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考える力

親が子どもの危機を排除すると、子ども自身の危機を察知・解決する力が身につかない

2016年5月12日

キーワード:サッカー人材育成少年サッカー祖母井秀隆自立

ジェフユナイテッド市原(現ジェフユナイテッド市原・千葉)のGM時代、後に日本代表監督も務めることになったイビチャ・オシムさんを日本へ招聘している祖母井秀隆さんは、少年サッカーにも精通しています。オシムさんの指導や考えに触れる中で祖母井さんが感じた少年サッカーの現場に必要なこと、サッカー少年のために親にできることとは?(取材・文 小澤一郎)
 
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<<前回記事『「おれが○○を育てた」なんてふざけるな! "育てる"ではなく子どもが"自然に育つ"環境をつくるコツ 』
 

■イビチャ・オシムは、“指示待ち”ではなく“先取り”する人

祖母井さんは、サッカー監督としてのオシムさんについて「技術、戦術も含めたトータルの指導力の高さ」を挙げます。
 
「例えば、練習の最初によく“鳥かご”と呼ばれる5対2や4対2のメニューをやりました。普通は定められたグリッド、ポジションでのボール回しですが、オシムさんは選手たちに『なぜポジションチェンジやドリブルをしないんだ?』と質問するわけです。タッチ制限もないメニューなので、もっとダイナミックに動いてもいいぞという意味なのですが、選手は『鳥かごとはこういうもの』という固定概念の中でプレーしています。養老孟司さんが言う『バカの壁』ですよね。そこから抜け出せないし、無意識に自分たちで考えているプレーをします。オシムさんは選手の固定概念を打ち破るような指導もしていました」
 
その上で祖母井さんはオシムさんの指導を“先取り”という言葉で表現します。
 
「オシムさんの指導は先取りです。世の中の先取り。私たちは、普段生活する環境において“指示待ち”になることが多いですよね。学校では先生が授業を始める前に『今日はこういうことをやります』と説明して入りますが、オシムさんは練習前にそんな説明はしません。なにをするのかわからないので、選手は『この人はなにをするのかな?』、『どういうトレーニングをするのかな?』という思考を持って練習に臨みます。
 
また、オシムさんは相手チームの分析やミーティングもやりません。なぜかというと、それはすべてグラウンドでやっているからです。オシムさんの練習はすべて先取りなので、練習でやったことが次の試合で実際に起こるわけです。そういう練習を選手に提供できる監督でした。だからミーティングをやらなくても選手は一週間の練習を通して『次の相手はこういうチーム』、『次の試合はこういう展開になる』とわかっていました」
 
 

■子どもが“指示待ち”ではなく、“先取り”する習慣を身につけるためには

2014シーズン終了後に京都サンガF.C.のGMを退任した祖母井さんは現在、淑徳大学の客員教授としてサッカーの授業を担当したり、子ども向けのスポーツ教室を開催するなど再びサッカー指導の現場にも立つようになっています。祖母井さんのサッカー指導や教育観にはオシムさんの先取り指導に近い、子どもや選手の自立を促す方法論と明確な考えがあります。一方、その背後には今の日本の教育や社会への危惧も見え隠れします。
 
「わたしがスポーツ教室をやっているのは子どもの自立を促すためです。なんでも自分たちにチャレンジしてもらいたいのですが、実際には子どもたちは『お父さん』、『お母さん』とすぐに親の顔色を伺い親のいる方へと行ってしまいます。残念ながら今の日本は、子どもが日常生活で必要なことを学び取れないような社会、環境です。例えば、『靴ひもを結べるようになりましょう』と言って教えても、実際に売っている子ども用の靴はマジックテープのものばかりです。わたしは今、幼稚園経営にも関わっていますが、私のところはモンテッソーリ教育で日常生活に必要な靴紐の結び方、服の着方、脱ぎ方、歯磨きなどはすべて自分でできるように鍛えています」
 

■「ここはちょっと危ないな」という情報をキャッチできる子どもに

日本の親が“ヘリコプター・ペアレント”となっている傾向についても、祖母井さんは独自の見解を持っています。
 
「大都市圏を中心に地域コミュニティーや近所付き合いが減ってきていますから、危機管理という面で親がヘリコプターのように上から子どもの行動を観察しようとする気持ちもわかります。これだけ社会や地域がわからないと、いろいろなところに危機があって読めません。でも、わたしは子ども自身が危機を読めるように育ってもらいたいと考えています。私が京都サンガにいた時、中学1年生が携帯電話を持っていたので『どうしてですか?』と聞きました。すると、その親からは『なにかあったときのために持たせています』と言われました。でも、なにかがあったときに電話で親に知らせることなんてできないですよね?アラーム機能が付いている携帯電話もありますが、それすら押せないと思います。そういう危機管理ではなく、情報をキャッチすることが大切なわけです。『ここはちょっと危ないな』、『暗いし人通りが少ないな』という情報をキャッチして危機を読むことが本当の危機管理です。そういうものを自分でつかめるようにすることが私たち大人の仕事だと思います」
 
 
次ページ:社会で生きていく力はサッカーで身につけられる
 

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