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こころ

教えたいなら、任せなさい

公開:2014年4月15日

キーワード:育成

サッカーの現場では、まだまだ「教え込む」指導者や保護者をたくさん見かけます。指導するとは本来「導く」こと。自ら考えて、伸びていく子どもにするために、どんな声かけが有効なのかをコーチングのプロ、株式会社ゆめかなの石川尚子さんにうかがいました。
 
応援中
取材・文/前田陽子 写真/田川秀之

■プレー中は「だまって見守る」が基本

「なんでそこでシュートを打たないんだよ」
「なんで言われことができないんだ!」
「気合が足りないんだよ」
 
試合中にこんな声かけを耳にすることはありませんか? 自分で言っている人もいるかもしれません。プレーしている子どもたち以上に見ている親は白熱し、応援に力が入りますが、これは応援でもなければ、「導く」ための声かけでもありません。単なる見ている側の要望。こんな声かけをされても子どもたちは、「よし、がんばろう」と前向きにはなれません。子どもたちには彼らなりの考えがあり、シュートを打たなかったのは「もっと良いチャンスをねらっていた」のかもしれません。自分なりにがんばっている中で「なぜできないんだ」と言われてしまうと、反発心が出てしまいせっかくの言葉もただ怒られたとしか感じられなくなります。子どもたちが指導者や保護者に反発心を抱いてしまうのは、本当に残念なこと。練習や試合に前向きな気持ちで取り組めなくなってしまいます。
 
では、どのような声かけがいいのでしょうか? 石川さんは「基本的にサッカーに取り組んでいるときは、だまって見守る」ことが大切だと言います。どうしても声をかけたいなら「いける!いける!」「いい感じだよ!」などの励ます言葉をかけましょう。プレー中に前述したような言葉をかけ続けると子どもが委縮してしまい、からだがかたくなって、良いプレーができなくなってしまいます。
 
声かけをするのはプレーをしていないときに。「あの場面では、どうしようと思っていたの?」と子どもの気持ちを聞いてあげたり、「この前伝えたことは、どのくらいできたと思う?」「もっとうまくなるには、どうしたらいいと思う?」と、子ども自身が考えるように促す声かけが有効です。そうすることで自分から“がんばろう”という意欲が出て、自発的に練習にも取り組めるようになるはず。
 
「走れ!」「がんばれ!」などと応援しているつもりの声かけにも要注意です。命令形ではなく、「がんばっているね!」「いいよ、いいよ」「ナイスシュート!」「ナイストライ!」などと、できていることを認める声かけを増やしましょう。そうすることで「気合を入れろ!」と言われなくても、自然と気合が入っていくと思います。
 
 

■応援メッセージを送り続ける

とはいえ、「まだまだ子どもだから、私が教えてあげないと何もできない」と思っている方も多いのでは。でもこれでは子どもが「うるさい」と反発を覚えるか、逆に、「言われたことだけやればいい」と自分では何も考えなくなったり、「誰かがやればいい」と他者に依存するようになってしまいます。
 
「教えてやるんだから、素直に聞け」という上から目線ではなく、子どもの目線に立ち、どうすれば自分でできるのか、どうすればもっとできるようになるのかを一緒に考え、困ったときにヒントを送るというスタンスが大切です。子どもが自分自身で考えることができるように関わることで、今何をするべきかという判断ができるようになります。
 
そのためには、子どもの自主性を尊重することが第一。親から考えたら効果が薄いと思うことでも、自分で決めたことはやらせましょう。そして「あなたならできる、いつも応援しているよ」というメッセージを送り続けながら、見守ります。うまくできたときには「がんばってるね」「よかったね」と褒める言葉をたくさんかけましょう。子どもは褒められることで、自分の行動に自信が持てるようになります。うまくできなかったときは下手に励ましたり、責めたりせず「次はできるよ」と応援メッセージを伝えます。信頼して任せることで、子どもは見守られていると安心して、さまざまなことにチャレンジできます。
 
観戦中
 

■自己肯定観が、子どもの力を引き出す

「あなたのためだから」と言って、子どもの意見を聞き入れず、親の希望や価値観を正しいこととして押し付けていませんか? それでは子どもは自分の意見を尊重してもらえないと、親への不満を覚え、素直に話が聞けなくなってしまいます。
「子どもが困らないように」と、先回りしてあれこれ手を出していませんか? それでは子どもが自分で考え、解決する力を奪ってしまいます。
 
「大丈夫?できる?」と、心配ばかりして、どこにでも付いて行っていませんか? それでは子どもは、自分は信用されていないと感じ、自己肯定感が下がってしまいます。
 
子どもには「やる気を持っている」「自分でできる子」と信じて接しましょう。親が思っている以上に、子どもは自分の考えや力を持っています。信じて見守るということは、親にとっても勇気がいることです。けれど、自分を信じてくれているという自己肯定感が、子どもたちの力をさらに引き出すのです。
 
「練習しないと、レギュラー外されちゃうよ」などの恐れによる動機づけでなく、「がんばって練習をしているから、もっと点が取れるようになるね」という、期待による動機づけをしましょう。同時に「やらないと叱られるからやる」ではなく、「こんなに楽しいからやる」という動機づけができるといいですね。
 
子どもたちが、指導者や親からたくさんのことを吸収して、よりサッカーが楽しいと感じられるようになるには、わたしたち親の毎日の接し方が大切です。自ら考えて行動できるようになるために、見守ることを心がけましょう。練習中や試合のときは、子どもたちががんばれる声かけで。
 
 
石川尚子
株式会社ゆめかな設立。代表取締役就任。経営者、起業家、管理職、営業職へのパーソナル・コーチングを行う傍ら、主として、「コミュニケーションスキルの向上」「夢を叶えるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」「子どもの本音と行動を引き出すコミュニケーション」などをテーマにしたコーチング研修、コミュニケーション研修の講師として活動中。小中学生、高校生、大学生から企業の経営者まで幅広く講演活動を行う。
PHPゼミナール講師。PHP認定上級ビジネスコーチ。札幌国際大学非常勤講師
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文・前田陽子 /写真・田川秀之(ダノンレーションズカップ2014より)

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