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考える力

「なにも教えないことで子どもは育つ」順天堂大学蹴球部の教育

2015年4月20日

前回記事『順天堂大学蹴球部流!"サッカーとは何か"を考えさせる問いかけ』では、小さいころからサッカーの特性を理解させることや、"足りない部分を補完する力"を養うことの重要性を語ってくれた吉村雅文さん(順天堂大学蹴球部前監督)。
 
後編では、吉村さんがこれらの重要性に気づくきっかけとなったオランダでの経験談や、ジュニア年代の育成におけるお父さんお母さんの関わり方について迫っていきます。(取材・文/竹中玲央奈 写真/サカイク編集部)
 
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■「そんなのは子どもに聞けよ!」オランダで言われた一言

サッカーだけにかぎらず、海外の子どもは日本の子どもよりも早い段階で自立する印象を受けます。
 
「ベルトコンベアーに乗せられる日本の社会と、すべてを自分で選択していかないといけない海外の社会。そういう日常生活の違いが影響していると思います」
 
日常生活を過ごす環境の違いが、日本と海外の子どもたちの自主性の"差”が生まれる要因と吉村さんは語ります。
 
「じつは一時期オランダに住んでいたことがあります。そのとき、子どもは現地の小学校に通っていたのですが、“typical Japanese”とすごく馬鹿にされました。子どもが家に帰ってきて『授業中にジュースを飲んでたりドーナツを食べているやつがいる!』と訴えかけてきたんですよ。日本の小学校で授業中にドーナツを食べていたら、怒られますよね。そこで、ぼくは“typical(典型的)”な日本人なので(笑)、次の日に『授業中にジュースを飲んでもいいのか?』と学校に聞きに行きました。どんな返答が返ってきたと思いますか? 『そんなのは子どもに聞けよ!』と言われたんです。子どもが決めればいいじゃないか、というスタンスなんです」
 
喉が渇けば飲み物を飲めばいいし、腹が減れば食べればいい。そこは子どもに決めさせる。
 
自分で考え、判断すること。吉村さんはオランダでの生活を経たことにより、この部分が日本の子どもに欠如していることを強く痛感しました。そして、この経験が少なからず順天堂大学蹴球部での教育スタイルに結びついたと言います。この"自身で考える"という局面を多く提示することを大学の指導でも重視してきたことは前編でもお伝えしましたが、じつは吉村さん、ジュニア年代にもこういったアプローチを実践しています。
 

■あえて"何も教えない"

「ぼくはNPOで子どもたちを集めてサッカーをしていますが、何も教えないです。スクールと言われると、ものごとを教えないといけないイメージがあるので、スクールとは呼びません。子どもたちは遊びに来ているだけで、そこに一緒にいる大学生が遊んであげているだけなんです。ただ、あるタイミングでみんなが集まってくるとゲームがスタートする。年齢・男女関係なしでごちゃごちゃになってゲームをするだけです。で、ゲームをやってちょっとしたタイミングで3対3にしたり4対4にしたりします。子どもたちがとても楽しそうだし、何してもOKなので、"サッカーをするかどうか"も自分で決めさせています」
 
ここで一般的な親の対応は、子どもを連れてきて「早くいきなさい」と言うのだけど、吉村さんは「いや、そこは自分に決めさせて下さい」と伝えます。サッカースクールでありながら、「サッカーをプレーするかしないかはどちらでも良い」というスタンスをとっています。コーチである大学生が「どうする?」と聞いてサッカーをしないことを選択する子もいます。そういう子はゴムチップで遊んだり置いてある一輪車で遊んだりします。
 
一見"ほったらかし"というような悪い印象を持たれしまいそうですが、吉村さんの考えやそこに至るまでの経緯を知った上でこの言葉を聞くと、そこに込められている"意図"を強く感じることができます。
 
そして、この吉村さんの考えに同調するサカイクの高峯弘樹ヘッドコーチ(神奈川大学サッカー部前監督)が行っている"親子キャンプ"でも、似たような手法を取り入れています。
 
「昨年度からやっているのですが、フリータイムを取り入れています。緑豊かな山の中に入っていき、虫取りをしたり栗を投げ合ったりするんです。 ここで"何をしてもいいよ”というと子どもたちの目が輝くんです。普段から"決められている"子が多いので」
 
吉村さんが先に述べた"ベルトコンベアーに乗せられる"社会においては、進む道が"決められている"ということが多く、子どもたちもそれに慣れてしまっています。そうなると、自ら選択し、考え、決定する能力は養われません。そして、その能力はサッカーという競技に置いて多く要求されます。
 
「サッカーって人間関係のスポーツじゃないの? とぼくは子どもたちに問いかけます。だって、"こいつが何をするか"ということを感じてあげられなかったら、どこに動いていいとか、どこでサポートしてあげたらいいかが、全然わからない。ボールの持ち方とか、どこを見ているかを観察しないといけない。
 
こいつ、今、何を考えているんだろう?
今、優先順位が高いものは何だろう?
 
そういうことを考えなきゃいけないですよね」
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取材・文 竹中玲央奈 写真 サカイク編集部

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