振り返りをして提出させていたと、椎名さんは言います。目標設定、計画、具体的な行動プラン、そして実戦と振り返りを繰り返すサイクルこそが、サッカーの上達はもちろん、サッカー以外のことにも役立ちます。
 
冒頭でご紹介した、『受験で役に立ちました』『体育祭で与えられた役割を果たすのに役立ちました。計画から実行までうまく進められたのはサッカーノートのおかげです』というのは、このサイクルがサッカーノートによって身につき、サッカー以外の場面で活かされた結果ではないでしょうか。
 

 
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取材・文 木之下潤

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